1917 命をかけた伝令のレビュー・感想・評価
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友のために戦場を駆け抜ける、イギリス版「走れメロス」🏃
1917年の西部戦線を舞台に、命懸けのミッションに挑む2人の若き伝令兵の姿を描く戦争映画。
監督/製作/脚本は『アメリカン・ビューティー』『007』シリーズの、オスカー監督サム・メンデス,CBE。
主人公ウィリアム・スコフィールドを演じるのは『パレードへようこそ』『はじまりへの旅』のジョージ・マッケイ。
イギリス軍の将校、スミス大尉を演じるのは『イミテーション・ゲーム』『キングスマン』シリーズのマーク・ストロング。
ウィリアムの戦友トムの兄、ジョセフ・ブレイク中尉を演じるのは『シンデレラ』『ロケット・マン』の、名優リチャード・マッデン。
イギリス陸軍エリンモア将軍を演じるのは『英国王のスピーチ』や『キングスマン』シリーズの、オスカー俳優コリン・ファース,CBE。
イギリス陸軍マッケンジー大佐を演じるのは『イミテーション・ゲーム』「MCU」シリーズの、名優ベネディクト・カンバーバッチ,CBE。
👑受賞歴👑
第92回 アカデミー賞…撮影賞、音響賞、視覚効果賞の三冠を達成!✨✨
第77回 ゴールデングローブ賞…作品賞(ドラマ部門)、監督賞の二冠を達成!✨
第73回 英国アカデミー賞…作品賞、英国作品賞、音響賞、監督賞、撮影賞の五冠を達成!🌟🌟✨✨
イギリスが誇る名優たちが揃う本作。
全編ワンカットの様に見える撮影方法で撮られており、映画への没入感が半端ではない。
長い長い塹壕を主人公2人が進むシーンでは息が詰まりそうになったし、廃墟でスナイパーに狙われるシーンでは、心臓が汗をかいた様にドキドキした。
戦争映画でありながら、直接的に大きな戦闘のシーンが描かれるわけではない。
描かれるのは無造作に転がる死体や、ぷかぷか浮かぶ土左衛門、そしてこの非日常的空間に順応している兵士たちの姿である。
直接的に戦闘を描かないからこそ、戦争について想像が働き、地獄の様な戦場のリアリティが胸に迫ってくる様だった。
悲惨な戦争を描く映画だが、敵兵に追われるシーンや、墜落する飛行機にあわや衝突しそうになるシーン、洞窟内でのブービートラップのシーン等、ハラハラする様なエンタメ的な展開もあり観客を飽きさせない。
家族や故郷への愛というテーマを始まりから終わりまで一貫して描き切った、非常に完成度の高い映画。
戦争映画を苦手としている人にも観てもらいたい一作。
ただ、イギリス軍を誇り高く描いているのに対して、ドイツ兵を悪役として描きすぎている様にも感じました。
まぁ、微妙なバランスの問題ですが…。
IMAXで鑑賞。すごい。
IMAXで見たからこその迫力があって、それは、感動を倍にしていると思うが、私にとっては、「パラサイト」を抜いて1917が上に立った。
「パラサイト」もそうだろうけれど、本作は、出来るだけ心を素にして見ることをおすすめします。
だけど、戦争映画を見に行く気持ちだけは必要です。
まさに100年前の第一次世界大戦で、イギリス軍の兵士として戦場を徒歩で駆け抜ける感覚を得る。
全ての戦場映画は、戦争の恐ろしさ、まぬけさ、悲惨さ、大変さを表現するものだろうけど、その一方で、戦意を高揚するような勇ましさも表現することになる。
本作は、100年前の戦争ではあるけれど、多少演出も入っているにせよ、戦争とはこういうことなんだという説得性が全編にちりばめられていた。
銃をかかえて地べたで寝ること、
ろくな食べ物もないこと、
相手が敵であれば殺される危険性がつねにあること、
いつ終わるかわからない、いつ帰れるかわからない中で、正気を保ち続けなければならないことなど。
この映画の最も評価すべきところは、狂気じみたところは極力抑えられていたところではないかと思う。
一兵士の死がリアルだった。死体だらけの戦場、無人であっても罠が仕掛けられているかもしれない恐怖の中、指令を伝えにゆくのは、使命感だけでは務まらない。
若者が狩り立てられて戦争をしにゆくことは、もう絶対ないとは言えない。現代の日本が平和である意味をよく考えねばならない。それをつねに忘れてはならない。
リアリティーが凄い!
