劇場公開日 2020年2月14日

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「計算された美しさをもつ戦争映画」1917 命をかけた伝令 さなさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5計算された美しさをもつ戦争映画

2020年2月16日
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 この作品は宣伝でもあるように、全編ワンカットに見えるように作られたというのが最大の特徴です。
 ストーリーは至ってシンプル。ドイツ軍に対する攻撃停止命令を前線に届ける任務を帯びたスコフィールドとブレイクの二人のイギリス兵士の物語です。監督の祖父の体験がもとになっており、物語は伝令役の二人から離れず展開していきます。

 2時間の映画ですが、かなり没入感の高い映画でした。

 戦争映画は次に何が起きるのかわからない緊迫感がありますが、この映画は場面の切り替えがなく、二人の兵士からほとんど離れていかないワンカットの撮影方法により、一般的な映画よりも映像と見ている観客との距離が小さいものになっていると思います。
 ただ、そのワンカットというのはこの作品の最大の特徴ではありますが、それだけではなく、この作品の映像は美しいです。
 もちろん時には人が無惨な姿でそこかしこに転がっているわけですが、それも含めて二人の目の前に広がる雄大な光景には息を呑むものがあり、木々に花びらが咲いているようなささやかな光景には不安を覚えたり救われたりして、そうしてわたしたちは二人とともに一歩ずつ進んでいきます。
 例えば物語の途中で、建物の中で気を失っていたスコフィールドが目覚めて夜(早朝)を迎えるシーンがありますが、窓の向こうに広がる建物を燃やす炎の明かりと、照明弾に照らされて姿を見せる廃墟の映像などは、こう言うのは適切なのかはわかりませんが、大変美しかったです。普通の照明は使えないため、何秒の照明弾が必要なのかや影の動きなどを計算した上で撮影したと鑑賞後に見たインタビュー記事で読みましたが、計算し尽くされた映像はあんなにも美しくなるのだなと改めて思いました。

 この作品は、内容としては普通の兵士が体験した出来事であって、特段社会的なメッセージが強い作品ではないとわたしは考えますが、現代一般市民がほとんど体験したことのない戦争というものを没入体験でき、その上で何を考えるかは各自に任されているという、観客にとってはとっつきやすいものになっていると思います。
 戦争映画に求めるものによっては、綺麗すぎるとか、メッセージ性が弱いとか色々あると思いますが、これはこれで良いのではないかと思います。

 この映画の没入感は映画館の大きなスクリーンでこそ体験できるものだと思いますし、ぜひ前方の席でスクリーンが視界に目一杯入る位置で観てほしいです。

さな