「劇場で観られて、良かったです」ミッドナイトスワン ke_yoさんの映画レビュー(感想・評価)
劇場で観られて、良かったです
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トランスジェンダー、その苦しみ。
心身の性別が合致して、異性に恋愛感情を抱く私には、一生かかっても分からない。
ホルモン注射の費用負担、副作用のリスク、お店に来るお客さんですら持っている、世間からの容赦ない偏見。
従姉妹からのバケモノという言葉、お母さんから病気だと言われる辛さ、その全てが悲しかった。
被虐待児であること、その苦しみ。
自分で勝手に産んでおいて、あんたのためとか、あんたのせいと言っては当たられ、叩かれ、清潔な部屋も、栄養ある食事も、愛情も与えられない、声も、自分勝手にしか掛けてもらえない、その悲しみと、結果死んだような表情で、挨拶すらしない一果が、哀れだった。
でも2人は出会い、支え合うようになり、いつの間にか母娘のようになっていく。
しかしかつて、映画「彼らが本気で編むときは、」でもそうであったように、りんこさんも母になれず、今作でもまた、なぎさも一果を傷付けていた実母によって暮らしを壊されてしまった。
日本では、産んだらただそれだけで、愛よりも強い保証があるという事実が残酷だった。
何より腹立たしいシーンは、男がなぎさに奮った暴力とも言える行為で服がはだけたとき。
もしもあれが女性であれば、周りは傍観など絶対にしないのに。
でもそんなにも腹立たしく悲しいのに、希望と優しさが全編に、凪のように漂っていた。
もう公開している劇場はないと、DVD化を待っていたが、遅ればせながら観ることができて、本当に良かった。
つよぽんがつよぽんでなく、なぎさだった。
そして新人と思えぬ一果役の子が素晴らしかった。
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