good people : インタビュー
ジェイ・ウェスト×今宿麻美×ダンテ・カーバー×渋谷靖監督「good people」5年越しの公開に何を思う?
ジェイ・ウェスト、今宿麻美、芦名星、玉山鉄二、ダンテ・カーバーらが出演する「good people」が、12月7日から東京・新宿バルト9ほか全国で緊急公開される。主人公は、シェフになる夢を諦め無力になっているビリー、自分に自信がないという恐怖心から夢を諦めたミキ、理想の彼女を追い求める矛盾だらけのケイレブという国籍も性別も異なる3人。現代の東京を舞台に、不器用に生きることしか出来ない若者たちが出会うことで、無力感にさいなまれながらも運命が交差し始めていく姿を描いている。
メガホンをとったのは、1990年代にハリウッドで映像を学び、短編映画やミュージックビデオなどを手掛けてきた渋谷靖。彼にとって長編初監督作となる。もともと2014年に「pancakes」のタイトルで、日本映画として初めてHOLLYWOOD FILM FESTIVALで上映され話題になった作品だが、「good people」とタイトルを変え約5年の時を経て劇場公開されることになった。
そこで、本作の3人の主人公を演じたジェイ・ウェスト、今宿麻美、ダンテ・カーバー、そして渋谷靖監督にインタビューを敢行。この5年の思い、そして渋谷監督のユニークな撮影スタイルについて話は大盛り上がりとなった。
――「pancakes」のタイトルで、アメリカの映画祭で上映されてから5年。いよいよ日本での劇場公開が決定したわけですが、現在のお気持ちはいかがですか?
ダンテ:やっとかと思いました(笑)。HOLLYWOOD FILM FESTIVALで1回上映して。それはすごく良かったけど、それから日本で上映していなかったから。なんでまだ上映しないの? と思って。何度も監督に連絡していたけど、もうちょっと待ってください。一生懸命やりますと言っていて。だから長かったです。でも嬉しいし、本当にハッピー。
渋谷監督:やはり映画というのは少し先を見据えて作るものなので。このタイミングで公開されることになって、良かったですね。でも多分皆さん、今日まで公開すると思っていなかったんじゃないですか?
今宿:どうなったんだろうとは思って、気にはなってたんですけども、まさか公開されるとは思っていなかったですね。
監督:何もしていなかったわけじゃないんです。でもなかなか決定しないと、近況報告もできなくなってしまうんですね。
ジェイ:確かにね。
監督:ジェイも5年前から変わらないよね。
ジェイ:ありがとう(笑)。この映画のことを考えると、撮影当時にあった自分の個人的なことを思い出すんですよ。この役と、自分のプライベートの流れが何か重なって、一緒になったような気がして。それはすごく不思議な体験でした。
ダンテ:僕は自分の映像を見るのは好きじゃなくて。見ると考えすぎてしまう。なんでこのカットを使わなかったんだろうとか、やっぱりこのシーンにはこの演技の方が良かったかなとか。だから監督がOKなら、はい次。CMもそんなに見ない。1回か2回見るくらいでちょうどいいです。
今宿:わたしもあまり見ないですね。時がたってから見る。
ジェイ:僕は映画が良ければまた見たいですけどね。
今宿:でも映画を久しぶりに見ると、この2人(ジェイとダンテ)のやりとりが素敵だなと思って。現場では見られなかったものだから。
ダンテ:そうですね(笑)
ジェイ:その通り(笑)
――90年代にハリウッドで映像を学んだ渋谷監督は、短編映画やミュージックビデオなど幅広く活躍していますが、現場はどのような感じだったのでしょうか?
今宿:今、思い出したんですが、監督からは最初に「仲良くしないで」と言われたんですよね。
ダンテ:怒った顔が欲しいときは、撮影の時にわざと怒らせて、それを撮影する。あとでごめんねと謝るんだけど、あれはずるいよね。
ジェイ:監督は変わった技を使うんですよね。
渋谷監督:あれは自分の師匠から学んだスタイルなんですけど、スタッフさんからもずいぶん怒られましたね。右から来ると説明したのに、左から来させたりとか。右側のドアを開けてというのに、鍵を閉めてみたりとか。そうすると美術の方にも怒られちゃうんですよね。グラスが割れたらどうするんですかって。皆さんを怒らせてばかりでした。
ジェイ:でも面白かったですけどね。
ダンテ:自分のイメージがあるから、そうするんでしょうね。イッツ・オーケー。
今宿:でも今思えば、それがあったから(劇中で演じる)ミキというキャラクターが出来たのかもしれないですね。
――今宿さんが演じるミキという役は、自分に自信がないという恐怖心から夢を諦めている女性ですが、共感する部分などはありますか?
今宿:ブレーキをかけるところと言いますか、自分の仕事の時は、一回立ち止まってから考えてみるところがあって。そういうところは一緒だなと思いましたね。
渋谷監督:やはり今宿さんをカッコ良くするのって簡単じゃないですか。単純にカメラを向けるだけでかっこいいんだから。だからどうしたら、もう一皮むけるだろうというのがありましたね。だって今宿さんは僕ら世代のカリスマでしたから。って、なんかいい具合に褒めたね(笑)。
今宿:ふーん、そうなんだ、という感じですね(笑)。でも渋谷監督はすごく真面目な方なんだなと思いましたね。現場でもずっと考えていたし、ミキという役についてもずっと話し合っていましたからね。
――ダンテさんの役は、自分自身と近いと思いますか?
ジェイ:ダンテは、この(劇中の)キャラクターとは違うよね。
ダンテ:全然違う。僕は自信のあるタイプだけど、彼は自信がないシャイなタイプ。それはちょっと違う。
ジェイ:ダンテはしゃべりが止まらないんだよね。でもカメラがまわるとシュッと変わる。ダンテにはオンオフのスイッチがある。あれはプロだね。振り幅がすごい。リスペクトだね。
ダンテ:僕はいつもハイテンションだけど、違うキャラクターの演技をするのも好き。いつもチャレンジをしたいと思っています。でも、この映画で僕が泣いているシーンがあったけど、カットされていたの。時間をかけて撮ったのに。(ダンテが劇中で演じる)ケイレブさん、ホントにかわいそう。そういえばあの僕の大好きなシーンはまだ入ってる?
渋谷監督:芦名星さんと一緒にいるシーンとかだよね。あそこのダンテはたぶんこの映画でも1番か2番か、というくらいに良かったよね。でもごめん。あそこもカットされている。
ダンテ:いつもこのパターンね(笑)
渋谷監督:実は今宿さんが泣きながら帰るシーンもあったんですけど、あそこもカットしているんですよ。
今宿:そういえば撮影で泣きましたね。
ジェイ:あそこのシーンは素敵だったのにね。
渋谷監督:これは嫌われますね(笑)。もちろんそのシーンを入れようと努力はするんですよ。でも全部のシーンを入れたバージョンを作ってみせたら、なんでカットしたか分かると思いますよ。カットしたところは、なんか美しすぎて、逆に映画にハマらないんですよ、
今宿:確かに何かが違うんでしょうね。写真でもそうですけど、わたしはこの写真がいいと思っても、編集の人たちは違う写真がいいと言うし。そういうことなんでしょうね。
ダンテ:今日のインタビューも、僕らのいいコメントは全部カットされます。
一同:(笑)