すばらしき世界のレビュー・感想・評価
全455件中、81~100件目を表示
それでもこの世界で生きていくしかない
まっすぐで熱すぎる主人公・三上。生きづらい人生を三上が終えるとともに物語は終わり、そこに「すばらしき世界」のタイトルが現れる。
我々の住むこの世界がすばらしいわけがない。三上の物語を見たとおりである。この世界に対する静かな皮肉のようなタイトルである。
小さな幸せを糧に、今日一日そして明日もまた、この世界で我々は生きていくしかないんだろう。
上手い演技の役所広司
上手い! 上手すぎる演技の役所広司。
ヤクザもんや前科もんを演じさせたらピカイチ。
哀愁のある男がピッタリです。
務所上がりの人間には冷たい世の中。
作品では周りに気をかけてくれる人がいたことで
何とか堅気になれそうだったけど
現実はなかなか上手くいかないことだらけ。
後味良し
すばらしき世界
現実もこのようであってほしいと願う。
三上を取り巻くシャバの人間が、皆温かいのだ。
スーパーの店長、六角精二さんなんて最高じゃない!?
あんないい人いる?
ヤクザになるという道しか見つけられなかった三上。
子どもの時の環境が大きく影響している。
子ども時代は大切だ。
だから、もっと教育に国家予算を使おうよ。
話を戻しす。
最後、三上があそこで死んで胸を撫で下ろす私は酷いだろうか?
もし生きていたら、これからもっと苦しい思いをするだろうと想像し、正直ホッとした。(映画だし)
久美子からの電話、自分を抑えることができたちょっと複雑な満足感、新しい生活への希望
そんな感情の中で人生を終わらせた三上を、ちょっと羨ましくも思う。
役所浩司さんの品の良さが時々どうしても出てしまい、それが残念。
映画という「すばらしき世界」
役所広司が演じる三上は、殺人罪で13年服役していた。まっすぐで優しく、自分が正しいと思うことに正直ですぐキレてしまう。しかしそれはこの世界では通用しない。
シャバは長い刑期を終えて出所した前科者には生きづらいようで、また暴力による罪を犯して刑務所へ戻ってしまうのかとハラハラしながら、物語が進んで行く。
介護施設への就職が決まり、出所後に知り合い、助けてもらっている人たちが三上の自宅へ集まってのお祝いシーンがある。三上は本当に嬉しそうで、周りに感謝していた姿が良かった。周りも嬉しそうにし、これからは絶対にキレるんじゃ無いぞと応援していたときには、私も三上の周りに集まった優しい人たちのひとりになっていたかのように嬉しかった。
役所広司の演技がこれまたすばらしき世界。介護施設で三上がキレかけるシーン、我慢するシーンはまさに圧巻の演技で、役所広司が凄まじい。
仲野太賀の演技も、役所広司に負けず劣らず素晴らしいし、六角精児もいい味出してる。
監督、俳優たちが演じる主役に脇役、秀逸な脚本…
映画という「すばらしき世界」を楽しめました♪
【人。人間を見た。成人君主でもなんでもない。ただの人。癖のある人。それが社会で生きていくこ との軌跡を通して、「あるべき生き方」を考えさせてくれる物語】
・2020年公開の日本のヒューマンドラマ映画。
・実在の人物をモデルとして13年の刑期を終え出所した元殺人犯の男の苦悩を描く、佐木隆三さんの小説「身分帳」を原作とした邦画です。
・幼いころに母と離別し、ヤクザの世界に入る主人公三上は幾度となく刑務所の中に入る。最終的に、人を守るためと犯した殺人によって13年間を刑務所で過ごすことに。刑期を終え出所した彼は娑婆の世界で生きることを決意する。心の内側には「優しさ」を持つ彼だが、社会=ヤクザの世界しか知らない彼は、故に生まれる世間との軋轢などに苦悩する。それでも前を向いて生きていく三上は一体どうなるのか…という大枠ストーリー。
[お勧めのポイント]
・「すばらしき世界」とは一体…簡単には教えてくれない面白さ
・皮肉めいた表現にとにかく考えさせられる哲学的逸品映画
・役所広司さんの演技が圧巻すぎて映画にのめり込み過ぎる
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
[物語]
・ごく一般的な家庭なら子供の頃に経験する成長(社会の中で生きるという事を学ぶ)を、かなりの大人になってからするということ。それを語る物語。
