「学校の先生のモノマネで笑っていられる高校生みたいな映画を観ました」花束みたいな恋をした 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)
学校の先生のモノマネで笑っていられる高校生みたいな映画を観ました
大学生で出会い、好きなものや価値観が同じで惹かれ合った男女が、生活や就職のためにすれ違って別れていくラブストーリー映画自体は珍しくも何ともありません。過去に腐るほどあります。
ですから、それに何をプラスするか、どんな新しい切り口を提示するかがこの映画の存在意義だと思います。
では、この映画は一体何がプラスされていたのでしょうか?
2015年から2019年までの流行、音楽や漫画や小説やゲームやネットなどのカルチャーや小ネタがストーリーの至るところに散りばめられていたこと。
それが、この映画の作り手がこのラブストーリーを描くために考案した新しい切り口だったと感じました。それ以外に目新しいといえるものは発見できませんでした。
しかし、それって何が面白いのでしょうか?
サブカル好きの麦と絹に合わせて、登場する品々はマイナーなものばかり。メジャーな流行はほとんど出てきません。
マイナーだけど、他人の創作物をいっぱい引っ張り出してきて展開するストーリー。
それってなんか、学校の先生のモノマネで笑っていられる高校生みたいなものじゃないですか。
悪く言えば内輪受けですよ、これ。
有名人のIKKOのモノマネが似てたら笑いますが、学校の先生を知っている人はごく少数ですし。私はそんな先生を知らないので「まぁそんな先生いそうだな」ぐらいな感情しかありません。
ものすごい数の他人の著作物の権利許諾を得なければいけないスタッフはすごく大変だったろうなとは思いましたが、そう感じるぐらいで話自体はあんまり面白くはなかったです。
行定勲の劇場よりはマシだったぐらいのレベルでした。
脚本家さんも監督さんも大ヒットドラマを何本も世に送り出しているクリエイターだったのでこちらの期待値が高すぎたのかもしれません。これは映画です。別のジャンルでした。
緊急事態宣言下で公開に踏み切った根性は買いますが、コロナ禍だからこそ世間の流行や小ネタに終始する作品が余計に安っぽくみえてしまった感じもありますね。
ラスト付近の時間軸が2020年で、別れた二人がそれぞれ別の恋人とデート中に偶然再会するってシチュエーションが、ノーマスクで三密なのでコロナ禍では不謹慎な人々に見えてしまいますし。
これは公開延期にして平和になった数年後に公開するか、ラスト付近はコロナ禍に合わせて撮り直してもよかった気がします。まぁ菅田と有村のスケジュール的に不可能でしょうけど。
結論。
他人のモノマネで笑いを取る芸も立派な芸のうちですが、できればオリジナルの新しい芸を発明して、他人からモノマネされるぐらいの映画を作って欲しかったと思いました。以上です。