すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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渋い
ヤクザと家族を見たばっかりだったからか、比べると少し地味かな。少しまったりした印象。
ただとにかく役所広司がいいですね。人間味があって、ところどころなんかかわいい。さすがですね。まっすぐで、だからこそ社会でうまく生きられない。自分を殺して生きるくらいならいっそ死んでしまいたい。人をバカにして差別して弱いものいじめして、でも社会的には真っ当に生きてる人間との対比が考えさせられる。
周りも素敵な俳優さんばかりだったから安心してみてられた。出演シーン短かったけど、長澤まさみキレイ、そして久しぶりに見た安田成美もキレイ。。54歳だと!素晴らしい👏
にしても祝日にあわせて、今週の映画始めてくれるのはありがたいー週末が早めに来た気分♫
どんなに償ってもあがいても・・・
これはコメディー映画だと思って楽しく見ていましたが、その勘違いがよけい反動を招いたのかもしれませんが、最後、いやーな思いになってしまいました。
質の悪い映像でしたが、出演者のパフォーマンスはいずれも素晴らしかったです。役所さんは当然誰よりも凄かったんですが、六角さんはじめ全脇の面々も大変面白かったです。ケーキを囲んだささやかなパーティーなんて、最高に面白かったです。
大いに笑いナチュラルに泣けたのに、わざわざ泣かそうとしなくても・・・と思ったんですが、泣かそうとしたのではなく結局現実世界はこうなんだと示したかっただけなのかなーと邪推するところなんですけれど、作り話くらい大きな希望を持たせてもねーなんて思ってしまいました。
還る場所と皮肉
個人評価:3.9
それぞれの還る場所を描いていると感じた。
裏社会にいた人間は社会から徐々に弾き出される。それでも温かく受け入れてくれるのは、仁義を固く守る事を教えられる反社会のはずの世界。そして無条件で迎えてくれるのは母であるはずだった。母を知らない三上にとって、母を感じる他者の温かさに触れるシーンは涙を誘う。
本作のタイトルは社会に対して皮肉たっぷりの意味が込められていると感じ、見上げる空にしか救いはない。
シャバには我慢しかない。キムラ緑子さんが放った言葉が脳裏にいつまでも残る。
三上は広い空を見上げ何を想ったのだろう。
エンドロールですぐに立ち上がれない
綾野剛の「ヤクザと家族」と一緒で、現状の反社(元反社)にとって住みにくい世の中になった事がテーマである。一生懸命カタギの生活に奮闘する直向きな主人公に微笑む場面がちらほら!終盤にやってきた幸せ、その後。。。エンドロールですぐに立ち上がる事が出来ず、一番最後にスクリーンを後にした。それぐらいに、久々に余韻に浸るほどグッときた映画である。
この薄汚れたすばらしき世界
我々の住むこのすばらしき世界には、たくさんの鳥が居ますが、皆一様に灰色(グレー)である。
そこへ、三上と言う一羽の白い鳥が舞い込んでくる。この白い鳥は正しいと思ったことは主張してやまない正義の鳥でした。
しかしこのすばらしき世界は見て見ぬふりや不正義でも、のうのうとして生きていられる世界で、三上は何とか、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、このすばらしき世界で生きていこうと懸命に努力をするのですが・・・
ある日、我慢の無理が祟り、三上は天に召されてしまいます。
所詮、彼はこの薄汚れたすばらしき世界にはなじめなかったのでした。
今更ながら、このすばらしき世界で曲がりなりにも長年生きている自分に涙が出ました。
【身分帳】を渡した三上の思いとは。
西川監督作品で初出演となる役所広司さんの抜擢に期待をして、どんな作品なのだろうかと期待していたのもあるが、何かグッとくるシーンをもっと丁寧に描いて欲しかった、何よりそれぞれの登場人物に感情移入するような演出が足りない気がして不完全燃焼という印象です。
今までの西川監督作品はオリジナル脚本で、今回は原作【身分帳】を基に脚本化した作品とあるのか、監督自身もディテールをどこまで出していいのか悩まれたのでは。
以前、宮藤官九郎さんのラジオに監督が出演されていた時に、この『身分帳』という本来では世に出ないもの…という唯一無二のネタを、なんでこの三上が書き写したのか…という背景があれば、更生しようと奮闘する三上本人の生き様や、周りの優しさに共感できたのかもしれません。
