「美しきセレナーデ」弥生、三月 君を愛した30年 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
美しきセレナーデ
繰り返しがじれったくもあり、美しくもあり。そこかしこに繰り返される言葉や映像が、ゆっくり浸透していく。抜群とは言い難いけれど、何か心に残る作品だ。繰り返される、桜と乗り遅れるバスと「見上げてごらん夜の星を」
「小さな光が ささやかな幸せを 歌ってる」
若くして亡くなったサクラと桜が一番のモチーフ。彼女の好きだった「見上げててごらん」が、すれ違う2人をあちこちでつなぎ、それでもなお二人はすれ違う。
この歌の歌詞が原作と言っても良いほど。歌に象徴されるささやかな人生を、静かに描いていて、とても好印象を持った。しっとりはしてるが、展開ははやい。なにせ、3月の出来事をカットしながらも30年分なのだ。
波留と成田凌が、高校生から壮年まで好演。意外に高校生っぽさは違和感なく、歳をとっていく感じも自然。メイクや演技で、こうも変わるのか…というところも、見どころです。それにしても、成田凌の振れ幅ホントに広くて感心。
正義感が強く実直な弥生は、波留のイメージにもあっていた。そういえば、同じ遊川監督の昨年のテレビドラマ「同期のサクラ」も融通が効かない真面目で実直な主人公だった。また、本作と同様に毎話年が進んでいきながら、エピソードを見せ、キャラクターの成長や変化を楽しめるのと、同じ手法だ。今回はさらに時間のスケールが大きいので、年齢の変化もある。時をうまくみせる、時間の魔術師ですね。
「ぼくらのように 名もない星が ささやかな幸せを祈ってる」そして幸せなセレナーデの後にも、さらなる幸せが。エンドロールが終わるまで、席を立たないことをお勧めします。
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