「本当に、よくわからない」サイレント・トーキョー まめこさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に、よくわからない
この映画は、要するに戦争反対ということを一貫して主張しているのですが、その戦争というものが人間を、平和を、いかに脅かすかということがまるで描かれていないのが残念です。
なので、石田ゆりこさんや佐藤浩一さんが素敵な演技をしているのに、どこか覚めてしまう。というかまるで乗ってこない。
大衆の無関心に対する警笛という、すごくシンプルでわかりやすい題材なのに、核となる戦争反対をないがしろにするから観衆である私もこの映画に対して無関心にならざるをえず。それが狙いであるなら見事に的中しているのですが。。。それでは映画としてはつまり駄作というのではないでしょうか。
あと、結構な数の人間を殺戮してますよね。盛り上げるだけの演出でああいうことをすることに意味があるのだろうか。そんな人間が戦争反対って。なんか本末転倒だなあ。なんだか「渋谷スクランブルで大量無差別テロ」という派手さで見せる安っぽさを感じました。
あとスクランブルに集まった人々の、若者は向こうみずで愚かで騒々しい、という描き方をいいかげんやめてほしいですね。そんなに若い人はバカじゃないですよ。昔も今もきっと。私自身、昔を知りませんが。でもああいう薄っぺらいステレオタイプってホントに見てて嫌気がさします。
それから広瀬アリスさんの感情変化を疑うわってくらいでしたね。友達殺しそうになって病院で自分見失うわ、すぐ思いついて男の家行くわ、そのあとテロリスト?って恐怖におちいるわ、さらに秒で引き出し漁るわ、でその数十分後に警察行くわ、っておいおい、飛んだ想像力と行動力持ってんなって笑ってしまいました。
演出でやりたいであろう、ハリウッドばりの危機管理センターの芝居が、やはり日本映画の脇役の層の薄さを感じました。セリフも劇画かよってくらいダサいセリフを体つきも目つきも捜査一課にそんなやつ入れるわけないだろ、って方々ばかりで、やりたいことと現実がかけ離れ過ぎててそれもまたやるせない気持ちになりました。
いろいろ言いたいことがまだまだありますが、要するに、あの渋谷のテロは、本当に、よくわからない、という作品でした。