ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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新宿二丁目の太陽
コロナ禍もあってしばらく映画館から遠ざかっていましたが、東京FMの稲垣君の番組でこの映画の存在を知り、またYouTubeで15分間の告知動画を観て興味を持ち、久しぶりに映画館で鑑賞することにしました。歌舞伎町の映画館で観ましたが、映画館を出たあと、暗くなった街の片隅で二人が寄り添っていそうな気がしました。
まず草彅君ですが、一般的には難しい役どころと言えるかと思いますが、私は最初から草彅君にハマりそうだと思っていたので、案の上期待通りで、すんなりと映画の世界に没入することができました。途中エグい場面がいくつかありますが、これは前所属事務所ではOKが出なかったと思いますので、そういった意味でリミッター解除というか、彼の役者としての幅は確実に広がったと思います。日本で活躍が難しいのなら、いっそこの作品によって日本の枠を飛び出してほしいと思います。そうなるように願っています。
そしてイチカ役の服部さんも素晴らしかったです。初の演技ということでしたが、だからこそのビギナーズラックというか、初めてならではの計算のなさと、ネグレクトや自傷癖など複雑な問題を抱えた役どころが絶妙にマッチして、二度と観ることは適わないだろう名演を見せてくれています。そしてバレエも本当に素晴らしかった。コンクールのバレエシーンは本作のハイライトであり必見です。インタビューを拝見すると今後も演技を続けるお考えのようなので、草彅君と共に今後の活躍が楽しみです。
服部さんを観ていて、異論はあるかと思いますが、その面立ちと良い、私は初期の倍賞千恵子を思い浮かべました。賠償千恵子もSKDの元トップスターで踊りも歌もいける名優です。全く作品の質感は異なりますが、ある意味「男はつらいよ」の寅さんも生きづらさを抱えた一種のマイノリティだったように思われ、イチカはその傍らに優しく寄り添うさくらのようにも見えたわけです。そこで彼女には倍賞千恵子の代名詞「下町の太陽」ならぬ「新宿二丁目の太陽」の称号が相応しいと思いいたりました。もちろんあくまでこの作品においては、です。今後は新宿を大きく超えてどんどん活躍を広げていってほしいと思います。
30分ぐらい長くなっても良いので、特に後半部分はもう少し丁寧にストーリーを見せてほしかったようにも思います。「カットしてません?」と思えるような箇所がいくつかありました。その他演出の部分でいくつか疑問はあったものも、やっぱり映画館で観る映画は良いなと思える良い映画でした。
人間描写が弱い
この映画の評価出来る点は草薙の「知名度」により映画がヒットしたこと。ジェンダーについて考える機会を、多くの人に与えるきっかけとなったのは良い。
しかし映画の内容としてはイマイチ。
登場人物の心の葛藤が「大声を出し怒鳴る」「自傷行為をする」「暴力行為をする」といった形で表現される場面が多く物足りなかった。
社会的に、あるいは年齢的に複雑な心理状態に置かれている人物の心理描写をもっと深く丁寧に表現して欲しかった。
特にイチカがママ母と別れて実母の元に戻る際の心の葛藤が描かれていないのは本当に惜しい。
似たような物語設定のアニメ、「アルプスの少女ハイジ」では、ハイジがアルプスの生活から都会へと戻る際に【山での生活を心から愛していた少女が、大きな寂しさを感じながらも現実を受け入れる逞しさ】が表現されていた。
この映画からは、イチカのそういった感情の葛藤があまり感じられず残念であった。
個人的にはオカマちゃんの会話がとても楽しく、そこがとてもリアルで良かった。
もう出会えない、奇跡の一本。
想いが溢れて止まらない。