…とは言っても、原作を崩さず脚本化するのは大変だし、映画を制作する努力は作った者しかわからないわけで、一視聴者が生意気に言うのは違うと思いますが。
また機会があれば2回目を観てみようと思います。
しあわせとは何か
人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の生きづらさを細かい所まで描いています。
真面目に働く意思があり、まっとうに暮らしたいと思う人にもっと寄り添える社会であってほしいし、自身への戒めにもなりました。
なぜなら生きづらさは誰もが多少なりとも抱えてるものだからです。
監督が細やかな方で、丁寧に撮ってるんだなぁと思いました。
観ているうちに、三上の親戚になった気分になり、ところどころハラハラさせられ、
最後まで彼の行く末を案じてしまうのは、
演じたのが役所広司さんだったからでしょうか。愛おしく思えました。
仲野太賀さんは自然に「普通の人」を演じられる稀少な役者さんだと思っているのですが、今後もますます楽しみです。
考えさせられるところもあり、
心がゆさぶられるところもあり、
総じてすばらしい映画だと思いました。
予想どおり役所広司だけに安定感抜群、手堅い。
今日本の役者で一番安定していると思われる役所広司。役も選べるだろね。
監督の力もあるだろうけど。安定感抜群。あとどうでもいいけどこのパンフレット、脚本ついてて結構豪華というよりボリューミーすぎ。値段相応ではあります。
暴力的な犯罪者だが、根は悪人になりきっていない真面目で真っ直ぐな面もある人間。
刑務所出所して、身元引受人の弁護士と、最初は冷淡だった生活保護担当の役人、スーパー経営の町内会長、
そして狂言回しのテレビ製作会社を辞めた作家志望の青年
それぞれに支えられつつ、何とか自立しようと悪戦苦闘
同時期上映で少しテーマがかぶる「ヤクザと家族」と違い、この主人公の周囲の社会は前科者にそれほど冷淡ではない。
主人公の根は悪くない性格を察して、皆応援してくれる。
途中、主人公もヤケになって元の暴力団の組長のところに戻ったりするが、暴対法の影響かそこに居場所がなかったのは「ヤクザと家族」と同じ。
悪戦苦闘しつつ介護の時間給職員になり、何とか堪えどころも堪えてめでたしめでたし。
東京タワーを中心とした俯瞰から、主人公の住んでいると思われる下町足立区あたりに近いスカイツリーの背景へ
主人公もだんだん社会に馴染んでいく。
まあ元ヤクザはこういう根は真面目な人間、ただし生育環境、この映画の場合、母親が施設に預けるのだけれど、この生育環境が故に軌道を外れてしまった人間が、実際は半分くらいはいるんだろねぇ。それくらい両親の愛情、特に母親の愛情は重要だよなぁ。
それに確かに再犯率は高いけど、堪えるところは堪えて、馴染むべきところは馴染んで、周囲と繋がりを気づいていくことが重要なんだろねぇ。
なんか暖かい、世の中捨てたもんじゃないと思わせる映画。これは監督の力量だろうけど、飽きないし、ストーリー展開も容易で快適。ぜひオススメの作品。大人なら万人受けするタイプ。実社会もこのとおりだといいんだけど。主人公に感情移入できること間違いなし。
ただ①長澤まさみ演じるプロデューサーの言「喧嘩仲裁して止めるか、カメラ回し続けるか」は大正論。映画とは言えなんで狂言回しの青年、その場から逃げるか意味不明?
②昔デカい車乗り回していた人間は服役でブランクあっても、歳とってもあれ程教習所レベルで運転ヘタクソになることはありえない。ただし上級国民と呼ばれるクソジジイは除くけど。
何はともあれ、疲れないし佳作、人間の繋がりって重要だよなぁ。あと当たり前に思ってしまう「仕事がある」ことのありがたみ感じました。個人的に。
すばらしき世界とはなんだったのか
殺人で服役した男が出所後に体験した社会のお話
幼い頃より問題行動を繰り返し力で生きてきた三上でも社会に出ればお金のないただの人。生活保護を受けながらも自立を模索するのだけれど…
感情論でいえば三上の言うことも理解できるが物事にはルールがある。それが守れなかったからこその現在なのだろうが三上にはそれが理解できない
生きるために罪は犯したが悪人ではないのだろうとなんとなくはわかるけど短絡的で粗暴な性格から手を差し伸べてくれる人達に背を向けて孤立していく姿が悲しかった
それでもなんとか社会に復帰してみたのはいいけれど社会に馴染むために必要だったのは自分を押し殺すこと
それでも生きていればよいことだってある
自分を押し殺した先にみた景色は
