「心と体の性が異なって生まれてきた人達を不幸にしてはいけない」ミッドナイトスワン satoru473さんの映画レビュー(感想・評価)
心と体の性が異なって生まれてきた人達を不幸にしてはいけない
草なぎ剛氏の圧倒的な演技力で魅せるこの映画、素晴らしい作品に仕上がっていると思う。
草なぎ氏と同じころに生を受けた私が小さな子供だった昭和50年代、自宅近くに終戦直後くらいに建てられたと思しき造りが不思議とおしゃれな感じの古アパートがあり、そこにいわゆる「おかまさん」が住んでいた。ひげ面の中年の方だったが、女性でも着ないような極端にガーリーな恰好をして黒い日傘をさして真夏の日差しを受けながら歩いていたのを記憶している。
子供の私が見つめていると、「そんな目で見るな」と言わんばかりの目線を返してきたのは印象的だった。彼女がどのような人生を送ったのかはわからないが、少しでも幸せを感じる人生だったら私としては胸をなでおろす気がする(年齢から言って令和5年にご存命とは考えにくい)
周囲の人たちの見る目は、映画にあるように「汚らしい怪物」「見るな・かかわるな」というもので、子供心に「同じ人間としてそのような態度をとって良いものだろうか」と疑問がわいたものだ。
残念ながら、そのような「人として間違った認識」は、令和の今も40年の時を隔てたにもかかわらず何も変わっていないようで極めて残念である。
人として生を受けて、文明の発達した現代に生きているのだから、生まれながらの事情を幸せな人生を送るためのハンディキャップにしてはいけない。
本作は、上記のようなテーマを内包しつつ他にも様々なテーマを描き、話としての完成度も高いが、俳優陣の優れた演技力、また映像の美しさ、リアルさなど、見るべきところが沢山あって素晴らしい。
私も若い時事情があってメンタルをかなり深く患った。障害者手帳を持ってみると、世の中偏見に満ち溢れているということをひしひしと感じさせられる。
何人も幸せになる権利はあるはずなのだ。
それを阻害してるのは、さまざまな立場に置かれた人たちへの理解が足りない人たちの偏見に満ちた態度であると確信している。
所謂LGBTQの人達はこの映画を見て、何を感じるのか。
私は一度、彼ら彼女らの本心を直接聞いてみたい。
そこには人として大切なものがたくさん含まれているはずだ。
そういいたくなるほど本作は鋭い問題提起が出来ている。