鑑賞した人と話したくてたまらない。
死、血、汚物、リアルが迫る大事な演出。
草なぎ剛君が凪沙役を引き受けてくれた奇跡と、いちか役の本物のバレエができる純粋な目をした服部樹咲との希少な出会い。
何も考えず、そのままの自分で観に行って欲しい。訳がわからない感情が溢れ出てくる。
内田監督のオリジナル脚本というところが良いです。
監督の譲れない潔い演出の想いが深く突き刺ります。
評価とかじゃなく、自分が表現したい事をオブラートに包まずに真っ直ぐに届けようとしてくれた強さを感じる映画です。
恐れずに届けてくれた制作陣にこの国の暗部が引っ張り出されて、私達は直視する勇気を持たなくてはならないと感じました。
【祈り】
多様性とはなんだろうか。
「LGBTって流行りなんでしょ」
と作品中で採用担当が話すように、言葉やカテゴリーが先走って、逆に窮屈になったり、取りこぼされている人が多くいるのではないのか。
凪沙は母性に目覚めたのだと、僕達は簡単に言って良いのだろうか。
僕達は、至る所で、無意識に男女を分けて考え過ぎてはいないか。
凪沙は当初、単に親になりたかっただけではないのか。
踊りとバレエという共通項を見出して、窮屈なジェンダーというカテゴリーに縛られ、水槽の中で生きることを運命づけられたような自分とは違う、自由な可能性を一果に見出し、その可能性を「親」として後押ししたかっただけではないのか。
そんな親になりたかっただけではなかったのか。
しかし、一果と引き裂かれ、自身のジェンダーを追い詰められるように考えた時、書面上・登録上の父親という選択肢には耐えられず、手続きなど容易なタイで性転換をしてしまって、母親にもなれるのだと一歩踏み出してしまったのではないのか。
性転換に葛藤を抱えていたように見えていた凪沙には大きな決断だったのだろう。
多様性とはなんだろうか。
ジェンダーとはなんだろうか。
LGBTQとはなんだろうか。
親であるとは、
母親であるとは、
父親であるとはなんだろうか。
元々ある区別に加え、選択肢が増えたからといって、僕達が人であることに違いはないだろう。
多様性を云々する前に僕達はみんな人なのだ。
僕は、僕達の生きる社会が、心と身体の性が一致しないのであれば性転換しなさいと強制するような社会であって欲しくはない。
また、性転換しないのだったら、身体の性のままだと決めつけるような不寛容な社会でもあって欲しくはない。
うわべで多様性を論じても、僕達の社会には、実は、そんな不寛容さが至る所に潜んでいる。
凪沙と一果を繋ぐのはバレエだ。
2人が公園で踊るシーンは秀逸だ。
凪沙は、ジェンダーを意識することなく、夢や目標を持って、それに向かって努力出来るはずの一果に、窮屈なカテゴリーの中で、水槽の中だけで生きることを運命付けられた金魚のような自分にはない自由な可能性を見たのだ。
これを後押ししたいと思うのは、ジェンダーでは括れない愛情ではないのか。
だから、親であるだけで実は良かったのではないかと思うのだ。
スクール水着を着る身体的男子がいたって良いのだ。
同様に主人公ぎバレエにひたすら向き合う映画「Girl」のように強く性転換を願うこともあるだろう。
しかし、心と身体の性とは関係なく、「親」であるだけで、別の更なる一歩を踏み出す人もいるのではないのか。
僕達はカテゴリーを多様化して、いつの間にか、それで満足してはいないか。
細かい窮屈が増えただけになってはいないか。
凪沙の期待と共に白鳥のように羽ばたく一果。
社会の不寛容に押しつぶされるように去る凪沙。
これは皮肉のようだが切ない対比だ。
人として、不寛容が少ない社会であれば良いと願いたい。
そんな社会になることを祈りたい。
「草彅剛」はいなかった。
衝撃でした。 草彅さんの演技は定評があるので、期待をしていきました...
とても良かった!
