「客の記憶力をもっと信じてどうぞ」マザーレス・ブルックリン Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
客の記憶力をもっと信じてどうぞ
豪華キャストに惹かれて観賞
昨年ウィレム・デフォーのゴッホのも観たのもあって
ちょっと楽しみにしていました
感想としては
各俳優の演技力の光る見応えある作品でしたが
スケール感においてはややこじんまりした印象を受けました
1950年代ニューヨーク多種多様な人種の暮らすブルックリン区
探偵事務所のボスフランクが事件を追う途中で殺害され
トゥレット障害を抱えつつ人並み外れた記憶力を持つライオネルが
仇討ちに似た真相解明に乗り出すストーリー
殺害されたフランクの電話越しのやりとりの
記憶を手がかりに捜査を進める中で出会う人々や
探偵事務所の他の境遇の似た仲間達やブルックリンの
人々との交流によって当時の様子がうかがえます
雰囲気はすごくいい映画なのですが肝心の
事件自体は行政官のスキャンダルに絡むそんなに
捻りのないもので正直主人公の能力や
実力派の俳優が見せる演技ほどにはストーリーに
奥行きを感じなかった部分はあります
ライオネルも記憶力というよりは普通に洞察や
推理から話を進めていってしまい
記者になりすましているのにあまりにメモを取らないので
逆に怪しまれるという逆効果なことになっています
(まあこのへんはそういう仕事への不得手さを演出したのかもしれませんが)
フランクとの思い出をたびたび語るのですが
ちょっと繰り返しすぎて客の記憶力をもっと
信用してくれよと思う部分もありました
事件の結末も本物の記者に真相を送りつけるという
静かな終わり方を見せ淡々と物語は終わっていきます
大人な終わり方といえばそうなのですが長めの尺なので
ちょっと物足りない感じもしました
もう少しライオネルの障害が社会的ハンデなどの
影響を及ぼす部分もあってもいいのかなと思う部分も
ありました
とはいえ俳優の演技は光っており
スクリーンに映し出される50年代のブルックリン
ジャズバーの雰囲気などは引き込まれます
ただやはりテーマに比べて時間が長すぎます
もう少しシェイプアップした尺でスッキリにでも
いいかなと思いました