「ワンカットという名の戦場」1917 命をかけた伝令 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンカットという名の戦場
Dolby‐CINEMAで鑑賞(字幕)。
撮影現場はワンカットと云う名の戦場を闘っていたんだろうなと思いました。冒頭からすさまじい没入感。私の目は私の体を離れて画面の中に入ってしまいました。
切れ目無く紡がれていく物語と、常に主人公に寄り添って離れないカメラワークの素晴らしさ。驚異のワンカット映像(もどき)から片時も目が離せませんでした。
編集点を見つけられたらすげぇよなぁ、なんておこがましいことを考えて申し訳ありません。これは「バードマン」以上のクォリティーじゃないかなと思いました。
同作と違い、殆ど屋外のシーンの撮影ばかりだから天候に左右されただろうし、爆発などで地形や建物の様子が変わってしまったら、セットをつくり直したりと手間が掛かる。
綿密な前段取りや打ち合わせ、リハーサルを重ねたことでつくり上げられた凄まじき映像だな、と…。ドルビーシネマの効果も相まって、革新的な映画体験に震えました。
縦横無尽なカメラワークとはこのことだろうなぁ…。サム・メンデス監督とロジャー・ディーキンスの熱意と情熱が籠められた渾身の表現の数々に打ちのめされました。
[余談]
イギリス映画界を代表する名優たちが勢揃いし、且つとても贅沢な使い方をしていることに驚愕。もっと欲を言えば、マイケル・ケインとトム・ハーディーも出演して欲しかった。
[追記(2020/03/08)]
映像技術に驚嘆した勢いで書いてしまったのでストーリーについて完全スルーしていたため、徒然なるままに追記。
非常にシンプルなストーリーでした。物語が単純であればこそ、本作の売りである超絶技巧映像に集中出来ると云うものですが、単純でありながらちゃんと練られているなぁ、と…
例えば、序盤でのブレイク上等兵の戦死。あまりにも呆気無かったです。なんなら彼が主人公だと思っていたので、「え、死ぬのかよ?」とかなり衝撃的でした。
呆気無い死。これが戦場のリアルじゃないかなと思いました。常に死と隣り合わせの異常な状況で、それぞれにドラマティックな死が用意されているはずが無い。
ラスト、無事伝令を成し遂げ、ブレイク上等兵の兄に彼の戦死も伝えられてめでたしめでたし…とはいきませんでした。マッケンジー大佐の一言が胸に重くのし掛かって来ました。
「明日には違う命令が下り、また次の日には違う命令が。戦争は最後のひとりになるまで終わらない」。
戦争が続く限り、第二、第三のスコフィールド上等兵が命をかけた伝令を果たさねばならないのかもしれない。終わりの見えない戦争の悲惨さを端的に表した言葉だと思いました。
本作は監督の祖父から聞いた話がベースになっているとのこと。つまり本作は、戦争と云う悲劇を伝える時を越えた伝令なのかもしれません。心に刻まなくては。
[以降の鑑賞記録]
2020/10/11:Amazon Prime Video(レンタル・吹替)
※修正(2023/08/16)