「タイトルなし」ミッドナイトスワン ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
エンドロールで思い出し泣きして、帰り道もなんでか涙が勝手にこみ上げてきて困った
ジェンダーの話だけでなく、持っている者、持たざる者の話だった
イチカはみんなの光で憧れだった
愛なんてものは綺麗じゃないのかもしれない
自分の自己肯定感のために娘を溺愛する母
娘に罵声を飛ばし、だけど守らなければならないはずの存在の娘に依存し甘える母
大切なのは本当だし愛してるけど、毎日の自分の辛さに必死になってしまって、イチカにあたったりないがしろにしちゃうんだろな…難しい
ナギサも母になりたい願望と、イチカの才能や魅力に自分の憧れを重ねたのかもしれない
りんもお金持ちで愛されてるようで満ち足りてなくて自分をないがしろにすることで心を保って、怪我してバレエできない愛されない自分と比べて才能あってまぶしいイチカがきっとうらやましかった、応援したかった気持ちは本当だけど、同じタイミングで踊って自殺するのは一種の歪んだ愛と呪いみたいだなって思った
娘が怪我して「バレエできなくなったら他に何のとりえもない」とかよく言えんな!って思った
そんなの聞いたら死にたくなるわ!娘は自分の願望具現化装置か飾りかよ!
犬と同列に「大きくなったね〜」って言ってくる親族の描写も胸が痛い
踊ってる画面がとにかく美しい
絶望の淵でもとにかく胸打たれるほど美しい
美しいすぎて涙がでる
持ってない者はいつだって選ばれる側で、搾取される側で、自分で自由を選択できず自立できずなりたい者になれないんだろうか
女性になりたい、バレエで才能が欲しい、愛されたい、幸せになりたい、なりたい私になりたい
それを叶えるのが困難な人、こんなにも切望してるのに手に入らないこと
それでもどうにか変われないかと男の格好で仕事することを選び、母になることを選び手術をし、それでもうまくいかないナギサ
だけれど、二人の関係性は特別で、りんもナギサも先生もいなければきっとイチカは羽ばたけなかったんだよ
しんどい中でも出会った全てをかけて、みんなの希望を背負って輝くイチカ
持たざる者が自分の足で突き進んでいく姿はきっといろんな人の希望になる
(まあ才能は持ってるんだけれども)
ジェンダーとか関係なく、なんで自分だけって思うことあるよね
全然違う境遇でも、どうしようもない気持ちを抱えるあの気持ちはわかるよ
生姜焼きを作る所、二人の合言葉みたいなハニージンジャーソテー、野菜も食べなよと言う所、バレエのやり方教えてよって会話するとこ、嫌じゃって言うイチカ
何気ないとこに愛と願望と家族とが混ざり合ってそこにあって泣いてしまった
なんだかすごく美しかった
最後の海でのシーンの余韻がすごくて、とっても美しくてずっと胸に残った
とても悲しかったけど、生きようって思えた
今ある環境の中で何を選んでいくのか、得られなくてもどう進んでくのか、人に出会って思いがけず人生が変わったりするんだよ