劇場公開日 2021年1月29日

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「4つの赤で描く起承転結」花束みたいな恋をした カトソラさんの映画レビュー(感想・評価)

5.04つの赤で描く起承転結

2021年2月23日
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鑑賞方法:映画館

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知的

花束みたいな恋をした
2021 2/22

大学受験を無事終えた野郎3人で、JKたちに囲まれて、ほぼ満席の劇場で鑑賞。

予告編の時から、「キュンキュンする〜❤️」系のものではないと分かっていましたが、まさかここまで後半で心臓を思いっきり締め付けられるようなものだとは思わなかったです。

菅田将暉と有村架純の実在感が半端ない演技や、その周りのセットや美術(古めのMacBookや漫画版AKIRA)、そしてその時代を感じさせる数々のサブカル(新海誠がポスト宮崎駿と呼ばれた頃、シン・ゴジラ……などなど)

そして一緒に鑑賞した友人が言って僕がハッとしたのは、
「お互いに好きとか愛してるとか一回も言っていない」ということ。
それでもお互いに愛し合っていたということがわかる絵面の作り込みが本当に素晴らしかったです。

予告でも、本編の最初でも、お互い別れることが確定しているからこその大きなカタルシスと余韻が残るのも魅力。

【4つの赤】
本当に僕の勝手な解釈です。
タイトルにもあるこれらは、あまりに僕たちにとって日常的なものだけど、「観客」という立場から、「映画」という長期スパンで見れば2人の関係性において決定的な要素だと思います。

①最初のキスの「押しボタン式信号の赤」
起承転結の「起」です。
2人を一定の場所に留まらせてくれた、赤信号は「ロマンチックな要素」とも取れますが、赤信号の意味は当然「止まれ」です。その直後に海に行き、完全に伏線とも取れる絹の語りで不穏な空気が流れます。ですが2人の愛し愛されっぷりは凄まじく、どこからどう見ても順風満帆な日々を過ごす様子が描かれます。

②絹が麦の内定決定の電話を受けた、「バーの照明の赤」
「承」です。
2人からしたら「これで双方無事就職!」と、幸せなシーンですが、この就職がきっかけで2人の考え方や価値観のずれが日に日に広がっていきます。
麦「もう俺たちは学生じゃなくて責任を持つ大人、現実を見ろ」VS 絹「私は私がやりたくないことはやりたくない、私たちは自由に生きれる」
という対立構造すらできてしまいます。そしてそれは麦の先輩の死によって、もはや争いどころか諦観に変わります。

③友人の結婚式の後の「赤く光る観覧車」
「転」です。
友人の結婚式を見た2人は別れることを決意し、皆が二次会にいく姿に背を向けた先にある観覧車に乗ります。
絹「観覧車乗ったことないの?」、麦「ない」(こんなニュアンスの会話です)もうこの時点で「私たちはなんでも同じ、気の合う2人」という関係は完全に死んでいます。
それから2人で築き上げた思い出の話をします。

④「ファミレスの手前の赤信号」
ついに「結」です。
別れ話を始め、なかなかお互いに「別れよう」と言い出せないし、なんなら最後の最後まで言いません。
結婚して子供を産めば元の関係に戻れると現実味のない話をする麦、現実を見て完全に腹を括った絹
という構図が生まれ、これは②の2人の価値観とは真逆です。ところが過去の自分たちと似たカップルの姿を見て泣きながら外に飛び出し、結局赤信号の前で抱きしめ合って関係を終わらせる…といった①とは場所は似ていても真逆の状況。

そして最後は2人ともまた「必ず終わる恋」をしていて、そこにもう未練などないといった比較的幸せなラスト。でも観客の僕たちからしたら、とんでもない重い余韻と、「恋って何?」という大きな宿題を残されて終わるなんていい迷惑だわ!!!!といった気持ちでございます。

2021年が始まって間もないですが、早速今年ベスト作品に出会えたと思います。

ただ、カップルで見るのは…お勧めしません。

カトソラ