「キューピッドの目線」花束みたいな恋をした U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
キューピッドの目線
基本的にロマンチックな物語だった。
観終わった直後に、架空の続編が脳内を駆け巡る。
4年に及ぶラブストーリー。
恋愛の絶頂期を経て「生活」に擦り減っていくお互いの感情、その変遷が生々しい。
男性が感じる事、その思考の発生源。
女性が感じる事、その思考の発生源。
当事者達には理解不能なアレコレが、驚く程共感できる。観客という第三者な立場が、そうさせてくれるのだろう。僕らは至極冷静に過去の出来事を分析する事になる。
まるで運命のように出会う2人。
とても微笑ましいエピソードが満載だ。
同棲したての頃なんかは楽しくてしょうがない。だけども、女性は「終わり」を意識してたりしてる。
この恋が、最後の恋でありますようにと祈るかのようだ。ある種、現実的ではあるなぁと思う。
男性側は、やっぱりそんな事を考えない。
やがて、生活がおぶさってくる。
この幸せを維持する為に、愛情とは別にお金が必要になってくる。
2人は「学生」から「社会人」になる。
すれ違いが起こり、喧嘩になる。
もう、その喧嘩の内訳が見てて辛い。
相手の気持ちが良く分かる。
なんであの時、理解してあげられなかったのだろうと、とてもとても悔やむ。
いまだ未経験のカップルは、この映画を見れて良かったんじゃなかろうかと思う。将来そのシチュエーシヨンに陥った時、はたと立ち止まれるかもしれない。
紆余曲折を経て、彼らは別れる事になる。
この別れ方が、また切ない!
アレをやられたら、もう戻れないと確信してしまうのじゃなかろうかと思う。
そして月日が過ぎ、2人は偶然出会う。
お互い違う相手と共にいる。
なのだが…思考は似てるし、価値観もそのままだ。服の趣味も未だに変わらない。
そして、その後の2人次第では、奇跡と思える出来事が起こる。
物語に時折挿入される2人のモノローグが秀逸だった。微笑ましいものも、辛辣なものも。本来見えない「心情」を解説してくれるかのようだった。
その時々を切り取るカットも編集も素敵だった。
有村さんは、サバサバとしながらもしっかりと可愛いし、菅田氏の頼りなさといったら、この上ない。だからこそ頑張る彼を他人と思えない程だ。
恋愛が始まってから終わるまでの変遷を、その裏側とともに傍観する本作。
共有できる感情も多いのだけど、ふと思う。
もし、運命の矢を持つキューピッド達がいるとするなら、今の彼らを温かくなのか、好奇なのかは分からんが、見つめてるのではなかろうかと。
今の僕たちのように。
ラストに差し掛かり、やっぱりお似合いだと思う。
どころか、2本目の矢が刺さったのかと思うようなシュチュエーションだ。
その後、2人はヨリを戻すのではなかろうかと思う。
だがこれは、運命を知らない俺の願望だ。
いやいや、所詮、同じ過ちを繰り返すだけだと踏みとどまる未来もある。
それとも経験や成長から対処法を獲得できるのかもしれない。相手を思う一途な気持ちが、相手を思いやれる気持ちに変化するかもしない。
近すぎず…それでいて遠すぎず。
2人ならそういう距離を見つけられるのかもしれない。
花束はいずれ枯れるのが運命たげど、それを捨てるかドライフラワーとして飾るか…それが出来る花と出来ない花はあるのだけれど、どうするかは2人で悩めばいいのであろう。
ある種「愛情」は「呪縛」と同列であり、別れた後の3ヶ月間の解放感ったら底知れないものがある。
この作品が秀逸であると思えるのは、その後の時間を優しく空想できるからだと思う。
でも、この空想も男と女ではきっと違うのだろう。
女性は「元鞘になど戻らない方が幸せ」と断言するかもしれない。
作り手の偏見に満ち溢れているかもしれない本作だけれど「運命の矢」の逸話を描いてるようにも感じる。
…女性陣に鼻で笑われてるような気もするけれど、勇気を持って投稿する。