すばらしい世界だったのだろうか
それがすごく気になりました
心に何かが残った映画です
最後に一言
元気の出るクスリいれますか?と言う姐さんが異様に色っぽくてソープの場面よりドキドキいたしました(ハァハァ)
暗闇で育った無垢な天使と、理性の世界で窮屈に生きる人間たち
この映画は、私が映画館に足を運ぶようになったここ2年で、
一番のお気に入りになりました。
あっ、でも、そんなに言うほどいろいろ観てないや(汗
ドキュメンタリーっぽい映画だなと思いながら観ていましたが、
なるほど、元ネタの小説は実在の人物をモデルにしているようで、
当然、エピソードも事実が基になっているでしょうから
そう感じるのも納得できました。
それに加えて、俳優さんもよかったですね。
役所広司さんや仲野太賀さんはもちろんのこと、
梶芽衣子さんや北村有起哉さん、・・・いますよ、こういう人
橋本功さんや六角精児さん、・・・適役とはこのこと
白竜さんやキムラ緑子さん、・・・本職でしょ?この人たち
と、ここまでは想定の範囲内としても、
施設の職員さんとか子供たちまでも、
名わき役ならぬ、名ちょい役として大貢献しているのには驚きました。
映画の内容については、ぜひ劇場でということで触れませんが、
あまり社会風刺の部分が誇張されると
「あなたもそう思いませんか?」と同調を強いられている気がして
ちょっと冷めるのですが、この映画にそれは感じませんでした。
ただ、ラスト3秒間、
「あなたの頭の上にはどういう空が広がっていますか?」と
問いかけられているような気がして、
それはつまり、心の内なる世界のことであり
「生きづらい世の中でも、『有り難い』ことに気付けば幸せを感じられるでしょ」と
諭されているような、そんな気持ちになりました。
人生最後の瞬間に「ありがとう」って思えたらいいですね。
『体温』
「この心地よさはなんだろう…」
映画を観ていて、不意に”観ている自分を客体視”してしまう瞬間がある
ふつうに言えば”冷める”という感覚に近い…
ある温度を持った記憶が、スクリーンという物質に戻る瞬間
なぜだろう?
過剰な演出であったり、一瞬の雑な”つなぎ”であったり、不要な音楽であったり
この作品はちがう
丁寧なひとを、丁寧に演じ、丁寧に撮った
幸せな時間とともに 三上という ひとの体温が、いつまでも私の中に残り続けている
追記:パンフレットがとても素敵です♥️
観賞のお供に是非(^-^)/
心締め付けられる、真っ直ぐな男の生きざま
監督・脚本 西川美和 の時点で見るしかないお話だったけれど、役所広司の表情、演技が相まってなんとも感動的なストーリーに仕上がっていた。
役所広司が刑務所から出て、堅気に戻っていこうとする中で、本人のまっすぐなところ、キュートなところ、なんとも憎めない前科者の姿がそこにあった。
「大事なことはだれかと繋がりをもって、社会から孤立しないこと」
「お産の時の話、聞いたことあるか」
「人間はいい加減に生きている。」
役所さんのセリフ、役所さんに向けられたセリフ、観客に刺さるセリフが非常に多い。
時折、昔のことを思い出し、行動に起こしたり、起こしそうになったり、フラッシュバックした時のローアングルからの表情が何とも言えないし、映画が進むにつれてその表情が変化していくのが素晴らしく、後半は涙なしには見れなかった。
仲野太賀とのやり取りは家族のそれに見えて来るし、六角さんとのやり取りは何とかこの人を理解しよう、手助けしてあげようという気持ちがひしひしと伝わってきた。何とも素敵な人間関係。
人との繋がりが大切なヤクザの世界から刑務所というゼロの世界に身を置き、
社会に戻ってもヤクザの繋がりを断ち切って、普通の生活で人との繋がりの大切さ、
生きづらさを学んでいくまっすぐな男の姿は、スクリーンを通して120%伝わった。
これが演じるということか。と再認識させられる作品。
ラストの、逃げることの大切さを役所広司がかみしめるシーン、後ろに見える仲野太賀の表情もまた良かったな。
広い空の下の狭い世界で見つけた人の温かさ
今日も空は広い。世界が狭くなっても、人の心が小さくなっても。それでも優しく手を差し伸べてくれる人もきっといて、特に知らない同士の関係 = 赤の他人同然だったときはそりゃ無理解に冷たく感じられても、時間をかけて分かりあえば。西川監督の師匠・是枝さんより分かりやすい起伏の付け方に、時折コミカルさも交えた語り口(ex.『夢売るふたり』)。タイトルはなにも楽観的に世界はお花畑だとか言うわけじゃない。むしろ甘くない現実をしっかりと見据えた上で、それでもまだ微かな希望や人間の良心を謳う。住みにくい世界の隅っこから。挫折、妥協の連続に夢破れ、平伏すのか。気まずい部分にまで目を向け、明確な答えを与えてはくれないけど、意味があって他人事じゃない。
