「年齢によって感じ方が変わるはずです」花束みたいな恋をした 虹孔雀さんの映画レビュー(感想・評価)
年齢によって感じ方が変わるはずです
感想は「人生の甘くも塩辛い部分であり真実である」といったところです。
最初の出会いは「ありえね」って思うかもしれませんが、人生の中での「めぐり逢い」というものを象徴したシーンとして捉えれば各人にも当てはまることも多いかと思います。そこからの急展開とか、心ときめくシーンとか様々ですが、私達の人生に重なるところが多いのかなと思いました。
ホームで出会うところから、デートを重ねて、同棲するところまでは見ている方も幸せが伝わってきて、羨ましい限りなのですが、実際の結論は「出会いは別れの始まり」になってしまうわけですね。
この結論が受け入れられる人は恐らく年令問わず、人生の渋いところを経験していて、それは自分だけじゃなくて、世間でも本当に起こりうることなんだっていうことが理解できている人かと思います。
逆に、「そんな結論になるなら、4年も一緒にいて最後は別れるってなるなら、何のために愛し合ったの?」「こんな結論はモヤモヤして、不安で受け入れたくない」と理解不能な方もいるとは思いますが、これがある意味「若さの苦しみ」というものかと思います。中高校生から大学生、社会人1,2年目あたりでこの映画を見ると大半は後者の感想を抱くのではないでしょうか。
この映画を見て、がっかりした人もいるでしょうが、人生は夢に敗れることもあるというのは本当のことです。それを教えてくれる塩辛い映画が本作です。けれども、人生には美しいばかりの喜びがあることも事実です。
「最初から人生の未来に苦しみが待っているなら、幸福を手にした後の落差に苦しむことが待っているなら、そんな幸せはいらない」と考えたくもなるかと思いますが、最大限自分の出し尽くせるだけの優しさを人に与えて、それでうまくいかないことが起きたのなら、それはそれで素晴らしいことかと思います。
人生は長いですし、愛について深く考えることで、一皮むけて一層素晴らしい自分が見えてくるはずです。
また、どうしてもこの結論のもやもやが取れずに困っている人は、主演の一人が小松菜奈さんに変わりますが、『糸(2020年公開)』が真逆の結論、ハッピーエンド中のハッピーエンドになっておりますので、お口直しをしていただけるのではないかと思います。