「ずしん。とくる見応えのある素晴らしい映画体験」ミッドナイトスワン chocolatemovieさんの映画レビュー(感想・評価)
ずしん。とくる見応えのある素晴らしい映画体験
ずっと観たいと思っていてようやく観に行けました。私のように一人で見に来ている人も多くほぼ満席。観終わって、一人で観に来て良かった。。と思いました。何を言葉にして良いか分からないから。簡単に感想を言葉にして濁せない。ここにも上手く書ける気がしませんが、思うままに綴ります。
全編、ナギサの心の機微に触れる度に、涙があふれました。ニューハーフの演技はこれまで大袈裟な振る舞いの感じや明るい性格の表現しか観た事がなく、ナギサの凛とした、大きな声を出さない艶のある雰囲気はとてもリアルで、生きているナギサという人物を追っているような感覚で観れました。一果はさながらフラガール!の時の蒼井優さんのような、瑞々しさとバレエの美しさがありました。
前半、一果に対し全く興味がなく、関係ないというツンとした対応のナギサを見ているだけに、中盤から一果のバレエ代を稼ぐために自分らしさを曲げていく(変えていく)ナギサの変化は、いちいち胸が熱くなりました。一果も、美しいナギサのナギサらしさを心の中で慕っており、だからこそ一果の為に女を捨てたナギサを見た時に「望んでない!」と受け入れられなかったのだと思います。
しかしやはりチョコレートドーナツを思い出すのですが、後半に描かれる現実は残酷でした。いや、ナギサが元気で母親らしく振る舞えた続きの物語があったとしても、それはハッピーエンドにはなり得なかったのだろうと思います。
後半に関しては、原作を読んだ方の色々なレビューなどで、どれも必要なシーンだった、、というようなコメントもありますが、私としてはどうしても衝撃的ないくつかのシーンが頭から離れず、もうちょっと過激にならず作品を締め括ることは出来なかったのだろうか、、と思ってしまいました。なので星を一つマイナスにしています。
ですが観賞後にここまで色々なことを考えさせられ、さまざまなシーンが頭に思い起こされては感情が揺さぶられる作品は滅多にあるものではないと思います。素晴らしい映画体験でした。このような作品は一生忘れられるものではありません。映画館で鑑賞しその世界観にふけるべき、深い見応えのある作品でした。