自分が戦場にいるような気分にさせる、ショツトの撮り方です。
ドキドキハラハラ感の連続でした。伝令を伝えるのも、昔は命がけで大変だったのですね。戦争は絶対にしてはいけないと痛烈に感じました。殺し合いを肯定しては、何も生み出されませんし、皆が傷つくだけです。今、求職中ですが、平和なだけでも、自分は幸せだなと感じました。
なんかよくわからない
途中途中突然シームレスに時間経過や場面が転換するので、なぜそこにその人物達がいるのか、なぜ致命的な傷を負ってるのに精神的な疲弊以外見えないのか、なぜ紙が乾いてるのか、もはやわけわからんって感じでした。
蒼白だけど、キレイな顔した主人公にえ?え?え?となり映画が終わった
あとは、町山さんもいってだけど、辻褄の合わない部分が大きい。
配置図見ないとなぜ徒歩の伝令が必要なのかの意味合いが不明なんですよね。あと総指揮官から各部隊に無線もしくは有線通信できないのはなんでなの。ナチが電話線を切ったとしか言ってないけど、それでもう無理なの?
映像は凄いが脚本の粗が目立つ
映像の臨場感はたしかにすごいが脚本が粗くツッコミどころが多すぎ
あまりにもツッコミどころが多いので文章ではなく箇条書きで示そうと思う
・全体的に移動距離短すぎ、トラックにもたいして乗ってないし体感移動距離せいぜい2,3km程度だった、敵基地も自軍の基地から出て数十mくらいのところにあるとか近すぎ
・主人公がポーカーフェイスな為に感情が一切伝わらず感情移入ができない、これじゃあただ将軍の命令に従ってるだけで行動の動機が弱すぎる(1600人の命を救うためとか友人の死を無駄にしないためとかそういう感情のアピールが欲しい)
・落下してくる飛行機に向かって歩いていくとかマヌケすぎる、飛行機が迫ってくる恐怖を演出したかったんだろうが
・友人あっさり死にすぎ、敵軍を助けて刺されるとかこれもマヌケすぎる
・友人のバックグラウンドがなさすぎるから兄に死を伝えるシーンも全く感動できなかった
・ドイツ兵の銃当たらなさすぎ
・トラックに乗ってた友軍すんなり主人公の言うこと聞きすぎ
・タイミングよく友軍のトラックが現れたり、川で流された先にちょうど探していた軍隊がいたり都合が良すぎる
・途中で出てきた女の人と赤ちゃんが物語の中で必要性がなさすぎる
・あんだけ川で濡れたのに伝令の手紙と写真はなぜ無事なんだ
・主人公がどんなに砂埃で汚れようが川でびしょ濡れになろうがすぐに元通りになる
・マッケンジー大佐もう遅いとか言っときながら伝令見た瞬間あっさり受け入れるな
・何百人もの人が既に戦闘に入ってたのにそんな簡単に戦闘中止にできんのか?
・ドイツ兵がいるのがわかってるはずなのになんで人影に近づくんだ?
友人の兄のくだりにしても途中で現れた必要性のわからない女性と赤ちゃんのくだりにしても無理くり感動を演出しようとしてるのが透けて見えて興醒めしてしまった
没入感が味わえれば中身なんかどうでもいいって人は楽しめるかもね
この作品を絶賛してる人の中にはアカデミー作品賞最有力の宣伝文句に流されちゃったって人結構いるんじゃないかな
戦争は何も生まない
いわゆる戦争映画は「プライベート•ライアン」位しか真剣に観てない自分ですが、ワンカット撮影の謳い文句に釣られてIMAXで。
編集についてはあくまでもワンカット風に仕上げただけだろうと思いながら鑑賞していたので裏切られた感は全くありません。自分がさも2人の兵士の後を歩いているようなカメラワーク、この感覚なんだか見覚えのある感じだなぁと考えてたらわかりました。息子や娘の動画を撮っている時のあの感じです!!カメラを構えてひたすらに被写体を追いかけるあの感じ!!だから本当に最前線に行ってしまった臨場感が味わえました。
何人もの兵士が劇中に出てきますが、誰もがブレイクやスコの様な指令を受ける事もなくいきなり国の為とかで駆り出され、何のために戦っているのか理解できないまま亡くなった人がほとんどなんだろうなと。でもその人達にも家族がいて、色んな事情があって。恨んでもない人を殺めなければいけないってどんな人生なんだよって思ってしまう。今の自分は確かに戦っていますが(仕事してるって意味で)それはあくまでも自分の人生だから頑張れるってもんで、戦争なんて、よっしゃいっちょやってやろーって思う人いませんよね。
敵陣で接近戦もありましたが、やらないとやられるのはブレイクの件で経験してました。心優しい青年にそこまでさせてしまう戦争って、何にも生まないなって痛感させられる映画でした。
遠い昔からある戦争。
でも確かにあった戦争。
1人ひとりのドラマを想像すると、それは果てしなく苦しくてやるせない。
心に刺さる映画でした。
違和感ない時間濃縮がもたらす没入感
日本公開5日目に鑑賞。
Colin Firth に始まり Cumberbatch で終わる道程に、バッチリ没入できました。
背中を追いながら、時折正面に回り込む映像も愉しい2時間でした。
感想を以下の4つのポイントに分けて、書いてみました。
1. 濃縮された時間に没入
2. 臨場感には経験が必要?