∟大人なのに、どこか子供のような無邪気さを持つ三上。ヤクザの世界しか知らない彼は「世間体」「(大多数がよく言う)普通」を知らない。心のうちでは誰よりも「弱きものを助ける優しさ」や「間違ったことを許せない正義感」「仁義心」を持っているにもかかわらず、それを知らないだけで、社会で生きることがどれだけ難しいかを、物語は魅せてくれます。しかし、その「世間体」や「普通」が良いのか悪いのか、は映画では区別していないように思います。あくまでも、三上の生きざまを描きながら客観的にそれを語ってくれているだけ。だからこそ、それを観るものとして「どう思うか」「どう生きるべきか」を考えさせてくれました。
・プロデューサー吉澤の数々の哲学的な言葉が刺さる
「社会のレールから外れた人が今ほど生き辛い世の中ってない。一度外れたら死ねと言わんばかりの不寛容がはびこっている。だけど、レールの上を歩いている私たちもちっとも幸福なんて感じていないから、レールからはみ出たやつが許せない。本当は思うことはみんな一緒」
「撮らないなら止めろ。止めないなら撮って人に伝えろ。上品ぶって、お前みたいなやつが人を何も救わない。」
∟昨今の他者批判や正義の名のもとに行われる行動に対する、ある視点の考えがビンビンと伝わってきて、私自身は共感できました。あくまでもプロデューサー吉澤に持たせた台詞なので、正しいとか間違っている、という事ではなく、それを受けて観客としてももどう考えるのか、という事を問われている気がしました。
[演出]
・スカイツリーと東京タワーを使ったモンタージュは、主人公の心や動向をわかりやすく画的に表現してくれる映画的面白さ。
∟最初に出てくる昼間のスカイツリーは「13年の間に変わった世界」を、次に出てくる煌びやかな東京タワーは「過去とのつながり、執着」などを、再度出てくる煌びやかなスカイツリーは「未来への希望」を、感じました。1度目のスカイツリーで、三上が刑期中に変わった世界への希望をほんのり感じさせ、次の東京タワーで過去へ執着するもそこにもなじめず…行き場を失った三上が行き着く先が2度目の煌びやかなスカイツリー(=希望)だった。のではないかと勝手に考察。
∟三上の心や動向を台詞ではなく画で説明してくれていて、しかもわかりやすい。これぞ映画的、と思いました。
∟そして、2度目のスカイツリーの後の物語の流れは、「一体、何を希望と捉えているのか」ということを深く考察させられます。考えるきっかけをわかりやすく画で教えてくれて、でも答えは言わない。これぞ哲学的な映画に思いました。
[映像]
・三上の家では、いつもキッチンが見える状態でワンルームが映し出されます。そこにはモノがほとんどなく、いつも整理整頓されている。これがどこか「貧しい中でもつつましく正しく生きようとする三上の姿勢」を感じさせてくれて、味のある映像だなぁ、と思いました。
[音楽]
・際立って感じたことはありません。
[演技・配役]
・役所広司さんの演技が素晴らしすぎて…
∟圧巻としか言いようがありません。筑紫野出身の博多弁。世間から取り残された立ち振る舞い。ヤクザの世界だけから得た純粋無垢な無邪気さある行動。その一つ一つがリアルに伝わってきて、役所広司という俳優を忘れ、「三上」という人物にしか見えません。
・ディレクター津乃田役の仲野太賀さんとプロデューサー吉澤役の長澤まさみさんのセットが素敵
∟まず、長澤まさみさんという大女優をこう使うか!という驚き。ただ、その吉澤役は、少ないながらも核心をついた台詞が津乃田の行動を変えるきっかけとるため、とても重要な役割。それを少ない時間で見事なまでの存在感で成り立たせています。さすがです。
∟仲野さんも初めてお見受けする俳優さんでしたが、「表面だけで生きていて考えも浅く深みのない若者が、三上と触れ合うことで芯を持つ大人に成長してゆく」様を、表情を使って見事なまでに表現されているように感じました。特に、無関心が感心のまなざしに変化していく様は、観ているこちらも嬉しくなりました。
[全体]
・「すばらしき世界」とは一体…簡単には教えてくれない面白さ。
∟エンドロール手前でタイトルテロップ「すばらしき世界」が現れます。これには皆さん、一旦は「…」となるのではないでしょうか。私はなりました。笑
∟スカイツリーモンタージュからの流れもあり、この流れでのタイトルテロップ、私はかなり戸惑いました。本質はカントクのみぞ知る、ですね💦
