「二羽の白鳥」ミッドナイトスワン keさんの映画レビュー(感想・評価)
二羽の白鳥
元々演技には定評のある草彅が、トランスジェンダーの凪沙をどのように表現するのか、といった関心は冒頭から打ち砕かれる。
その存在感は圧倒的で、もはや演技という枠を飛び越えて、都会の片隅でささやかに生きる凪沙、その人そのものでしかなかったからだ。
そして、その草彅に一歩も引けを取らずに観客の視線を奪うのが、この作品の核でもあるバレエシーンの見事さと終始無表情で暗さを宿した強い瞳が印象的な一果役の服部樹咲(はっとりみさき)だ。
これがデビュー作となる荒削りで未知数の魅力を放つ服部と、その服部を全身で受け止め、どこまでも凪沙として苦悩し、懸命に生きる草彅という得難い組み合わせが、やや乱暴なストーリー展開にも納得感を持たせ、今作を稀代の傑作に押し上げている。
脇を固めるキャストたちも素晴らしい。
特に一果の親友・りんを演じた上野鈴華の、服部とはまた異なる瑞々しい魅力は強く印象に残った。
バレエシーンの完成度の高さ、光と影の使い方、色彩による感情表現など、内田英治監督の繊細な美的センスと、物語に寄り添い、深い余韻を残す渋谷慶一郎の音楽にも注目。
次はぜひ、映画館の大きなスクリーンで堪能したい。
【オンライン試写会で鑑賞】
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