3. 友の死を悼み、敵を撃ち殺すのが戦争
4. Thomas Newman の音楽に揺蕩う
🎞️🎬🎥
1. 濃縮された時間に没入
劇場予告や前評判で散々聞かされた、ワンカット(っぽい)映像は、やはり見どころでした。
町山さんの指摘通り、背中を追う映像は表情の演技が犠牲になりますが、観客が主人公(もしくは背後霊)の視線になれる利点もあります。
時折前に回り込んだり、主人公の周りをぐるぐる回る映像も、照明さんや音声さんは何処?って感じの不思議さがありました。
爆破や気絶、河に飛び込む瞬間など、分かりやすくカットを割れる箇所もありますが、かなり長回ししているのは確か。
水死体役の人など、待ってんの大変やろなと随所で感じました。
ただ自分がそれ以上に感心したのが、自然な時間濃縮。
全体の尺が2時間なので、時の流れをリアルに描くと、実際に2時間で移動できる道程しか描けません。
ところが、冒頭に(正確には覚えてないけど)移動には8時間かかるとの台詞。
この時点で、時間経過をリアルには描かない事が分かります。
おまけに、爆破での生き埋め、戦友の死、気絶、母子との交流などでもタイムロス。
車移動や河流れで、大幅に距離を縮めたのかもしれませんが、映画上は短時間なので、時間は確実に濃縮されていました。
しかし、早すぎる筈の時の流れに全く違和感がありませんでした。
おかげで、主人公の視点で戦争を追体験でき、気づけば映画が終わっちゃったと感じるくらいの没入感がありました。
💣
2. 臨場感には経験が必要?
ただ、臨場感があったかと言われると、先週観た「Fukushima 50」には及ばない気がしました。
それは、映画に責任がではなく、自分の経験の乏しさが原因な気がします。
もちろん、全電源喪失(SBO)した原発の中での経験もありませんが、見えない放射能への恐れは、震災時にたっぷり体感しました。
なので、Fukushima 50 が現場でみせる慄きは、かなり臨場感ともに迫ってきました。
一方で、戦場での経験は皆無です。
銃撃も爆破も、ドラマや映画の中の出来事でしかありません。
近くの米軍燃料タンクが爆発して、小学校の窓ガラスが全壊した経験はありますが、ビックリした程度で、恐怖は感じませんでした。
なので、主人公の痛みや恐れまでは、感じ取れている自信がありません。
戦場に対する経験不足を実感しつつ、幸せを再確認しました。
☠️
3. 友の死を悼み、敵を撃ち殺すのが戦争
戦場は未経験ですが、肉親の命が突然絶たれた経験はあります。
なので、敵兵を助けようとした戦友が刺された場面、その死を兄に伝えるシーンでは、心の痛みがよく伝わってきました。
その一方で、友や自分に刃を向ける敵の命は、迷わず奪う。
地球より命が重いのは味方だけで、敵の命まで慮ると、自分が命を失いかねないのが戦場。
きれいごとを言っていられる平和が、ぬるま湯と言われようが、如何に幸せなのか感じ入りました。
🎶
4. Thomas Newman の音楽に揺蕩う
サントラ好きとしては、エンドロールでも流れたThomas Newman の音楽が、かなり心地よかったです。
席を立つ人が結構いたのが、ちょっと信じられないくらいでした。
曲名としては「The Night Window」と「Come Back to Us」。
Thomas Newman で有名なのは「The Shawshank Redemption」「American Beauty」やPixar作品だと思いますが、個人的には「Little Women」のサントラがハズレ曲なしで、結構愛聴してました。
本作の上記2曲も、是非ともコレクションに加えたい一品でした。
すごかった
助けたドイツ人が刺してきて、ドイツ人えぐい。最初主人公だと思っていた方の友達が死んでしまって、一人で目的に向かって進まなければならないのが心細い。
しかし、16キロなら普通に走れば2時間くらいでたどり着ける距離で、ライフル銃などの装備を減らして身軽にした方がいいのではないか。また、健脚の兵士を抜擢すればもっと早く到着できるし、味方の飛行機が飛んでいたので、飛行機を使って伝令はできないのだろうか。そんなことが気になったのだが、とても面白かった。
お兄さんが元気でいて、暖かい人物で感動した。
個人的には、パラサイトより◎
2月17日 レイトショーで観覧 ワンカット撮影、評価が高かったので観覧しました。
臨場感、音楽、ストーリー、良かったです。
ただ、戦場での理不尽な事をより描いていたら、より良い作品に成っていたと思いました。
話は変わりますが、日本でもしこの映画の企画があがっていたら、映画、製作されていたでしょうか? 上から目線ですみませんが日本映画の製作人の方々、チャレンジして下さい。一、映画ファンより🙇
秀逸な戦争映画!
