すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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本編の"長澤まさみ的な人間"への問題提起。
女性監督と聞いて驚きを隠せない極めて男性的な社会派映画である。
はじめに、ここ数年見た邦画の中で間違いなくトップクラスの質量と品質だったと述べさせて頂きたい。ただ蛇足を感じたので本評価とした。
普段生活していて気付く方は気付く違和感をクローズアップしたドキュメンタリーだ。
役所の生き方を追うものであるが、その周りの関係者が私達身の回りの社会をリアルに表現できている。
特にディレクター(長澤まさみ)だ。彼女の振る舞いに問題を感じるか感じないかでこの作品への想いは変わってくるだろう。あなたは長澤的な振る舞いをしていないだろうか。
是非、本編をご覧になられた後、心を澄ませ自分の社会における立ち位置をご確認頂きたいものだ。
役所広司をはじめ、出演された方々全ての演技力には脱帽する。
(アイドルや無駄な演出を加えたがる邦画の残念な部分を取り除けたことにも)
男性的な映画と云うのは一般的に男性に好まれるとされる演出が多いためである。
一部内容を覆うとはいえ、濡れ場シーンで述べられた内容は本テーマから逸れ導入した理由に混乱する。
導入といった観点から
「アクション、笑い、泣き、濡れ場、社会問題」
と詰め込み過ぎが若干感じられた。
最後も実に蛇足を感じた。
批判的な意見を全面に述べたい訳でもなく、実に素晴らしい社会派の作品だとお伝えしたい。
短気は損気
子どもが大人になるまでの成長の話
すばらしい作品でした。
反社会的勢力にいた男が刑務所から出ても真っ当な人生を歩むのは難しい。
いくら反省して罪を償ったとしても、社会が受け入れてくれない。
仕事につくこと生活保護からの脱却、レールに沿った生き方をするのがいかに困難か切実に訴えていましたね。
前半は少しコメディ風でこのまま続いたら駄作になるだろうと思いましたが、中盤からしっかりとトーンを落としてシリアスになり、作品の伝えたいメッセージがズシズシと心に響きました。
中野太賀の正論ばかりの意気地なし野郎
北村有起哉の頭の固い役所職員
六角精児の意地悪そうな店長
どれもむかつきました、そして上手でした。
何より味方になってくれてからはめちゃくちゃいい人達、演技の使い分けか脚本の技か豹変するのではなく自然に打ち解ける感じがよかったです。
人は見かけによらないのですね、深く知りもしないのに互いに嫌なレッテルを張り合っている。
自分もそうなってはいないかとハッとさせられた。偏見はよくないですね。
よくぞ入れたと思ったシーン
終盤の介護施設でのモノマネシーン、あれは今の映画じゃなかなか見れないと思う。
そして主人公の「似てますね」の作り笑い。
耐える事を覚え大人になったと共に元の率直さや正直な少年の心を殺した瞬間でとても心を揺さぶられました。
「そんな生き方するくらいな、死んでけっこう」とまで言った男の成長と落胆、とってもいい表情と場面です。
この作品を通して、日本はレールから外れた人に厳しいが救いを一応用意している。
もし自分がレールから逸れてしまっても希望があるのだと教えてもらえました。
「ヤクザと家族」でもいかに社会復帰が大変か、生き方を変えるのが辛いかを映し出していたが本作も負けず劣らず厳しさと救いがあるいい映画でした。
主人公と役所職員のやりとりを見ていてなんか既視感があるなと思っていたのだが
想田和弘監督のドキュメンタリー「精神」か「精神0」のどちらかのラストに出てくるスクーターのおっちゃんだ。
全然似てないのだけれど、多分あのおっちゃんはこの物語の主人公と似た立場なのではないかと勝手に想像してしまった。
気になる方は「精神」「精神0」をご覧ください、とっても興味深く楽しい作品です。
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劇中セリフより
「空が広いらしいですよ」
広い空を見るために私たちは窮屈なルールに縛られている。
でもその空を見る価値は確かに有る。
うーーん
都度都度この切れやすい人がどうなるんだろう?と思いながら観ていたけれど、え〜、最後があんな形で、、という感じ。
パッとしない。
一度×が付いた人は生きにくい世の中だけど、それでも思ってくれる人はいるよという内容の作品なんだろうけど、、。
娑婆は我慢の連続ですよ。でも、空は広いち言います。
