「特技はバレエ。そして椅子投げ」ミッドナイトスワン kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
特技はバレエ。そして椅子投げ
痛くて悲しくて、そして優しい映画でした。単にトランスジェンダーものだと割り切れない、心の奥から声が響いてくるような気がしました。親の愛を知らずに生きてきた一果と、性同一性障害を親にも言えずに新宿のショーパブで踊る渚沙。言ってみれば二人とも刹那的な生き方で孤独を舐めあうような形の共同生活の始まりだったが、一果のバレエの才能のために自分をも投げ出すことになった渚沙。
もちろん性転換して女性になるという人生目的はあった渚沙だけど、人の痛みがわかる優しさをも持っていたため、金もなかなか貯まらない。一方の一果も自分の将来を探っていて、時には暴力をも振るってしまう悲しさもある。そして、いつしか母親の気持ちもわかるようになり、バレエの先生(真飛聖)の言葉によって喜びを禁じえなかった。
ハニージンジャーソテーと生姜焼き。夜の白鳥と昼の白鳥。貧富の差も描きながら、親と子の関係をも丁寧に対比されていました。自分が足の故障でバレエ人生を絶たれてしまったりんちゃんの儚さも苦しかったし、彼女の一果に対する心の変化も絶妙でした。
今では日本国内でも可能な性別適合手術。万全な態勢であれば、悲劇も起こらなかっただろうか。血まみれ、介護、痛々しい様子を見ると、息苦しささえ覚えてしまいます。そして、ラストのバレエシーンはぞくぞくさせられた。彼女を天国で応援してくれてる人の分まで頑張らなきゃいけない。みんな一果の才能を見守ってくれてるよ・・・
【ネタバレ追記】
コミック「らんま1/2」を読んでるところはトランスジェンダーの憧れの部分かな。などと思いつつ、本物の女性に生まれ変わる決断をした渚沙。適合手術の術後が上手くいかず、多量の出血と失明までしてしまった(いくらか見えてたにせよ)。もう一果のバレエも目にすることはできない。海辺で幼い頃の自分の幻も見るが、そっと眠るように息を引き取った(と思う)。
一果の友だちとなったりんはバレエを諦め、一果に自分のバレエの夢を託す。両親の友人の結婚式では、コンクールで羽ばたく一果とシンクロするかのように同じ演目を踊るが、テーブルからテーブルへとジャンプして、最後は飛び降り自殺のような形となった。このシーンは夢にも出てきそうですが、美しく儚く命を絶った彼女が観客席に見えてしまった一果。全てを悟り呆然自失・・・
エンドロール後のワンカットは死んだ渚沙に見せたかった一果の晴れ姿。2人とも白鳥になった一瞬でもあり、心が一つになった証し。死んだのかどうかは本編ではわからなかったけど、ここで怒涛の涙腺決壊・・・となりました。
それにしても『喜劇愛妻物語』でも見せてくれた水川あさみの回心の演技はこの映画でも炸裂していた。一果よりも実母の将来の方が不安だ・・・
はじめまして。Kossyさん。
みかずきです。
コメントありがとうございます。
私の本作レビューを評価して頂き恐縮です。
私のレビューへの多くの共感ありがとうございます。
フォローありがとうございます。
映画レビューは10年以上書き続けていますが、
こちらのサイトには、先月登録したばかりです。
よろしくお願いします。
Kossyさんのレビュー、作品をしっかり掴まえた緻密で分かり易く映画愛が感じられるレビューですね。
さて、本作、草なぎ剛の演技が素晴らしかったです。
彼の代表作になるでしょう。
辛い悲しい物語でしたが、ラストは未来への希望を感じさせる幕切れで良かったです。やはり、どんな作品でも、ラストは希望、勇気、夢を感じさせて欲しいです。
では、また共感作で交流させて下さい。
特技はバレエ。そして椅子投げww 電車内で笑ってしまいました。らんまには懐かしいとしか感じてなかったので、考察にはハッとさせられました。ありがとうございます。
飛び降りのシーンは、衝撃すぎて、涙がでませんでした。しかも、その後さらっと広島に舞台が移動しちゃうもんだから。。。
当分、消化できそうにないです。内田監督にやられた。
コメントありがとうございました。新宿のネオンの薄明かり射す、小さなアパートの小さな台所で純白のバレリーナとなったイチカを下から見上げる凪沙でした。ミッドナイトスワン。わたしは、凪沙は下田の砂浜で眠るように逝ったと思いましたが。
凪沙は男嫌いで、処女ですよね。トランスジェンダーもいろいろ。草薙剛は
もう少し若いときにこの映画に出てたらもっと良かったかなと思いました。
水川あさみは豹柄もいいですね。本作では脇役なので、あれでも控え目かな?
おはようございます。
レイトショーで観たからかもしれませんし、(その前に「映像研・・」を観ていて5分前に会場に入ったので)よく分かりませんでしたが、私の席の周り(ど真ん中)には、誰もいませんでした。
客電が灯ったら、後方に”やや”年配の女性の方々が10名ほどいらっしゃいました。
今作品は、私にとっては、中盤まではとても良く(特に若き女優さんたち)これは‥、と思っていたのですが・・。
では、又。