「故人だからこそ敬意を。」リチャード・ジュエル yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
故人だからこそ敬意を。
クリックして本文を読む
本作は実際の爆破事件を扱っていますが、当然のことながら演出上の脚色がなされています。
劇映画である以上、脚色自体は当然です。しかし本作における女性記者が捜査官を誘惑して情報を引き出した場面は、全くの創作である可能性が高いです(本人以外には知り得ない状況であるため)。事実でないとすればこの記者の名誉を著しく傷つけています。
だが件の女性記者は後に自殺しているため、本人から訴えられることはありません。それを踏まえてこの場面を撮ったとすれば、まさに「死人に口なし」とばかりに、敬意を欠いた振る舞いであると言わざるを得ません。
映画は、映像の作り方で容易に故人を貶め得るという事実こそが、表向きの主題以上に本作があぶり出した重要な問題でしょう。
映像的には安定のイーストウッド的な絵作りが楽しめるし、淡々としていても目を離させない演出の巧みさが健在なだけに(主題的には『チェングリング』などの過去作との既視感はあるものの)、上記の問題は本当に残念。
コメントする