「ありがとう。凪沙、一果。そんな気分。」ミッドナイトスワン はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとう。凪沙、一果。そんな気分。
凪沙、美しい人。
性的マイノリティという途方もない葛藤と深い苦しみと生きづらさを見事に体現した草彅剛、本当に素晴らしかった。
この容赦ない世界で独りで生きていくには強くなるしかない。高いヒールを履きこなし裏町を生きるその姿は強くて、厳しくて、どこか哀しげで、でも人間味があって、優しくて。
凪沙という一人の女性が歩んできた人生を想って胸が熱くなった。
誰だって自分のことで精一杯。毎日少しずつ貯めたお金を眺めながらため息をつく。これが一杯になったらこの人生がいかばかりか輝くのだろうか。
霧がかった凪沙の日常に一果が光を与えてゆく。天使の羽を身に纏いくるくると舞いながら。凪沙の瞳がその眩しさに吸い込まれてゆく。それはなりたくてもなれなかったもう一人の自分。
二人でバレエの練習をするシーン大好きです。まるで親友のように。姉妹のように。母子のように。この柔らかな時間がずっと続けばいいのに、そう思った。
一果役の服部樹咲ちゃん。初々しかった。バレエシーンもめちゃめちゃ見応えあります。
切ない映画だったけど、別れと悲しみと生きてゆく勇気と間違いなくそこにあった愛を持って、一果が自ら切り開いた道を真っ直ぐに歩いていく。
そして真っ白な白鳥の衣装で堂々と力強く舞い踊るその崇高さにいつまでも拍手を送りたくなった。
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