劇場公開日 2021年8月20日

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「タイトルに意味に気づいたとき、物語はより濃厚に変化する!!」子供はわかってあげない バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0タイトルに意味に気づいたとき、物語はより濃厚に変化する!!

2021年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ある日、手紙が届いた。それには直接的なことは書かれておらず、差出人もよくわからないような状態だったが、 美波にはそれが幼い頃に別れた父親からのものだと直感でわかったものの、名前も住所も書かれていなかった。

その手紙をきっかけに、実の父親を探すことになるわけだが、実はここにタイトルの意味が活きてくる部分があって、そもそも『子供はわかってあげない』というのは、タイミングのことではないだろうか。

そんな父は住所も書かずに、「会いたい」とも書いていない。もちろん本音としては、娘に会いたい気持ちはあるが、それをストレートに伝える勇気もない。だからこそ、まさか会いに来ないだろうと思い、会いたいけど伝えられない気持ちを感覚的に謎の手紙を出してしまったわけで、ある種の自己満足だったのかもしれない

しかし、美波は会いに来てしまった…嬉しいのは大前提ではあるが、一方で心の準備ができていない部分もある。つまり子供というのは、大人の心の準備ができるのなんて待ってくれずに、成長するし、行動してしまう。

これは父の視点だけではなく、一緒に暮らす母の視点も同じことがいえる。

親にとって、子供というのは、いつまでたっても幼いイメージがあったりするわけで、そんな中で成長した姿を見てしまうと、心の準備ができておらず、思わず涙を流してしまうことがある。

親の目線から『子供はわかってあげない』ということではないだろうか。それに気づくとこの作品が、子供の成長を見守る物語であると理解ができるのし、実は冒頭のオリジナル劇中アニメの中にも同様のメッセージが含まれている。

上白石萌歌のふんわりした雰囲気を活かした主人公・美波と、周りのくせ者揃いな登場人物たちとの掛け合いが、脱力感もありながら、独特の世界観が展開されていて、その中で家族愛や青春も、独自のペースで描いてみせた。

バフィー吉川(Buffys Movie)