劇場公開日 2020年9月11日

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「もう「名作」と呼ばれるような戦争映画は出ないのか?」ミッドウェイ Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0もう「名作」と呼ばれるような戦争映画は出ないのか?

2020年9月16日
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鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

2023.12.16加筆修正

いわゆる「海戦もの」と言われる戦争映画は、本当に難しいだろうなと思う。
戦闘シーンの再現が、陸戦以上に難しいからだ。

本作には大いに期待していた。

・ミッドウェイ海戦の新解釈
・日米首脳陣の苦悩、葛藤、決断
なにより、
・最新CG技術を駆使した、臨場感溢れる迫真の海戦(航空機 vs. 艦艇)シーン

そして鑑賞後の感想は、、、、
「もう名作と呼ばれるような戦争映画は出ないのかな」
という悲しい呟きだった。

【気に入った点】
・血糊の色はじめ、彩色のリアリティが高い

【気に入らない点】
・日米ともに軍人役の所作が緩慢すぎる
特に帝国海軍の尉官、佐官クラスにおいては昭和期の映画で勉強してほしかった。
昭和期の和製戦争映画に出演している俳優には多数の元軍人が含まれていて、敬礼ひとつとっても指先まで美しい

・数万トンクラス空母の転舵アクションが非現実的すぎる
大型艦艇は舵をきってから効きはじめるまで時差があるはずだが、本作では、まるで小型モーターボートかフォーミュラカーのように切れ味鋭く曲がっているのは有り得ない。

その他にも、魚雷を装備した攻撃機の標的への進入角度など枚挙にいとまがない。
戦争映画なのにも関わらず、非現実的な映像(CG)のオンパレード。これなら実写でなくアニメで良かったと思ってしまった。

一方で、
それだけなら「CGに割く予算が足らなかったのかな」等と大目に見ることもできなくはない。
つまり、目をつぶることにする(笑)

許せないレベルにあったのは、

・「アメリカに偏らない視点」を売り文句にしているくせに、思い切りアメリカに偏っていること。

・日本軍の意図を、「ミッドウェイを足掛かりにハワイや西海岸への侵攻を計画していた」という決めつけも史実と反する。
事実、ハワイ攻略を唱える者もいたが、攻略することができたとしても、到底維持することはできないとする意見が大勢だったとされている。

ミッドウェイ作戦の本旨は、
ドゥーリトルによる奇襲的な東京空襲の報を受け、海軍はなにやってんだ、さぼってんじゃねーぞ、という国民(というより、天皇陛下)の心の声に、人一倍、アタマと胸を悩ませていた山本五十六とその側近参謀が、
『ミッドウェイ島占領を餌にして、アメリカ太平洋艦隊主力(特に空母)をおびきだし、帝国海軍の全力でボッコボコに殲滅すること』
『可能なら、その後有利な条件で米英と停戦または休戦に持ち込むこと』
にあったというのが史実だ。

ハワイだ、西海岸だ、と勇ましく走り出すどころか、
畏れ多くも、皇居のある帝都を不意打ち空襲された山本五十六が、
その汚名を雪ぐために仕掛けた、

″目的:ぜってぇ仕返しすっかんな″レベルの、

だが、とんでもない規模の艦隊を結集した、
一世一代、渾身の待ち伏せ作戦のつもりが、仲間をワンサカ集めすぎて相手にバレバレだった悲しい作戦なのだ。

監督、配役ともに期待が大きかっただけに、とんでもない背負い投げを喰らった気分になった。

Haihai