∟私なりの考察・解釈は「人が人を貶める複雑な世の中ではあります。そんな世の中ではありますけども、どんな人でも、どんな最悪な状況でも、その人自身が前を向いて動き出せば、あなたを想ってくれる人は、あなたを助けてくれる人は、必ず現れます。そんな素敵な世の中でもあります。そんな、すばらしき世界。」です。こうやって考えさせてくれる映画は、必然的に自分で自身の内面をえぐる作業をさせてくれる哲学的な素敵な映画だと思いますので、個人的にはとても好きです。
・「無邪気で無鉄砲でも誰よりも仁義や優しさを持つ三上」と「世間様の常識を手に入れてうまく生きる(時に見過ごす)術を知った三上」の対比に「あるべき生き方」を考えさせられます。
∟タイトルテロップの入れ場所にしても、物語の流れにしても、キャラクターの台詞にしても、陰(マイナス)と陽(プラス)の性質のものを多数、観客につきつけてきます。しかも善悪もつけずに。そういう意味では皮肉まじりといいますか、こちらに投げかけすぎでしょう、とすら思います。いや、それがこちらも好きなんですが笑
∟そんな様々な投げかけの中で、物語的にも一番盛り上がった個所である三上の葛藤シーンの投げかけ。この時の行動に対して善悪をつけるのが非常に難しい。そしておそらく、同じようなことが、私たちの日常生活でも多々あると思います。そんな中で、どう考え行動するのか。改めて問われた気がします。三上が最終的にとった行動を単純に「成長」と捉えてよいのだろうか。。。なんかしっくりきません。
∟こんなムズカシイ問題をキャラクターの行動を通して問いかける辺りも、皮肉さを感じずにはいられませんね。笑 ただ、答えはなくても、いつまでも何も考えずにいてはいけないよ…と言われているような気もします。あっている間違っているはさておき、一人一人が三上の行動を見て、何を感じ、それを元に自身を振り返り、この先をどう生きていくのか。レールを外れてしまった三上と同じように、レールの上を乗った我々も、日々同じように苦悩して考えて生きていくことが大切なのかもしれない、と思わせてもらえました。
・総じて、観ている最中からとにかく考えさせられる映画でした。
・毎日を何も考えずに生きるよりも、本当に大切にすべきものや善悪などの価値観について、もう一歩踏み込んで考えて、行動につなげていけば、私自身の日常生活ももっと「すばらしき世界」になるかもしれない。そう教えてもらえた気がします。ありがとうございました。
#映画 #すばらしき世界 #2020年 #ヒューマンドラマ #哲学的映画 #善悪 #モンタージュ #西川美和監督 #役所広司 #仲野太賀 #長澤まさみ #六角精児 #考えさせられる映画
#全体3.7 #物語3.8 #演出3.7 #演技3.8 #配役3.6 #映像3.6 #音楽3.5
二律背反
人は結局更生できなくて、また繰り返すっていう落ちじゃなくて良かった。しかし、障害の子に対する悪態を許す選択をせざすをえない現実は複雑。どちらの方が良いという話ではなく、そういう世界の話。
実際に半数がまた刑務所に戻ってくる現実は確かにあり得る。三上は周りの人に恵まれたから良いものの。一歩間違えれば、再びあの独房で過ごすことにもなったかも。
だからこそ、周りの人の優しさが胸に沁みる。
三上が突然感極まって泣くいくつかのシーンが印象的。
一つ目は刑務所をでて保護してくれる夫婦にご飯をご馳走になっているシーン。ここでは彼らの優しさに対する涙か。
二つ目は養護施設で子ども達とサッカーをしていたシーン。ここでは昔の懐かしさと母親に会えない悲しみ。
三つ目は障害を持つ同僚から花を受け取るシーン。このシーンが1番示唆的で、今の生き方が本当に良い生き方なのか、まだ迷いのある気持ちが読み取れる。
最後、重苦しい雰囲気の中、青空に浮かぶタイトルコール『すはらしき世界』はストーリーの空気と二律背反する。まるで視聴者に本当にこの世界は素晴らしいのかというのを問いかけているよう。
ヤクザの社会復帰は…
ヤクザの社会復帰話。
ヤクザを擁護するわけではないが、今の日本ヤクザに人権が無いのは、問題。戦争前の日本を彷彿とさせる。
再犯率が高くなるのは、日本の立法と司法が機能していないエビデンス。日本はどんどん腐っていく。犯罪者まみれ、借金まみれ等々誰も責任逃れでどうしようもない。
今の日本はロシアと変わらないと思うのは、僕だけではないはず…😢
2本立て1本目。出所後の生きづらさ。 役所広司の見事な演技もあり魅...