予告で期待しすぎてしまった。
インスタやネットを見ていると予告動画が流れて、Twitterでも芸能人の方が絶賛していたのでかなり期待値を高めてしまった。
これから観る方は何も入れないで映画館に行くことをお勧めします。
話の流れとしては、「LGBTの社会の目」と「いちかちゃんの成長」が交互に散りばめられていて
自分としては「LGBTの社会の目」は2割くらいで良かった。
いちかちゃんとなぎさの交流は、前半は良かったが後半がいまいち感情移入できませんでした。
草彅君の演技はとても良かったのでもう少し編集頑張ってほしかったなと思ったのが本音です。
生きる光として
心が痛くなった。
途中、何度涙がこぼれそうになったことか。心に響いた台詞が観終わった後も残ったままで消えていかない。
凪沙の視線の先に、ふとした仕草に、ハイヒールを鳴らし歩く姿に。一果の表情、そしてもちろん彼女の踊る姿に。
それにしてもスクリーンに映るバレエのシーンはなぜにあんなにも美しいのだろう。この作品に限らず。踊るという行為は人間の内なる叫びから来ているのか。
LBGT、ネグレクト、母性愛、貧困、生まれついての環境、持って生まれた才能……考えてしまう事柄がありすぎて少々混乱気味。
ただ、虐待されている中学生の女の子を普通は親戚のおじさんには預けないだろうとか一果と母親との関係性とかそのあたりの設定に疑問点はあったけれど。
人生は思い通りにならないことばかりだ。
もし、もうどうにも自分のためには生きられないと思うのなら、誰かのために生きるという感覚を確かめてみてもいいのでは。モノやコトではなくて温もりのある誰かのために。
生きることから離れていかないで。
時おり挟まる東京の夜景のキラメキと全編に切なく流れるピアノの音色が美しくも悲しい。
切なく美しい愛のお話しでした
心が痛い
醜いアヒルの子は強く輝く
痛くて切なくて優しい映画
あちこちから嗚咽が聞こえてきて、私も涙があとから後から出てきました。エンドロールが終わるまで誰も立ち上がることがなく静まりかえっていました。1日経った今でも、頭の中を草彅さん演じる凪沙の表情や仕草がフラッシュバックしてきます。本当に、痛くて切なくて、優しく、儚く、魂を揺さぶられる映画です。まだ観られていない方は是非、映画館へ!!
本当に大切なもの
今年のベストに入る作品でした。
草彅さん、すごいな。
人間の様々な感情を一気に吹き出したような時間でした。
一果をちゃんと認めて、信じて、抱きしめてあげる。それだけで子供は安心する。自分は生きてていいんだって。短い間だったけど、一果にとって、人生を変える重要な時間だった。
もう、凪沙さんはお母さんだったんだよ。一果にとって大切な人だったんだよ。でもね、本当に心も体もなりたかったんだよね。苦しいね。
そして、運命は残酷。だけど、幸せだったね、最後に一果のバレエが見れて。
水川あさみ演じる、本当の母親はコテコテの下品な広島のヤンキーだったけど、なんか急に更生してまして…その更生するまでの一果との葛藤みたいなものはもう少し描かれててもよかったかなと思いました。
一果演じる服部樹咲ちゃん、スタイル抜群だし、バレエが素晴らしかった。初めの頃の垢抜けない地味な印象がどんどん輝いていく表情はなかなかのものでした。花とアリスの蒼井優を思い出しました。これからの活躍が楽しみの女優さんですね。
俳優、草彅剛氏の名演技に感動
予告編を見た瞬間から絶対に見たいと思い、プレミアボックスシートを予約して、見に行った。
本当に見て良かった。
感動した。
涙がポロポロ出て草彅剛さんの演技に震えた。
何回見てもきっと泣いてしまう。
草彅剛さんの役作りは、深い。
彼の作り出す、孤独感、飢餓感、胸が押し潰されそうな悲しさ、痛々しさに、ただ、圧倒された。
上辺を演じているのではなく、キャラクターをなぞるわけでもない。
草彅さんは、その役に入ってしまう、なりきってしまう役者ゆえに、見ている自分は芝居を見ているというよりは、無力な傍観者であるような気持ちになった。
水川あさみさんは、バラエティなどで見ると明るく綺麗な方であるという印象なのだが、この映画の中では、くたびれた醜い、業の深さを感じさせるような憐れな女性を、登場回数はそう多くはないながら、うまく演じているため、一瞬誰だか分からなかったぐらいであった。
服部樹咲さんは、美しかった。
踊りの表現力、技術だけではなく、若くひたむきなその姿勢から、これから先もきっと輝ける、そんな事を予感させる存在だった。
テーマが深く大きいため、なかなかスムーズな展開が難しそうであり、諸所にぶつ切り感が否めないものの、草彅剛氏の珠玉の演技ゆえに一見の価値以上の映画になっていると思う。
観るものを凌駕し、魅了する草彅剛氏の圧巻の演技力が、渋谷慶一郎氏の奏でる美しくも哀しい旋律のなかで、際立っていた。
もう一度、映画館へ見に行く予定だが、2度目でもやはり楽しみである。
。。。俳優、草彅剛氏の活躍をこれからも楽しみにしています。
海とスクール水着
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