固い映画だと想像してましたが、やっぱりそうでした(笑)。私は最後の砲弾が行き交う中で、走りまくる主人公に涙しました。そこが圧巻でした。それから戦友の兄に弟の死を告げるところもグッと来て涙が滲みました。戦場に横たわる屍のリアルさや、傷病兵たちの苦しみ、また助けたドイツ兵に殺されるシーン等々。まさに戦争ほど残酷で悲惨なものはないと思いました。あと、ノーカット風の撮影は、緊張感の連続するような気がして確かに臨場感があって、恐怖感が増しました。ずっと観ていて切れるところは何箇所かありましたが、それ以外はつけっぱなし。それにしても、人間の醜い争いとは裏腹に風景はとても美しい。無残に伐採されたチェリーの木々も、また落ちた種からたくましく再生する。それが一つの希望のような気がしました。いずれにしても、一人ひとりの兵士は全てたくさんの家族と繋がっているという展開は、戦争の無意味さを象徴しているようでした。秀逸な作品です。観てください。
体験型新感覚映画
第一次世界対戦の最中、イギリス軍の一兵卒であるブレイクとスコフィールドは、最前線の部隊へ、明朝までに戦闘停止の命令を伝える任務を受ける。間に合わなければ、ドイツ軍の待ち伏せにより、甚大な被害が予想され、最前線の部隊には、ブレイクの兄も所属していた。数々の危険が待ち受ける戦場の中を、たった二人の伝令が駆け抜ける。
構造は極めてシンプル。伝令の出発から任務の終わりまで、カメラはずっと、彼らの背後に付き従うように、時に視点を巡らし、回り込みながら、その行程を追っていく。敵に遭遇し、銃撃をかい潜り、次々と襲い来る危機を乗り越えながら、ひたすら終着点を目指して走り続ける。
登場人物の背景が詳細に語られたり、大仰な泣かせの展開が繰り広げられたりはしない。ただ淡々と、死がありふれた戦場を、必死で進み、多くの敵と味方を通過していく。
あたかも自分も一人の伝令になったかのような臨場感は凄まじく、時間の断絶を最低限に、伝令の姿を追い続ける映像に、目を離す隙もない。
カメラワークやアングルの妙に加え、リアルなセット、構図の美しさなど、ビジュアルの完成度は最高レベル。塹壕の泥濘に同化する死体、川面を埋め尽くす死者に降りしきる花弁…。壮絶な映像に息を飲まされる。
草に埋もれて居眠る二人の兵士に始まり、それに被せるように、一人草むらの木にもたれた兵士の姿で終わる構成、停戦命令を届けた大佐の「毎日違った命令が出る。明日は朝日と共に突撃の命が下るだろう」の台詞、ラストシーンの家族写真に書かれた「生きて戻って」のメッセージ。果たして自分は生きて帰れるだろうかと、兵士達の追い込まれていく静かな絶望と虚しさを、僅かな情報で写して見せる技巧も上手い。
感情や倫理に訴える手法に対し、こういう戦争の描き方もあっていいだろう。
ただ、不必要な脚色を極力省いた淡々とした視線は、効果と同時にある種の弊害をももたらしているように思う。
戦場を生き抜く一兵士の視点は、いつ死んでもおかしくない恐怖と、我武者羅に障害を排除して命を繋ぎたい必死さを、観客に憑依させていく。
映画が終わり恐怖から解放された時、観客は自らの内に芽生えた攻撃性と、立ちはだかる者の死への鈍感さに気付いてゾッとするだろうか。そこまでの描き方を、この映画はできていないように思う。
情報量の多さは、想像力を奪う。設定されたイベントのように、次々と与えられる試練。視覚や聴覚を埋め尽くして与えられるストレス。そこから解放された時、私は何を思ったか。ああ、良かった、と、肩の力を抜いてほっとしただけだ。
それでは、お化け屋敷やジェットコースターなどのアトラクションと変わらない。受けとり手の感性に左右される面もあるのだろうが、戦争というものの恐ろしさについて、もう一歩踏み込んだ描き方をして欲しかったという気もする。
戦争が怖いのは、誰もが理不尽な死に晒されるからだけじゃない。誰もが生きるために殺すことに躊躇いを覚えなくなるからでもある。
とはいえ、映画としては間違いなく新感覚。いかにも、技術が進歩し、VRなどの現実とみまごう体験を尊ぶ現代らしい作品と言えるだろう。
鑑賞は、是非大スクリーン、良音響のシアターで。
ワンカット(風)戦線技巧と語り伝えるものあり
あらすじは副題通り。最前線に居る仲間の兵士を救う伝令を届ける為、若い二人の兵士が戦地を駆ける。
非常にシンプルで分かり易いが、はっきり言ってストーリーは特別目新しいものではない。何故脚本賞にノミネートされたのか疑問。
しかし…
『プライベート・ライアン』『ブラックホーク・ダウン』『ダンケルク』…数年に一本、革命的とも言える“体感する”戦争映画が誕生するが、本作も間違いなくそれらに並ぶ。
何なんだ、この圧倒的な臨場感、緊迫感は…!
