「エモが詰まった花束みたいな映画だった 一つ一つの気持ちやエピソード...」花束みたいな恋をした ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
エモが詰まった花束みたいな映画だった 一つ一つの気持ちやエピソード...
エモが詰まった花束みたいな映画だった
一つ一つの気持ちやエピソードがものすごく身近でリアルで、あるあるって思いながら気づいたら自分のことのように思えて
なんでこの世は恋愛物語ばっかなのだろうと思うけど、人の共感できる最大公約数が恋愛なのだとちゃんと心で理解できた気がする
恋の始まり
出会って気が合いすぎてテンションが上がって
うっかり浮ついた言葉を口走って意識して
でもお互いの気持ちの距離を小さく確かめ合いながら距離をつめて
女の子の影に少し冷めてだけどタイミングを逃すまいと追いかけて
大学生らしく勢いで相手の家にコロンと上がって
わかれたあとにニヤニヤが自然とこぼれて
帰って来た時に余韻から冷めたくなくて
まぶしくてエモくて胸がくるしくなった
夜食が焼きおにぎりなのも、同席した男女の挙動おかしくない?って笑うのも、小説を交換するのも、映画中寝ちゃうのも、濡れた髪を乾かしてもらうのにドキドキするのも、何もかもがまぶしかった
絹が「電車に揺られる」って言い方するんだなって小さな挙動にときめく一方、麦が「麦の描く絵が好き」って言われたことだけ何度も反芻するとこが男女の違いがうまく出ててよかった…
同じ生活をしてれば同じ価値観でいれるけど、やっぱり環境が変われば考え方は変わる
変わった方は「いつまで相手は変わらないんだ」といらつくし、変わらない方は「これまで二人で大事にしてきたものを無下にされていく」と感じる
どちらも悪くない、この中で磨り合わせてくしかない、でもそれができなくなって別れていくカップルが山ほどいる
それを坂元さんはものすごく緻密に丁寧に描くから刺さりまくる
ずっとベッドでうだうだする休日も、思い出なパン屋や映画も、共通の具体的ものが思い出が増えるほど大切になっていく
だからこそ、そこが閉店したり、好きな作家が死んだりすることで小さく心に水をかけられたような気持ちになる
それを坂元さんは知っている
別れるまでのくだりがとてもとてもリアルだった
すれ違う中で、小さなことだけど共有できなくなって、共通の大切なものが減っていって、それはお互いそれぞれに辛さがあるけど自分のことしか見えなくて汲み取れなくて、そうして無感情になっていく
うわって思ったのが、絹が転職することでケンカした時うっかり最低なプロポーズして、これまじでやばいケンカじゃんって内容なのに、「ごめん言い過ぎた」ってすぐ何事もなく仲直りしたこと
二人は関係が長すぎてもはやケンカにもならないし、ケンカした後の空気な戻し方を知っているんだ
だけどそれはさみしい方の慣れだった
お互い同じタイミングで別れようと思ったのに、淡々と事務的な話をする女の絹と、結婚式の後楽しく過ごせたからまたやり直そう結婚しようって言う男の麦の対比もわかりみ深い…
そうそう男はまたやり直せるんじゃとか思っちゃうんだよ…
でもファミレスで思い出の席に座れない時点で二人の運命はもう決まっていて、
結婚ならお互い空気みたいに恋愛感情なくなっても(って言い切っちゃうのがまた切ない)いられるんじゃ?嫌なとこ目つむって関係続けてる夫婦たくさんいるじゃん?って提案した後
自分達の座れなかった席に、かつての自分達みたいな恋のはじまりを体験しているカップルが現れて、それのまたまぶしいこと…!
その二人がまぶしくて尊いほど、二人がそれを失ったことを思い知る、その二度と手に入れられないものはあんなに大事だったんだと思い知る、それを惰性でこのまま関係を続けることで壊したくないっていう想いが二人に芽生えて抱きしめ合って別れる
言葉がなくてもわかる
二人は思えばずっと同じで、同じタイミングで付き合いたいとかどうでもよくなったとか別れたいとか思ってたね
同じだから恋ができて、同じすぎたから続けられなかったのかもしれないね
でも同じで大切だったから、終わり方もとても大切に広げた布を畳むように丁寧に静かにほどよく仲良く、これまで言えなかった答え合わせもできながら別れられた
その関係性もエモかった…
たぶん大切な恋すぎたから、大事にとっておきたかったんだ
そのままなあなあに、なんだったんだろうあの恋はって後で思わないように、綺麗なまま終わらせた
相手のいない日常の中にも、自分のなかにも、相手の影はあって、髪を乾かすとき、イヤホンをつけるとき、相手を思いだす
これが恋なんだと全力で思わされるとても素敵な作品だった…