「なんだかくたびれちゃった。」1917 命をかけた伝令 ウシダトモユキ(無人島キネマ)さんの映画レビュー(感想・評価)
なんだかくたびれちゃった。
書いて語りたいことがあんまりない。
と言っても、この映画が好きじゃないとかつまんないとかそういうことではなくて、観てる間「なんか今すげーもん観てるな」という感覚は常にあったし、スクリーンの中の出来事に吸い込まれて終始緊張してたし、良いもの観せてもらったなという満足感で劇場を出た。
「Don't think,Feel!」系の映画として「ぜひ劇場で体験すべき映画!」とか。
全編をワンカット(的)な描き方をした作品として「(撮影の)ロジャー・ディーキンスすげー!」とか「臨場感や没入感がパねぇ!」とか。
そういうのはたくさんの映画見の人が詳しく語るだろうし、1917年当時の時代背景やら国際情勢やらを勉強したり解説したりしようという気が起こらない。ましてや「戦争ダメ!ゼッタイ」って、現実世界を憂うような教訓を拾い上げようとも思わない。書いて語りたいことがあんまりないんだ。
ヒトの死体がポイ捨てゴミのように散らばった戦場跡や、廃墟の庭に咲き乱れる桜やら、夜に燃え盛る建物や、あっけなく死ぬ若者や、力強く泣く赤ん坊や、そういう風景に何らかの意味を見つけていけば、示唆に富んだ寓話にもなり得る映画なのかもしれない。でもなんか、そういう観方を無効化するような何かがこの映画にはあったような気がする。
「なんだかくたびれちゃった。」
僕にとってはそういう感想の映画だったし、案外そういう感想にたどりつくべき映画なのかもしれない。
「あぁ…やれやれ…。」
戦争とか戦闘の中を生き延びた人の口から溢れるのって、おそらくそういうものなんだろう。だって戦争なんて、そもそもそういうしょうもないことなんだろうから。