「様々な群像とコントラストが光る作品」ファーストラヴ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
様々な群像とコントラストが光る作品
「ファーストラヴ」この題名から想像するのは、通常は初恋という言葉だろう。
作品の中にもそのような感じのものは登場するが、物語の中に初恋を主張するものは何も出てこない。
精神状態がおかしいと思しき女性カンナが犯した父親殺しの罪。
彼女の精神状態がおかしいのは彼女の所為ではないと考えた公認心理師のユキは、彼女の取材をするために接見を申し込む。
その弁護士のカショウがかつての彼女の恋人だった。更に彼の兄が現在のユキの夫という、説明だけで尺が取れそうな設定になっている。
つまり彼らは、それぞれ心に闇を抱えた者で、カンナの事件をきっかけに複雑になって絡んでいた糸を解きほぐすことになってゆくのだ。
「密室 そんな世界 誰も助けてくれなかった」 カンナの心の叫びは、ユキに痛いほどよく分かると同時に、自分自身も夫に告白しなければならないことを突きつけられてゆくのだ。
カンナは社会的に、強制的に自分自身と対峙があり、自分自身の対峙はユキにもカショウにもあったのだ。
そして毒親だと思われたカンナの母もまた、心に深い傷を負った人だった。
立場はそれぞれ違うが、似たように心の傷を抱えながら必死になって生きているのを群像として描きつつ、お互いのコントラストを明確に描いている。
裁判が非常にも実刑を確定させるが、カンナは自分自身と向き合うことができたことは、共感と安堵感を覚えた。
ちなみにこの題名は、この裁判を通してカンナが初めて誰かに助けてもらったその愛情を感じた意味だと思った。
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