「壮大なラブストーリーであり成長物語」弥生、三月 君を愛した30年 あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大なラブストーリーであり成長物語
幼馴染の2人の16歳から(0歳から?)50歳までの壮大なストーリー。
さすが遊川和彦さん、一筋縄にはいかない超ハードモードな人生を通じて、それでも想い合いすれ違う2人の感情と成長(というには苦いが)を描き切る、全体としては非常に見応えのあるラブストーリーでした。
杉咲花さん演じるさくらの存在感が凄かった。本人が登場していたのは序盤の2年くらいにも関わらず、2人の人生に影響を与え続け、切れそうな2人の関係性を墓参りとカセットテープを通じてなんとか繋ぎ切った。
人生はままならず歯痒く苦しい。でも幸せを実感できることもある。そんなことを繰り返し感じさせてくれる壮大なストーリーで、2時間映画では限界がありました。場面転換のチープさが残念でしたが、時間を考えるとあのような分かり易い切り替わりも仕方ないかなと思ってしまう。連ドラなら白夜行のような名作になったのでは?
良い映画だっただけに幾つか残念なところに目がいってしまいました。
他の方も挙げていますが、ラストの歌唱パートは蛇足でしたね。出だしを2人がつい口ずさむくらいなら自然でしたが、デュエットで最後まで歌うのは唐突なミュージカル調で興醒めでした。
エンドロール後のシーンも要らない。弥生の母親にはあまり良いイメージがなかったし、さくらの存在感を否定しかねないという点でも余計なシーンでした。過ぎたるは足らざるが如しです。
それにラストシーン、2人の結婚式で流して欲しいとまで言われて渡されたテープを結婚の約束もないのにあっさり聞いてしまうなんて。自分だったら居ても立っても居られなくなって相手を探し出してプロポーズしてしまう!ありきたりでも良いから2人の結婚式を観たかった、そう思う自分はまだ若いのでしょうか?50歳同士のこじんまりとした結婚式でも、あのテープが流れたら、非常に感動的なシーンになったと思うんだけどなぁ。
あっさり手繋ぎシーンで終わるとは、遊川和彦監督の作品は想像の斜め上を行きます。