「今度ばっかりはカタギぞ」普通になる --- "日本映画界のデ・ニーロ(くらい名作に欠かすことのできない存在/演じる仕事など作品毎の様変わりカメレオンっぷり)"と勝手に呼んでいるベテラン役所広司さんの、語弊を恐れずに言ってしまえばもはや安定なほど、べらぼうに素晴らしい名演技。太賀は去年の『泣く子はいねぇが』に続き、僕の大好きな分福作品。本当に嫉妬。けど、本当にいい役者なんだよな〜しかも若干あの年齢で。太賀同様、『マザー』に続き映画ファンから支持されるような作品が(珍しく)続いた長澤まさみは、衣装も相まって胡散臭いTVマン感。思ったより出番は少なかったけど、『ナイトクローラー』に出ていてもおかしくないくらい。
上述したような要素・側面から脇を固める面子も豪華な本作。特に個人的にはやはり北村有起哉、本作でも最高。『ヤクザと家族』と本作と、今年すでに一年を代表しそうな作品に立て続けに出たばかりか、どっちも反社会的勢力からの更生と類似した部分を持った作品という点も興味深い。去年も『浅田家!』、『本気のしるし』(面白いことにこれもヤクザしかも笑える)とか良かったしな。キネマ旬報ベストテンとか何かの助演男優賞獲ってほしい。橋爪さんは皆のおじいちゃん。
待ちに待った西川美和さん待望の新作、遂に見た!けど予告の使い所、本編終盤の重要なところ見せすぎだった。…から、「まだあのシーン見てないな」とか少し頭よぎっちゃった。
P.S. スクリーンで誰かずっと紙切れ(半券?)をクルクルクシャクシャするような音を立てていて、発狂寸前ものすごく苛立ってしまい、レビュー内で引用したセリフ「今度ばっかりはカタギぞぉ」を心の中で唱えてどうにか抑えたけど、それと同時に『孤狼の血』の「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」がせめぎ合っていた。
生きにくいが空は今日も広い
良い映画でしたー。本当に面白い映画。
まず、役所広司さんについて。役所広司さんがいなければここまでの傑作にはならなかったでしょう。本当に演技がお上手だしアクションも動けていますし。役所広司さん以外の方も全員演技が上手です。全員キャラにぴったりでした。
そしてストーリーも良き。まっすぐな人間は潰れていくって所は「ヤクザと家族」と同じでしたね。でも本作はヤクザに限らず一般ピーポーの私のような者でもちょっとおかしいんじゃないかと感じたことあることを描いているので共感しやすかったです。
この世界はいきづらくあたたかいってポスターに書いてありましたがこの映画を見ると本当にその通りだと感じると思います。
最後にストーリーには何も関係ないですが女性の乳首がおもいっきり写っていたのは驚きでした。一応全年齢対象よねこれ。親子づれで行くと気まずくなるのではないでしょうか。親子で行く映画なのかは分かりませんが。
すごくいい映画です。まだ今年は2ヶ月程度しかたっていませんが今年で一番の映画でした。ぜひご覧ください。
映画は演出を堪能するものなんだなと実感
普通じゃない男が普通になる、なれるのか、というお話。
ここのところ見てた邦画の中では圧倒的にいい。逆にこれをみると、やはり映画の醍醐味は各パートの総合力なんだな、と思う。改めて監督力の光る映画だな、と。
笠松則通さんのカメラがいい。ここ、というところに感情とともに入り込む。音楽もいいところで鳴る。過度ではない皆寄り添って世界を作り上げてる。
俳優陣も豪華。同じように丁寧にキャスティングされている。正直それほど興味を持てる題材でないように思ってたけど、こうどっしりじっくり描かれては見惚れてしまう。役所広司がいちいちおかしい。笑えると言うことでなく、チャーミングなのだ。切り返した時の顔が予想以上で、そんな顔されたら、というような表情。娑婆に出て出会う人々。男が疑うよりも裏はみんな優しく、冷たい顔の裏にこういった男に向ける希望みたいなものを携えていて、それが見えた時のリアクションが皆いい。六角精児が特にいい。仕事に就いた、ってことがこれほど歓喜に満ちたものになるなんて。物語が終わる時、タイトルが響く。束の間の夢のような娑婆の世界。儚い夢のような世界。取り込まれなかった最後の洗濯物を見た時、あっ、と思える演出。うまいなあ、と。