2本立て1本目。出所後の生きづらさ。
役所広司の見事な演技もあり魅せるのだが、私は今一つ同情出来なかった。だってこの主人公、人を殺してるんですよ。
主人公は恵まれていたと思います。あんなに親身になってくれる人がたくさん。あり得ないと思います。私なら関わりたくないと思うでしょう。
ちょいと顔見せの長澤まさみがなんか丸い(笑)
半数の人が5年以内に刑務所に戻るという現実
#役所広司 名優
#仲野太賀 次世代の名脇役
#長澤まさみ 美人
#六角精児 良い人役
役所さんは『孤狼の血』ではヤクザに睨みをきかせる武闘派の刑事役でした。
本作では刑期を終えた元ヤクザ。
孤狼の血では広島弁、本作では福岡弁を話していた。
どちらも良かった。
そして、どちらの役もケンカは強い。
さらに、ある意味、結末まで一緒である。
作品全体を通して、主人公の不器用だけど真っ直ぐさ。その彼に手を差し伸べてくれる人達の温かさが描かれていた。
そして、現実社会の厳しさ、生きづらさも描いている。
個人的に
良いと思った点は、
現代において、反社は生きづらい世の中ですよというのを描いてくれている。これからグレるであろう若い子たちには知っておいてもらいたい。
この映画を見て一人でも反社から遠のく人が増えてくれることを願う。それは国民全体のためでもあるが、何より反社に生きる本人がどこかで辛い目に遭うからである。人生立ち直るのに遅いはないが、現実には20代後半からは自己変革をするのは本当に難しい。そして、自己変革できず挫折し自暴自棄になり、元の悪しき生活や環境に戻ってしまう。
エンタメとしては、とても楽しめました。
仲野太賀はこの作品でさらに評価を上げると思いました。 2枚目主役級はどんどん入れ替わるが、仲野太賀はこの世代を代表する名脇役であり、ずっと残ってほしいと思いました。
以上
1人でも多くの人に観てほしい
そうなんだ、社会ってそうなんだよ、、
福祉業界で働いてるので同意のしどころが多く、色々と考えさせられた。
長澤まさみの役の途中のセリフがガツンと響いた。
自分が殴られたような衝撃で、目が覚める思いがした。
後半は目が離せない。主人公の叫び出しそうな気持ちが伝わって胸が痛い。
監督も役者さんも全員素晴らしかった。
私の中ではこの作品がアカデミー賞最優秀賞です!!