終始目が釘付け。2時間の戦争擬似体験があっという間だった。
気付いたら、飲み物を飲む事すら忘れていた!
普通だったら、開幕→命令が下り→装備を整え→出発→幾多の危機→途中他の部隊と合流したり→日没や夜明けまでのタイムリミット→そしてクライマックス…それらをカット毎に撮り、編集で繋いでいくのだが、本当にリアルタイムで展開していくのにはたまげた! 私も彼らと一緒になって戦地に居た。
それを体感させてくれたのが、言うまでもないが超話題の“ワンカット風映像”。
何だか誤解されているようだが、2時間全編ワンカットの映像ではない。実際は、7~8分ほどの長回し映像を巧みな編集やCG技術で“ワンカット風”に見せているのだ。(またしても日本の配給会社は嘘宣伝…)
一部では2時間全て完全ワンカット映像だったら…という声もあるようだが、幾ら何でもそれは無理。周囲の爆破や目前の戦闘機墜落、日没やどうやっても不可能なタイミングもあるし、それらを何度も何度もリハを重ね、もし失敗でもしたらまた最初からやり直し。これほどの大作だし、どれだけ撮影日数や製作費が掛かる?
それでもこの“ワンカット風映像”は驚異的…! 一体何処で、どうやって繋いだのか、全く分からないほど。(まあ、一箇所くらいは分かったが)
名カメラマン、ロジャー・ディーキンスの2度目の撮影賞は納得と言うより、当然。
終盤、照明弾により幻想的に浮かび上がったナイトシーンの美しさは、“光と闇のコントラスト”と呼ばれる氏の手腕が冴え、あのシーンだけでも賞に値する。
それにしても、以前はあんなに獲れなかったのに、あっさりと2つ目のオスカー…。不思議なもんである。
だけど、音楽のトーマス・ニューマンはこれで15連敗…。この名作曲家にもいつかオスカーを!
戦争映画と言えば、“音”。間違いなく私の周りで、銃弾が飛び交い、爆発が起きていた。
サポート的なリアルなCG。
主演の若手二人、ジョージ・マッケイとディーン・チャールズ・チャップマンの熱演。
『アメリカン・ビューティー』『ロード・トゥ・パーディション』で魅せた卓越と正攻法の人間ドラマ、『007』で魅せた迫力のアクションとスペクタクル描写…。
それらが見事合わさり、纏め上げたサム・メンデスの手腕はキャリアベスト級。
ゴールデン・グローブ賞や製作者組合賞を受賞して大本命視されながらオスカー作品賞は逃したものの、従来なら確実に手にしていただろう。ただ、今回は…。
が、先にも述べたが、戦争映画にまた一本、名作が誕生した。
映像や技術面が高い評価を得ているが、今戦争映画を作る意義もしっかりと込められている。
戦場には、腐乱した死体があちこちに。まさに、地獄絵図。
気の休まるひと時もある。他愛ないお喋り、他の部隊との合流、ある廃屋で出会った若い女性と赤ん坊との交流…。
が、その僅か数分後には再び死と隣り合わせ。
中盤、ある悲劇が。余りにも悲し過ぎる。残酷過ぎる。
助ける為の任務の筈なのに、こちらが犠牲に…。
かくして伝令は届けられた。が、それもあくまで“この時”だけ。戦況はいつまた変わるか分からない。
一体、何の為の任務だったのか。何の為の犠牲だったのか…。
もう一つ、伝えなければならない事が。ひょっとしたら、任務の伝令より辛い事かもしれない。
これが、戦争なのか。
これが、戦争なのだ。
本作は、サム・メンデスが祖父から聞いた話がベースとなっている。
数々の作品を手掛けているメンデスだが、最も作り伝えたかった話のような思いを受けた。
戦争を忘れてはいけない。悲劇、残酷さ、不条理さ…。
それらを語り継いでいかなければならない。
