「抑圧された怒り。真実の中にある友情。」リチャード・ジュエル コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)
抑圧された怒り。真実の中にある友情。
内容は、実話を撮らせると全て傑作のクリント・イーストウッド監督作品。時は1996/7/27オリンピック開催中の🇺🇸アトランタ記念公園のライブ会場に置かれた爆弾を発見した主人公リチャード・ジュエルが、一躍HEROとして皆に讃えられたものの、その後一転、爆弾犯として疑われた彼の数奇な運命と弁護士ワトソンとの友情を描いた人間ドラマ。一人の人間を偏見だけで無実の罪に陥れる、FBIの杜撰な捜査やメディア報道のあり方を批判している。
印象的な台詞は、ワトソン『何故怒らない!』リチャード『アンタだけが唯一人人間として接してくれた!しかし今は自分を捨てろと言う!無理だ!』三幕構成の始まりで起点となるリチャードの魂の叫びと二人の絆が深まる場面に涙腺が緩みました。ある意味社会的少数派で生きる上で障害を持つ不器用な主人公の生きづらさと共感できない友人の壁の高さに心熱くなりました。
印象的な場面は、一人の女性記者キャシーの『犯人は誰であれ記事が出し抜け犯人が興味深い人間であります様に』誰に願うのかその場面が怖かった。無知で傲慢な野心家の一面が上手く表現されて一つの問題提起になったと感じます。
印象的な演出は、当時の本人のテレビ報道がそのまま使われている部分です。テレビ社会だからこそ出来る表現とアメリカの実話の再現ではキャスト選びの類似性には、いつ観ても頭が下がります。ホントに比べても分からないぐらい似てます。クリントン大統領もそっくりさんかと思ってしまいました。
実話を丁寧にトレースしていて分かりやすくテンポの良い切り替えは監督の手腕による素晴らしいものです。事件その後の実話を記せば、この事件の真犯人はエリック・ルドルフ当時29歳男性。病院やナイトクラブで4回の爆破テロを起こす。2005/8仮釈放なしの終身刑となる。ジュエルは、念願の警察官になり1998結婚。各種メディアを名誉毀損で訴えて和解金を手にする。名誉は回復されるが、その頃には持病の糖尿病が深刻化し2007/8/29死亡。享年44。仕事から帰宅後の妻により発見される。突然死だと思われる『劇中でも苦しく胸抑えるシーンが予兆です。』アトランタジャーナル記者キャシーは2001/9ドラッグ過剰摂取で死亡。享年42。その死はジュエル事件報道で精神崩壊による自殺だったといわれる。
色んな問題が折り合い複雑に入り組んだ社会と一昔前の時代背景に現在を重ねて見る事の出来る素晴らしい作品です。親子の愛情や理解し合えない友情や権威主義に対する批判等、現代でも比較する事の出来る内容には学ぶべき所の多い好きな作品です。
個人的には銃が沢山ベットの上に並べてあるシーンが大好きです。思わず画面停止して一つづつ味わってワトソン宛ら笑ってしまいました。
コメント&共感ありがとうございます。ホント実際の事件を描かせれば素晴らしい精度に仕上げてくれる監督ですね。同じ様な作品であるアメリカンスナイパーも好きですが、こちらも好きな作品です。個人的にはジャージー・ボーイズが好きなのですが(^_^;)
そっか、イーストウッド監督なんだ。やるなあ。
登場人物たちのその後を教えて頂き、ありがとうございます。それを知ると、この映画がまた一つ深くなりますね。
というか、このレビューが素敵。みんなに読んでほしい!!