「単純そうで、実は奥深い良質な「サスペンス映画」。役者陣の化学反応によって名作の領域に。」ファーストラヴ 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
単純そうで、実は奥深い良質な「サスペンス映画」。役者陣の化学反応によって名作の領域に。
これまで多くの堤幸彦監督作品を見続けていましたが、本当に私が映画として好きなのは2006年の渡辺謙主演の「明日の記憶」くらいだったのかもしれません。
ただ、ようやく本作で、その記録を更新することができました。
多くの「サスペンス映画」では、どこかバランスの悪い面があり、キチンと人間像等が描かれていない印象でしたが、本作はかなり深いところまで描けています。
冒頭の殺人事件は、一見すると簡単そうな話でも、北川景子演じる公認心理師が「本の題材」として取材してみると、意外と深そうな「仮説」が見えてきます。そして中村倫也が担当弁護士を務め、北川景子と共に事件の真相を探っていきます。
ただ、芳根京子が演じる「父親殺しの容疑者」である女子大生は一癖も二癖もあるので、何が本当で何が嘘かは分かりにくい面があります。
ちなみに、面会室のシーンでは、特に北川景子と芳根京子による「ガラス越しの演技の応酬」が凄まじく、芳根京子の演技に圧倒されます。
本作が面白いのは、容疑者の過去・現在だけではなく、それぞれの登場人物が過去・現在と対峙することで、様々な化学反応が生まれ、深みを増していく点です。
通常は、そこまで広げると話が散漫になりますが、本作では登場人物を多くしていない分、焦点が絞りやすくなっていて、混乱することなく巧みに深い世界へと誘ってくれます。
出だしからラストに至るまで丁寧に作られていて、それぞれの出口が用意されている点も良かったです。
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