戦争を知らぬ今の多くの我々に届けてくれた、まさしく“命をかけた伝令”であった。
長回し映画。キュアロン作品との違い。『ダンケルク』との違い。
塹壕から出発し、塹壕に帰ってくる映画。
はじめ、主人公スコフィールドは任務に気乗りせず、同僚に引っ張られるようにして塹壕を進むだけだった。最後に1人で塹壕へ入ったときの彼は、自ら人混みを掻き分ける。そこに主体性が生まれている。(そして草原を走り回るとき、これまで怯えながら慎重に進んでいたのとは違った開放感が生まれる)
気乗りしないまま塹壕を出発した「スコ」。任務達成のモチベーションは、同僚の兄を救うことにあって、自分の兄ではない。ドイツ軍の陣地跡に入ってあやうく命を落としかけ、いよいよモチベーションを落とすが、同僚の死の間際にあって、彼を「運ぶ」ことにモチベーションを見出す。(つまり同僚の遺志を運ぶこと)
とはいえ気力がなくなった時に、都合よく友軍部隊が彼を運んでくれる。(けれども友軍部隊が泥にはまった時は馬力を見せる)
友軍部隊と別れたあとはスリリングな展開が待ち受けているが、ここでも力尽きた彼は、川によって流される。というよりも、やはり「運ばれる」。運ばれた先には、友軍部隊による故郷を忍ぶ歌が待ち受けている。(戦場で出会ったフランス人の女性と赤子。ここで擬似家族形成が示唆するのは、任務達成のみならず、生きて帰還することへのモチベーションの確認か。劇中ぼんやりと、スコの妻子の存在が示唆される)
引きずられるように出発
→いやいや進む
→同僚の死と落胆(モチベーションの確認①/主体性の獲得)
→車で運ばれる
→独立(スリリングな展開)
→擬似家族(モチベーションの確認②/守るものの確認)
→川に運ばれる(帰郷間近)
→塹壕を掻き分けて進む(主体性の完全な発揮)
→任務達成、帰郷
★★★
つねに主役にフォーカスし、走馬灯のように背景を「流す」ことによって、主人公が前に進む理由や動機の変化へと観客の考えが及ぶことを可能にした。
『ゼロ・グラビティ』『ローマ』『トゥモロー・ワールド』といった、キュアロン監督作品内における長回しは、物体の運動や、登場人物による行為を映し出すが、本作の長回しが目的としたのは主人公の内面を浮かび上がらせることだ。(と言っても彼が主人公であることの明確になるのは、上映開始から数十分が経過したのちのことであるが)
長回しというと、そこに映し出される映像の出来のよさ、完成度がもてはやされるが、この映画は、長回しによって、「そこにないもの」、そこには写されていないものーすなわち内面ーへと思考がおよぶことを可能とした。
キュアロン映画における長回しは、映像自体が目的だ。立派で正確な映像※1を完成させることに終始する。『1917』は長回しのその先にある、人物の心の動き、その変化を浮かび上がらせたのだ。
※1 『ゼロ・グラビティ』の宇宙ステーション崩壊シーンに見られるような、「現実にその出来事が発生したならば、まさにその通りに発生するであろう」映像。物理学的に正確な映像。
★★★
類似作は『ダンケルク』だが、今作は一貫して「連続的」であることによって、「分割」を標榜するノーラン作品とは別種の作品たり得た。
『ダンケルク』は、複数の事象を発生順に整理することを要求し、人物と人物とがいつどこで交わったのかを求めさせるパズル問題だ。劇場から、鑑賞者の脳内や、作品について語り合う場へと舞台を移すことによって映画が完結する。
一方『1917』は、映像に没入することによって完結する。劇場での117分間で完結するのだった。
どちらも好きだ。
★★★
P.S.
