「高校生が日焼けしている、という当たり前の素晴らしさ」子供はわかってあげない 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
高校生が日焼けしている、という当たり前の素晴らしさ
なんでこんなにしあわせな映画ができるのか? 沖田修一監督のもっているリズムとユーモアや、その世界観で漂っているような俳優たちの妙演など、素晴らしいポイントはいくつもあって、何の話かよくわからないまま、しあわせに時間が過ぎていく。なんだこれ、発明か。
そして数ある青春映画の中でも特異とも言えるのが、上白石萌歌演じる主人公、朔田美波の、毎日を楽しむ力の強さ。朔田さんは、目の前にあるものをいつも思い切り楽しんでいて、屈託や悩みもあるにはあるけれど、概ね前向きな気持ちが勝ってしまう。青春映画の多くは憂鬱や行き止まりの感覚を描くものだが、本作の朔田さんにはそれがない。しかしそんなものは本作には要らないのだと、上白石萌歌の屈託のなさに教えられる。
この映画は二年前のひと夏に、順撮りで撮影されたという。気がつけば真っ黒に日焼けして、ニコニコしている上白石萌歌の無防備さに、知らず知らずのうちに救われてる。この演技を見るだけでも、割増料金を払いたいくらいである。
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