「CGに頼りすぎ」ミッドウェイ superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)
CGに頼りすぎ
日米両方の視線から描いているのは、この手の作品には珍しく好感が持てる作品です。ただそうすることで登場人物の人数が増えてしまい、感情移入がし難くなっています。それと戦記を知っている方ならともかく、状況が今ひとつ掴み取り難く、どうなっているのか分かり辛いのです。
ミッドウェイ海戦の最大のミスは、地上攻撃用の爆弾から艦船攻撃用の魚雷に交換したことです。その交換中に敵機の奇襲を受けてしまいました。
本来はあのままミッドウェイ島の爆撃を行い、身軽になった零戦の機体でグラマンと交戦し、空母に帰還後魚雷を積んで艦船攻撃を行うべきでした。そういった部分が余り描かれていないので、何が敗戦原因だったのか良く分からないのです。これは脚本の問題だと思います。
それと日本俳優側の演技に起伏が欠けていて危機感が全く伝わってきません。やはり日本人の助監督を付けるべきだったか、若しくは監督に助言できるような大物日本人俳優を起用すべきだったと思います。
中でも本作の最大の問題はCGに頼りすぎている点です。確かに迫力はあるのですが、戦闘シーンのほとんどがゲーム画面のような映像になっています。実写部分のセットにコストを掛けていないので、甲板上の兵士や艦砲射撃の銃器などが僅かしか描かれていません。やはり実物大の空母のセットと大量の兵士を使い、実際に撮影しなければ本物の迫力は得られないと思います。
映画館のボケた映像では良く分かりませんが、鑑賞後ネットで予告編などの映像をテレビ画面で見るとCGの粗が非常に良く分かります。
もう一点、日本人として気になるのは山本五十六を豊川悦二が演じていることでしょうか・・・。そういうことからも、この監督は余り史実に対してこだわりがないのでしょうね。
余談ですがミッドウェイといえば1975年に同タイトルで一度映画化されています。あの作品はジョン・フォードが撮影した実写を挟んだりして戦闘シーンを作っていたのですが、映像は余り迫力がありませんでした。まあ時代を考えると仕方ないことです。
しかしあの作品にはセンサラウンド方式と呼ばれる特殊音響を使っていました。人間の可聴範囲以下の重低音を再生出来るスピーカーを用いて、劇場内に本当に爆風を発生させていたのです。センサラウンド方式は僅か三作品にしか採用されなかった音響効果で、あれを体験した方はもうほとんどいないでしょうが、その効果は凄まじい物でした。現在の4DXをも凌駕していました。
本作を観ながら『もしこれがセンサラウンド方式を採用していたら、物凄い迫力だっただろうなあ』と懐古的に思ってしまいました。