『サンセット』も見て欲しい。同じ長回し映画としては、『サンセット』のほうが、キュアロン映画よりも『1917』に近い。
P.S.その2
全編長回し一本取り(風の編集)といえば、最近だと『バードマン』が思い浮かぶ。『1917』が初めてでもないのだから、そこまで騒ぎ立てることでもないと思う。(普通の映画にだって、どうやって撮影したの?と知りたくなる演出はたくさんある。)今後、後続の映画は出現するのか、そして今作のように意図を持って長回しという編集形態を採用しているのかどうか、鑑賞者が「いいな」と思える長回しになっているかどうか、注目だ。
心臓に悪い臨場感
冒頭の馬の死体にたかるハエ、ネズミがそこらを駆回る泥臭い描写のリアルさに驚いていたら、次々と砲弾が飛んでくる。入った部屋は爆発する。飛行機は落ちる。わりと序盤で相方は死ぬ。
戦争映画ではないというレビューも見かけたが、初心者にはいちいち怖かった。
確かに戦争というよりも、伝令を伝える使命を与えられた二人の話である。
しかし音と映像の臨場感がありすぎて、まるで自分が追いかけられているような気持ちになる。
そのわりに、主人公たちが丸腰で(入らなくていい小屋に入って爆発し、やらなくていいことをして自滅)、もう頼むからいらんことするな!伝令届けてくれ!と何度も思った。そのいらんこと、がないと何も起こらない話なので仕方はないが。
無茶な任務で、途中相方が死ぬなど色々ありましたが、なんとか遂行しました。
というのを二時間撮った感じ。
戦争映画として見るのも違うし、エンターテイメントというほど大それてもいないので、ただただ臨場感を味わいたい人はぜひ映画館でみてほしい。
「ワンカット」「桜」「優しさ」「撮影・音楽」...
とにかく凄かった。映画が終わり、いち早く(映画での伝令のように)自分の思い、感想を伝えたかった。
「ワンカット」
まず凄いところは「ワンカット」撮影だと言うこと。このような不可能的な、アイデアをする監督、また、このような撮影を引き受けるカメラマン、そして、これを演じる俳優。普通こんな緊張感、圧迫感のあるアイデアを引き受けたい人なんていないと思う。この映画に参加した全ての人が凄い。だからこそ、このような素晴らしい作品が出来と思う。また「全編ワンカット」という強烈的な見出しを広告などで知った人々は内容はどうといい、見ないハズがない。ですのでこの映画は見る前から注目を集めた。
「桜」
この映画の注目すべき点は「桜」だと思う。冒頭でブレイクが花について語っていた。そして、終盤、桜はウィルのミチシルベとなり、死んでしまったウィルを思い出させる効果があったと思う。だから、川から上がったウィルはブレイクからの感謝を感じ、前は泣かなかったウィルが泣いていたんだと思う。
「優しさ」
建物が爆発により、崩壊したときのブレイクのウィルへの優しさ、敵軍ということ知っているにも関わらず、助けようとした優しさ。こういう場面からビルの優しさを感じることができる。もし、あの時死んでいなかったとしても、あの戦場では2人生き延びることは出来なかったと思う。
「撮影、音楽」
とても厳しい条件の撮影をこなす凄さ、客観的に、実際に戦場にいるような雰囲気、まるで私たちが撮影をしているような雰囲気、ブレイク、ウィルを追いかけているような兵士になった気分を味わえた。またそれに加え適切かつ強い音楽を取り入れることによって、強く深い臨場感を味わうことが出来た。
木で2人で寝ているところから始まり、木で1人で寝て終わるという共通点があり、悲しみのある終わり方でした。
ワンカット だけではない
アカデミー賞では色々とパラサイトに持って行かれた感のある本作。
ただもちろん、オスカーを取らないからと言ってつまらないというわけではない。評判通りの面白さである。
何と言っても最大の特徴はやはり 全編ワンカット との触れ込みの撮影手法。見て見たら いやカット切っとるやん! というシーンが思いっきりありはしたが、要所要所に いやどーやって撮ってんのこれ
とびっくりするシーンがいくつもあってあんぐり・・・
作品賞は逃したとはいえロジャーディーキンスが撮影賞を取っただけのことはある。
ワンカット撮影の最大の効果はひとえに 見る側を映画内の世界から逃がさない とい点に尽きると思うが、そう言った点で今作は戦場の緊張感を余すことなく捉え切っていると思う。
ただ正直見る前から、 そこはきちんとやっているんだろう というある種最低限のハードルのようになっていた部分はあったので飽くまで きちんと飛び越えてきたな という印象。
むしろ個人的には長回しによる弊害と言えるような部分を絵作りの工夫でうまく処理している印象がありそこに関心。
まずは、ワンカットで引っ張ることによる場面展開の難しさに関して。ワンカットはカットを割らないことによって通常よりも些細なことでも情報量が増えがちになり、複数の場面にわたって展開するにはあまり向かない(複数場面に渡ると情報量が増えすぎて疲れる) という気がするのだが、今作は長回しの中にも要所に ここから先はまた別の展開ですよー というのが画面の絵作りをガラッと変えることである種 セーブポイント 的に示されるので、ずーっと続いている感が若干緩和される。
