「みにくいアヒルの子」ミッドナイトスワン レントさんの映画レビュー(感想・評価)
みにくいアヒルの子
ある日、アヒルの家族に生まれた数羽のひなのうち明らかに他とは毛色の違うひなが一羽混じっていた。そのひなは産毛が灰色であり、みにくい異質なものとして群れからはじき出されてしまう。
途方に暮れて彷徨うアヒルの子は水辺で白鳥の群れに出会う。水面を優雅にたたずむ美しい姿。時には翼を羽ばたかせ華麗なダンスを踊っているかのようなその姿を見てアヒルは思う。私もあんなふうになりたいと。
アヒルはこの時自分が白鳥として生まれてきたことをまだ知らない。
トランスジェンダーのなぎさは社会での居場所はゲイバーにしかなく、トランスジェンダーとして社会一般の生活は困難である。
いちかは母子家庭で育つが母がネグレクトのため愛情に飢えており自傷行為を繰り返している。
そんな二人がひょんなことから同居することとなる。二人は最初は互いを疎ましく思いながらも次第に互いが抱える心の闇を理解しあうようになる。
いちかは容易く他人に心を開かないが、次第にバレエの才能が開花してゆく。そんないちかに対して母性が目覚めたなぎさは自分を犠牲にして男として働き始める。
二人の疑似家族は順調にいってるように見えたが、ある日ネグレクトの母親がいちかを連れ戻し、二人は引き裂かれてしまう。
なぎさは念願の性転換手術を受け、いちかの母親になるべく彼女を連れ戻そうとするが、閉鎖的な田舎でのトランスジェンダーへの理解は乏しく、なぎさはつまはじきにされる。
女性の心を持ちながら男性の肉体で生まれてしまった不幸。神のいたずらとしか思えないが、本作はそんなトランスジェンダーの抱える苦しみを如実に描いている。
不幸な生い立ちながらもいちかはバレエの才能が開花し、美しい白鳥となって世界へ羽ばたいてゆく。なぎさも手術で女性の体を手に入れて白鳥になるはずだったが、いちかを取り戻すこともできず、術後のケアを怠り寝たきりの状態になる。
いちかは白鳥になれなかったなぎさのためにも世界の舞台に挑戦するのだった。
トランスジェンダーはみにくいアヒルの子である。社会はそれを異質なものとして排除しようとする。他者とは異なることを個性として受け入れるにはまだまだ社会は追いついていないのかもしれない。
本作でいちかを演じた服部樹咲が素晴らしかったのはいうに及ばず、何よりも主演の草薙氏の存在感は圧倒的だった。
トランスジェンダー、ネグレクト、現代社会が抱える問題を取り入れつつエンタメとして見事に完成された作品。
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こんにちは♪
えっ、本レビューも一旦は消されたのですか⁉️意味不明ですね。
優しい文章で書いていただいているのに。目つけられていますね👀
賢く鋭く書いておられたから。
本レビューは、優しく柔らかな表現だと思いますが。
レントさんの福田村事件を拝読したくてフィルマート覗きましたが、会員登録しないと、レビュー繰るのが大変なので途中で諦めました。