すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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すばらしき映画
リアル、ポイントは以下だ。
空を見ようと思った
ハッピーエンド
それでも、空が広い
すばらしき(この)世界
泣きました
すばらしき映画。
人情とか現代社会の生きづらさ、その中で実際生きて行く人の心の動きを丁寧に描いた作品だ。
役所広司のキレる演技は迫力がある。目の瞳孔を開いて相手を威圧し、地元言葉のように方言を使って相手を罵倒する。それからたまに見せる優しくて穏やかな顔。前を向いて生きようとした時の人間の明るさが目の輝きからすぐにわかる。悩む演技も泣く演技も、"三上"という男の人生を理解していないとあそこまで深みのある演技はできないと思う。役作りとその過程での想像力は並外れたものだし、天下一品だと思う。ここまで幅のある役を圧倒的な存在感で演じきれる俳優は、今の日本じゃこの人を置いて他にいない。
西川美和監督の作品は初めて見た。もちろん役所広司以外の俳優の演技も良かったが、西川美和監督の演出の中でそれぞれの役割を全うしてるという感じ。役者が1番輝くのは、それぞれの役割をしっかり認識した時だと思うが、あんなに豪華俳優陣が集まって誰も他の人の演技を邪魔していないというのは、監督の演出が良いからだと思う。三上が出会う人は一対一で三上と対峙しているから、これで三上が引き立つ。最期三上が亡くなった時は、三上と関わった人が集まって皆故人を黙々と悼む。その時にそれぞれ一人一人が三上に対する想いを頭の中で巡らせて、三上が生きていた時と死んだ後の世界の区別がはっきり現れている。それぞれの役割を適切に分担した上で、人が人と繋がることの意味をより深く探っているような演出をしてるように感じた。単に俯瞰視点だけでは成し得ない演出だと思う。人の心の奥深くに入って、他方で客観的に三上を取り巻く環境を構築していき、なおかつそれが自然に組み合わさってるというのは、人間一人に対して最大限その旨みを出させようとした演出だと言えると思う。
カメラの撮り方も良かった。印象的だったのはまず役所広司の背中だけ映すシーン。初めの方にワンシーン、その後に二つ目のシーンがある。一つ目は三上の中で葛藤とか悩みがある時の寂しい背中。二つ目は風呂の中で仲野太賀が三上の背中を流すシーン。この二つのシーンの対比があったからこそ、三上という人間が前に向かって進んでいるんだなと思わせたんだと思ってる。
それからたびたびある光がぼやけたシーン。万華鏡のようにいろんな光がぼやけて映ってる途中にも、俳優たちの会話は続いてる。だから綺麗な映像の中に俳優たちの声が印象深く残ってるんだと思うし、そのおかげで俳優の顔が見えた時の表情をもっと見たいと思うようになるんだと思う。
また、引きで夜の東京を上空から撮影してるシーンも似たような技法を使ってるんだと思う。ただ前者がより印象・観念の中に三上という実像を映し出していたのに対して、後者は社会の中に1人ポツンと元ヤクザが暮らしてるという寂しさを映し出していたという点で違いがあったと思う。
報われない世界でも 素晴らしき世界へ
久しぶりのすばらしき邦画
胸がつまる映画だ。どの登場人物も存在感がはっきりしていて過剰な演技をしない。これは現在の邦画ではあまり見られないスタイル(最近の邦画は何事もオーバーで見てられない)。西川監督作品は今回がはじめて。人物描画がブレることなく的確に描くから説得力がある。キャメラも秀逸で人間性を鋭く捉え、時折り幻想的かつ詩的なショットを映す。役所広司さんが今回もまた素晴らしい。元ヤクザが直面する現代社会との苦闘を演じているが、役所さん自身の人間性がそこかしこに滲みでている。PERFECTDAYSでも思ったけど役所さんの笑顔はチャップリンのあのチャーミングな笑顔と似ていてほんとに魅力的だ。ラストショットもしごく秀逸。ここでも余計なことは一切しない。悲嘆にくれる人たちをそのまま撮っているから返って強烈だ。また、キムラ緑子さんという女優の演技が強く印象に残った。貫禄や寛容さが濃くて素晴らしかった。こういう邦画がもっと出てくれたら、と願う。
特殊解では済ませたくないとの“すばらしき世界”へのメッセージとの思いに至り…
この公開年、キネマ旬報では、
前評判通りに「ドライブ・マイ・カー」が
第1位に選ばれる中、
選考委員の10点満点を付けた選考委員の多さ
では「ドライブ…」に次いで多かった結果、
第4位に選出された作品。
そして、原作者及び制作陣の想いを
強く感じる作品ではあった。
殺人をよる13年の刑期を終えた主人公が、
彼を社会に迎え入れようとする温かい人々に
支えられ更生を図るという、
正に“すばらしき世界”を希求する想いに
満ちあふれた作品に感じた。
周りの善意の支えられ
更生への強い決意がありながらも、
社会慣習の壁に、
時折、身に付いた暴力性が頭をもたげる。
しかし、最後にはそんな危機も脱して
“すはらしき世界”を感じつつ絶命する主人公
を演じた役所広司の演技力が
作品を支えていた印象。
ただ、どうしても私には特殊ケース的に
感じざるを得ない印象ではあった。
主人公が再度ヤクザ世界に
足を踏み入れそうになった時に
警察のガサ入れで救われることも、
身元引受人夫婦夫妻も、
主人公を取材する男性も、
役所の生活保護担当者も、
スーパーの店長も、
ヤクザ組長の妻も、
主人公の元妻も、
余りにも理解ある人々が
偶然にも周りに居過ぎる設定に違和感が。
現実にはなかなか無いこと
なのだろうな、と。
しかし、特殊ケースだけに
監督はじめスタッフの想いがそこに、
と理解をすべき作品だったのかも知れない、
との思いに至った。
特殊解では済ませたくない
“すばらしき世界”
への期待のメッセージとして。
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