「【意識と無意識の間にあるもの/親子になること、人を好きになること】」子供はわかってあげない ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【意識と無意識の間にあるもの/親子になること、人を好きになること】
この「子供はわかってあげない」は、思いがけず強く印象に残る作品になった。
原作のことは知らないけれど、興味深いものなのだろうと想像もする。
そして、映画も秀逸な作品に仕上がっていると思う。
この夏公開の、いわゆる大作ではない邦画なかでは、「サマーフィルム」と、この作品がオススメかもしれない。
それに、敢えて選べと言われたら、僕は、こっちの方が好きかもしれない。
子供は、子供になろうと思って、自ら、そこにいるわけではない。
親だって、子供が出来て、だんだん親らしくなっていくのであって、親になるんだと敢えて意識してるわけではないだろう。
だが、物心つく前に離れ離れになった、この親子、美波と藁谷友充は、敢えて、子供になろう、親になろうと思ったのではないのか。
だから、美波は、水泳部の合宿期間プラス1日を、父親の家で過ごしてみたのだ。
藁谷が、門司くんに対して、酒を酌み交わそうとするのも、美波の父親らしく振る舞ってみたかったからに違いないのだ。
そして、藁谷が、相手の意識をどのように読むのか説明する際に、例に取られたミルフィーユ。
親子になるのに、もともと意識をすることなんてないと思うと書いたが、当然、無意識にでもない。
本当は、意識と無意識の間に、もう一つ重要な何かがあって、親子だとか人間関係に影響を与えているのではないのか。
ミルフィーユの生地と生地の間に滑らせるように……。
親子の関係だって人間関係だ。
意識はしてなくても、親子の関係に次第になっていくのだ。
ミルフィーユという課題に対して、泳げるようになるために水死体のように浮かぶという回答。
教えられて、それを人に教えて、繋がって、広がっていく。
これも、意識するとしないとに関わらず、全くその通りではないのか。
二人は気が付いたのだ。
親子になったのだ。
そして、これは、きっと人を好きになる時も同じだ。
徐々に、そして、いつのまにか意識することになって……。
高橋源一郎さんまで良い味出して、藁谷や門司くん、お兄ちゃん、水泳部のコーチ、お母さんにお父さんなどキャストは皆素晴らしいが、美波こと上白石萌歌さんが光っていたと思う。
なんか、良い余韻が残る作品だった。