毎日普通に生きる素晴らしさ
三上さんのような逆境の中でも、自分を殺してまで普通に生きようと懸命にもがく。
この生きづらい世の中で、毎日普通に生きていること自体が素晴らしいことなのではと考えさせられた。
人は一人では生きていけない。最後に悲しんでくれる人がいた事が、せめてもの救い。
やり直すことの難しさ
人生の半分はヤクザと刑務所で過ごした三上、出所して人生やり直そうとする。
三上の周りには、身元保証人の庄司夫妻はじめ、作家の津乃田、スーパーの店主松本、役所の北口など、良い人に出会い、みんなが三上の更生に協力してくれる。
うまくいかず、昔の仲間を頼って九州まで行ったが、そこでも下稲葉の妻がやり直すチャンスをくれる。
仕事先で怒りマックスになって、以前なら手が出ていただろうところを、堪えることができた。せめて、いちど前妻に会えると良かったのに。
人間の暖かさを感じることのできる映画でした。
役所さんはもちろんですが、今作は中野大賀がとても良かった。彼もどんな役でもハマる、これから楽しみな役者さんですね。
母ちゃんしか覚えとらんことばい
映画「すばらしき世界」(西川美和監督)から。
人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々は、
経験したことのない私にとって、コメントができる立場にない。
しかしなぜか、気になったフレーズのメモは溢れ、
到底、一回では書ききれないほどだった。
今回は、そんな体験をしてきた主人公が、自分を産んでくれた母親に
会いにいくシーン。
同行した記者が「どんなことを訊いてみたいですか?」と訊ねたら、
「お産の時の話は聞いてみたいね、自分をどげんして産んでくれたか」
と答え、逆に記者に訊き返す。
「あんた聞いたことあるどね?」と。
そして最後に「母ちゃんしか覚えとらんことばい」と語った。
私は、この台詞でハッとさせられた。
今、自分がこの世界にいるのは、母親が産んでくれたから。
そんな当たり前のことなのに、自分がどうやってこの世に誕生したのか、
その瞬間の話を聴いたことがなかった。
生まれた日時、体重、身長などの数字、
そして、私を取り上げてくれたお産婆さんの名前まで訊き出したのに、
母親しか覚えていない、産んだ時の記憶を聴いたことがない。
お互いが認知症になる前に、聴いておこうっと。
演者も演出etc.も、全部良かった。良かったけど、終わり方は分かる...
演者も演出etc.も、全部良かった。良かったけど、終わり方は分かる作品だったなぁ…
あと正直「いい人だいぶ多いな…」と思っちゃった。
周りの評判が良かったのでどんなものかと思っていたけど、私は「ふーん」って感じでした。
役所広司の渾身の演技に圧倒される
観終わって、すばらしき世界という題名は、生き辛い今の社会を皮肉ったものではなく、目指すべき社会のことを強く示唆していると感じた。
本作は、人生の殆どを刑務所で過ごしてきた男が、最後の更生のチャンスに賭けて懸命に愚直に生きる姿をリアルに描いた作品である。犯罪者の更生を描いた作品は多いが、本作ほど、犯罪者の人間性を浮き彫りにした作品はない。犯罪者を演じる役所広司の渾身の演技に圧倒される秀作である。
本作の主人公は、13年間の刑期を終え出所した、元殺人犯の三上(役所広司)。彼は、更生するため、懸命に努力していくが、なかなかうまくいかず、悶々としていた。TVディレクターの津野田(中野太賀)、TVプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、そんな彼に近づき、彼を題材にしたドキュメンタリー製作を目論んでいくが・・・。
本作のキーパーソンは役所広司である。曲がったことが嫌いで、困っている人がいると黙っていられない直情型性格でトラブルが絶えない、不器用で武骨な三上という男に憑依したような演技と、役所広司の持つ優しい佇まいで、三上の生き様、人柄を表現している。
身元引受人の弁護士をはじめ、彼の人柄に惹かれた支援者たちに助けられながら、主人公は、更生するために、愚直に行動していくが、犯罪者の更生を阻む多くの壁が待ち受けていた。壁に藻掻き、自暴自棄になりながらも、更生への道をひたすら突き進んでいく主人公の姿は胸に迫るものがある。
本作は、主人公が出所したところから物語が始まる。罪を償ったところから物語が始まる。主人公の過去を映像で見せつけることはない。そこに作り手の意図を感じる。罪を憎んで人を憎まずという諺を思い出す。劇中、娑婆の空は広い。という台詞がある。広い空は自由の比喩であろう。どんな人間でも自由に生きることができる社会。生き辛さを感じることのない社会。それが、我々が目指す社会であるということを本作は、鋭く問題提起している。
全455件中、81~100件目を表示