現代日本映画界を代表する名優役所広司も私にとってはどの映画を観ても先ず思うのは“顔デカ!”。今回は顔のデカさが気にならないくらい見事な映画だったのにラストの落ちの付け方が不満。で、減点。
①残念ながら(?)塀の中に入ったことのない身としては、冒頭の旭川刑務所のシーンが興味深い。令和の刑務所は大分キレイになってるんだね。②前科のある人間が更正する或いは社会に受け入れられることの難しさを描いた映画は古今東西いくらでもある。しかも元ヤクザ者とあっては困難さは倍返し(言葉の使い方間違ってます…わかってます)。③しかしこの映画が一頭抜きん出ているのはその映画としての見事さ。西川美和という監督の作品は初めて観たが、こんな監督のいる日本映画界も捨てたものではない。主人公が堅気の世界での生きずらさに元の世界へ戻る誘惑に駆られる心象シーンとして登場する東京の夜景の美しさ。あんな美しい東京の夜景シーンは初めて観た。④それだけにラストの付け方はもっと他にあったのではないかと思えて残念。最早堅気だけでなくヤクザにとっても生き辛くなっている現代という閉塞感のある時代にとってもっと夢のあるラストでも良かったのではと思う。どうしても似たような結末を迎える過去の映画『ミスター・グッドバーを探して』や『シングルマン』等の既視感が邪魔する。⑤女優陣はおしなべて好演。(勿論、男優も好演ですよ。特に六角精児は役所広司を向こうに回して一歩も退いていない。)年取ってから露出が増えてきた梶芽衣子はどうしても過去の役柄から暗いイメージがつきまとうが、ここでは珍しく明るい役でそれもなかなか宜しい。1シーンのみの出番ながらも免許証センターの窓口の婦警役の女優も役所広司に一歩も退かず好演。しかしなんといっても短い出番ながら鮮やかな印象を残すのはキムラ緑子。警察の手入れを受ける兄貴分の元に駆け寄ろうとする役所広司を引き止め堅気の世界に押し返す「空は広いって言うよ」は、この映画屈指の名台詞。安田成美も老けたが女優(演技者)の顔になっている。⑥役所広司の更正を支えようとする人々は基本的に善意の人々だ。それでも個人個人、生活や仕事の上でサポートに限界がある点もきっちり描いていているのがリアルで好ましい。ラスト近くの介護施設の職員たちの心ない言動も彼らを非難するのではなく自分達の鏡と捉えるべきだ。どこかで普通と普通でないものを分けていて自分を普通に位置付けてそれ以外を見下していないか考えるべきだ。それでも自分が正しいと思える人にはもう掛ける言葉もないけど。⑦お爺さんを溺れさせかけた障害のある介護施設の職員が台風が来るなか摘んできたコスモスを役所広司に渡すシーンは役所広司ならずとも涙が出てくる。でも、指示されたわけでもないし、摘むということは花の命を絶つということだから、たとえ台風で散ってもそのまま生かしておいてあげた方が良かったのではないか。分からない。ただ最後生き絶えた役所広司がその花を握り締めていたところに監督のメッセージがあったようにも感じる。かといって、この落ちの付け方に納得しているわけではないけれど。
見るべき
前科のある者の生きづらさを描く物語だが、やがて主人公の純粋さに心惹かれてゆく。主人公が自分を押し殺して順応しようとした「すばらしき世界」で、私達は自分の価値観だけで世界を見て、自分だけを守って、本当は違うと知りつつ生きている・・・しかしそんな世界でも主人公を支えてくれる人々もいる。空の広い世界を!
すばらしい作品!
久々に感動しました。
この若い女性監督に驚きました。
脚本も素晴らしい!邦画ではいつも脚本の酷さにウンザリしていました。
人生って百人いたら百通りなんだと改めて思いましたし
登場人物たちの立ち位置を見事に表現したおかげで
各役者の演技も鼻につかない・・・日本の役者が素晴らしいと思えるのは、ブラックレイン以来でした。
やはり監督が悪いと役者も生きないんですね。
映画で涙したのはフォレストガンプ以来でしょうか・・・
怨み節から見上げてごらん・・へ
時代は変わる。
まさか梶さんが、夜空の星を~って唄いあげる姿(ステキです)
映画は西川監督の珍しい原作物。しかし社会に対する切り口は鋭くて、刑余者の社会復帰・アンガーマネジメント・生活保護行政の問題・マスメディアについて等々あげたらきりなく出てくるのだが、それぞれの当事者が真摯に向かいあっているのでとても爽やかな気分にはなれる。
最後は残念な結末で、だが俯瞰ショットで残された者たちへ凛々しく記憶されることを望みながら観おわった。
全455件中、421~440件目を表示