例えば、冒頭の沼地状態になった場所から次の展開に変わる時はきちんと環境がガラッと変わるし、そのあともストーリーが大きく進む時は必ず風景も合わせて変化するので全編ワンカット(風)による疲れが生じにくい。 ただ ワンカットで撮ったらすごくね? という思いつきだけではなく色々と計算されていると思う。
あとは ワンカットの映画だったらこういう感じ と想像がつく範囲の、言ってしまえばスペクタクル性の低い出来事、を上回る自体が待っていたことにも関心。
今作のような、軸となる登場人物が極限まで少ない映画(というかワンカットで追いかける以上画面上に出せる人物数は限られる)で起こる事態としては完全に想像を上回っていてびっくりした。
飛行機・・・ 落ちるの!? というのもびっくりしたが、個人的には燃え盛る夜の街が照明弾に照らされて影が浮き彫りになるシーン! めっちゃびっくりした。ワンカット長回しの触れ込みの映画で観れる場面じゃないよあれは。
サムメンデスはノーランからの影響をよく口にしているのでおそらく今作も ダンケルク を意識しているのではないだろうか。(というかどこかで言っているのを聞いたかも・・・)
画面で何を語るか という点に全力が注がれているところはダンケルクと同様だが、個人的にはこっちの方が全然好き笑
本作のプロットも割とシンプル といえダンケルクよりはちゃんとしていたし。
正直、依然として圧倒的に パラサイト派 ではあるが、評判も納得の超大作だったので大満足。
今はこういう ザ オスカー みたいな超大作は敬遠されたりもするのかなー。ほぼ白人の男しか出てこないし。
まぁいいや。
前半は面白かった。
前半は下手なホラーよりも怖く(いつ敵の銃弾が来るのかと)
戦場や兵士たちの描写がとてもリアルで、ハラハラしっぱなしで良かったです。
ただ、後半はひどかった。
主人公を綺麗に描きすぎなのか。
よく、あの無謀さで最後まで生き残れたなぁと。
どれだけ近距離で発砲されても敵の銃弾は当たらないわ、あの装備で川に飛び込んでも溺れないわで…
ちょっと物語のご都合加減を感じてしまい、冷めました。
前半がリアルだっただけに、非常に残念です。
初見、心臓に悪い
前線部隊が敵陣奥深く侵攻し、総攻撃を企図していたとき、後方の司令部では航空偵察写真から、敵軍の戦略的後退を察知、作戦行動を停止させるべく、伝令兵を使ってその最前線部隊に差し向けるお話。
WW1と言えば、名作「西部戦線異状なし」が脳裏にあるので、開けっぴろげな場所で頭を不用意に上げているのは、見ていて不安でしょうがない(狙撃兵にやられそう)。
が、まさかの助けた敵軍パイロットによる反撃で刺殺されようとは・・・・
前線では、なまじ、志願などせず、やる気を出さない方が得。を体現していると言うべきか。
パイロットが腰にナイフを下げていて、やばいなと思っていたら案の定の展開。パッと見には、仲良くするかのように見えていたのだが。
また、忘れた頃に出てきた狙撃兵?敗残兵?の射撃が下手と言うべきか、逆にあんな反撃で敵兵を倒せるものなのか、ちょっと腑に落ちない部分も。
風景は鉄条網と塹壕と泥の世界だけかと思いきや、それは最前線だけ?敵陣値を抜けると牧歌的な風景が広がり、最後は土質の違いなのか、ずいぶんきれいな塹壕だった。
映画としては・・・エンタメ要素は少なく感じる。良作だとは思うが、リピートして観に行くかは微妙。
実話をベースにしているようだが、現実は退屈・・・と言うわけでもないだろうが・・・やや単調。
川に落ちて流されるシーンは、ちょっと急流すぎるような?そんなに山岳地域にも思えなかったが、あの急流は不自然。水面の動揺が激しすぎるし、水深も深すぎ?
滝つぼに落ちて静かな流れとなった先で流木による堰のようになっていたが、そこには民間人と思しき死体が累々と・・・
独軍に虐殺されたのかは分からないが、口に詰め物がしてあったような・・・そそくさと進んでしまったので、もうちょっと、描写時間があってもよさそうな。
ところどころの桜が散るシーンは、なんだか日本の戦争映画のようで・・・向こうにも、散りゆく桜を愛でるような文化があるのだろうか。
ラストのほうは時間軸と距離感が誇張されているのか、短いような感じがしないでもない。
しかも、もう最前線、攻撃態勢になっていて、砲撃も始まっているのに、攻撃を中止したあとが静かすぎ?
助かってよかったね、あるいは兄貴が生きていてよかったね、なのだが、ちょっと演出に難があると言うか、消化不良の感が。
この大画面で「西部戦線異状なし」を観てみたいなと思った次第。
この映画(1917)も悪くはないのだが・・・・
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