「ワンカット だけではない」1917 命をかけた伝令 Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンカット だけではない
アカデミー賞では色々とパラサイトに持って行かれた感のある本作。
ただもちろん、オスカーを取らないからと言ってつまらないというわけではない。評判通りの面白さである。
何と言っても最大の特徴はやはり 全編ワンカット との触れ込みの撮影手法。見て見たら いやカット切っとるやん! というシーンが思いっきりありはしたが、要所要所に いやどーやって撮ってんのこれ
とびっくりするシーンがいくつもあってあんぐり・・・
作品賞は逃したとはいえロジャーディーキンスが撮影賞を取っただけのことはある。
ワンカット撮影の最大の効果はひとえに 見る側を映画内の世界から逃がさない とい点に尽きると思うが、そう言った点で今作は戦場の緊張感を余すことなく捉え切っていると思う。
ただ正直見る前から、 そこはきちんとやっているんだろう というある種最低限のハードルのようになっていた部分はあったので飽くまで きちんと飛び越えてきたな という印象。
むしろ個人的には長回しによる弊害と言えるような部分を絵作りの工夫でうまく処理している印象がありそこに関心。
まずは、ワンカットで引っ張ることによる場面展開の難しさに関して。ワンカットはカットを割らないことによって通常よりも些細なことでも情報量が増えがちになり、複数の場面にわたって展開するにはあまり向かない(複数場面に渡ると情報量が増えすぎて疲れる) という気がするのだが、今作は長回しの中にも要所に ここから先はまた別の展開ですよー というのが画面の絵作りをガラッと変えることである種 セーブポイント 的に示されるので、ずーっと続いている感が若干緩和される。
例えば、冒頭の沼地状態になった場所から次の展開に変わる時はきちんと環境がガラッと変わるし、そのあともストーリーが大きく進む時は必ず風景も合わせて変化するので全編ワンカット(風)による疲れが生じにくい。 ただ ワンカットで撮ったらすごくね? という思いつきだけではなく色々と計算されていると思う。
あとは ワンカットの映画だったらこういう感じ と想像がつく範囲の、言ってしまえばスペクタクル性の低い出来事、を上回る自体が待っていたことにも関心。
今作のような、軸となる登場人物が極限まで少ない映画(というかワンカットで追いかける以上画面上に出せる人物数は限られる)で起こる事態としては完全に想像を上回っていてびっくりした。
飛行機・・・ 落ちるの!? というのもびっくりしたが、個人的には燃え盛る夜の街が照明弾に照らされて影が浮き彫りになるシーン! めっちゃびっくりした。ワンカット長回しの触れ込みの映画で観れる場面じゃないよあれは。
サムメンデスはノーランからの影響をよく口にしているのでおそらく今作も ダンケルク を意識しているのではないだろうか。(というかどこかで言っているのを聞いたかも・・・)
画面で何を語るか という点に全力が注がれているところはダンケルクと同様だが、個人的にはこっちの方が全然好き笑
本作のプロットも割とシンプル といえダンケルクよりはちゃんとしていたし。
正直、依然として圧倒的に パラサイト派 ではあるが、評判も納得の超大作だったので大満足。
今はこういう ザ オスカー みたいな超大作は敬遠されたりもするのかなー。ほぼ白人の男しか出てこないし。
まぁいいや。