「主人公は風変わりだが、ハードボイルドの王道だなぁ」マザーレス・ブルックリン りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は風変わりだが、ハードボイルドの王道だなぁ
1957年の米国ニューヨーク。
私立探偵事務所で探偵を務めるライオネル(エドワード・ノートン)。
画面チックと突発的な発声などの障害を抱えながらも驚異の記憶力で、ボスのフランク(ブルース・ウィリス)からの信頼も厚い。
ある日、ボスが追っていた事件の最中に、ボスは拉致され、ライオネルの前で撃たれ、息絶える。
ボスの最期の言葉をたよりに事件を追ううちに、ダウンタウンの再開発計画とそれを牛耳る大物が絡んでいることが判ってくるが・・・
というところからはじまる物語で、「アメリカンノワール」と銘打たれているが、典型的なハードボイルド映画。
なにが典型的なのかは、個人的な好みもあるが、次のとおり。
1.一見、簡単そうに見える事件が実は裏の裏、人物関係が複雑
2.主人公の行動によって、物語は進む
3.運命の女性(ファム・ファタール)が登場する
1については、簡単そうな事件かそうかはさておき、人物関係が複雑で、事件の全貌・細部には、よくわからないところがあります。
これについては、2.の主人公視点で物語が進むので、客観的描写は省略される(映画では描かれない)ことが多いためでもあります。
また、2.のパターンでよく採用されるモノローグも、この映画でも採用されている。
3.は、これが重要な要素だと思っているのですが、いわゆるミステリーやサスペンス分野の映画では、事件の解決・解明に焦点があてられるが、ハードボイルド映画では、運命の女性と主人公との関係に焦点が絞られて収斂していきます。
概ね、運命の女性=悪女の場合が多いのですが、そうとも限らない。
この映画では後者のパターンで、主人公はいつしか事件の解決・解明よりも、運命の女性の運命の方が気がかりになっていきます。
そう、ハードボイルド映画は、犯罪がらみの恋愛映画、というのが本質的なのではありますまいか。
ということで、いやぁ、このパターン、久しぶりに観ました。
事件の全貌が明らかになっていく過程は長尺にもかかわらず、意外にもわかりづらいが、主人公が運命の女性のことが気がかりになっていくには、これぐらいの尺が必要。
2時間20分という長尺、もっと切り詰めてもいいような気がするのだけれど、個人的には長いようで短い・・・
もしかして、3時間のディレクターズカット版が登場するかも、などと思ったりもしました。
基本的は、満足な一篇でした。