原作既読。予告編はややキャッチ―すぎる印象があった。しかし本編は、硬派で無味乾燥気味のあの小説から、主人公の人物像をみごとに立ちあげている。前半、監督の得意とする"感情を振り回す"技が弱いな、と感じていた。いや、案じていた。これじゃ物足りない、と。
しかし。後半、みごとにやられますよ、いつものように。それも、怒鳴ったり、泣きじゃくったりとかのシーンじゃなく、三上の人が変わったような優しいまなざしを目の前にした瞬間に、ぼろっと。人は変われるのだ、と。いや、そもそも思い込みで人を仕分けしちゃいかんのだ、と。もともと真っすぐな人だったじゃないか、ただ筋を曲げることが嫌だっただけだ、と。そして、そんな三上がようやくそのコツをつかんだ矢先・・・。そう原作でもそうだったわ、忘れていた。そうか、津乃田は佐木隆三か。ある意味、この映画は佐木隆三へのレクイエムだ。
愚痴をこぼすのは簡単。世の中、温かい人はちゃんといるよ。だけど、相変わらず冷たい人だってどこにでもいるよ。大事なのは、自分自身の態度次第。それで自分の周りをどうにだってできるよ、世知辛い世間にだって、"すばらしき世界"にだって。
普通とはなにか
「白河の清きに魚も棲みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」
もちろん本作とはなんの関係もない政治の改革と腐敗を比較した江戸時代の詩ですが、なぜか頭に浮かびました。
濁った沼で生きてきた男にとって清らかな清流は居心地が悪く生きづらかった、感情を押し殺し息を潜めて生きていく事が正解なのか、間違っているのは自分なのか…
人懐っこい笑顔で周囲の人間を惹きつけながらも怒りの抑制が効かない刑務所帰りの元ヤクザを役所広司が完璧に演じている、改めて(今更だけど)凄い役者だなと。
社会に溶け込む事の意味
二回目の鑑賞
この原作の映像化、その心境が分かる気でいる。反社でも半グレでも無い人間も、“彼は私だ”との思いで、心握りしめられたカットが幾多あるだろう。その切り取る視点のセンスに惚れ込んで以来、西川美和監督の新作を待ち侘びながら日々を過ごしているとは、決して過言では無い思いだ。時代に即した、社会の片隅で人知れず耐える生活者の心理を投影した、「映画だから問いかけられる人の葛藤と温もり」を、絶えず根底に宿した仕事に共感を重ねてきたからだ。今作でも、都市に内在する新旧の価値観と普遍性、淘汰する事だけで正常は測れない社会の真相。意図的に差込まれるスカイツリーと東京タワーの対比には、その様な心理も掻き立てられる。外の“空は広い”と言う…重ねる辛抱こそ堅気の条件とも人は言う。彼は、最後に耐え抜き、触れた優しさに涙し、希望を抱いた。社会への順応と約束を胸に、嵐を楽しむ筈だった。やがて、心身は耐え切れず八切れとなり嵐は去った… この一連の描写に、社会の一端が濃く注ぎ込まれていると受け止めた。あぁそれでも…無頼で愚直な人生の最期の幕切れには、側で悲しみ俯く人間達が囲んでいた。
介護士の芝居がリアルすぎて…
いつの時代もマイノリティの援護や擁護をする映画があり、それは映画の一つの役割だと思う。LGBTや障害者に焦点を当てた映画も数多く作られてきた。この映画の三上という男もマイノリティには違いないが、彼の場合、殺人という罪を犯しており、手放しで擁護していい相手とは言えない。
それなら劇中で三上が社会から妻弾かれる様は、全て自己責任で妥当であると片付けていいのかというと、、、
社会で生きていくには、矛盾に気付かないフリをするような小器用さが必要で、三上はそれに抗う。三上が小器用な人間に向ける軽蔑の目は、自分たち観客の心をえぐってくる。
でも、小器用に生きることは悪いことじゃない。ただ、その大多数の小器用な人間の枠から外れた人はどこで幸せになれば良いのだろう。
映画を値段以上に楽しむコツは、120分を終えた後も、頭と心で吟味し尽くすことにあると思います。
役所広司、最高でした。。
【希望のある世界】
この作品は、佐木隆三さんの「身分帳」が原作で、三上正夫の人物像など原作のイメージ通りだが、ストーリーは結構異なるし、補遺の「行路病死人」の要素も加えた物語となっている。
そして、この身分帳には実際のモデルがいる。
西川美和さんが、この文庫「身分帳」の復刊にあたり寄稿を寄せ、このモデルの方が存命の頃、ドラマ化の話が出たことがあって、佐木さんが、俳優は誰がいいかと聞いたら、高倉健さんと答えたらしいと、そのエピソードを紹介していた。
そして、今回の映画化で、高倉健さんも既に亡くなっているが、西川美和さんは、役所広司さんという随一のキャスティングをしたと胸を張っていた。
今回の作品は、西川美和さんの「ゆれる」や「永い言い訳」が、僕の心の闇や弱さを、キュッとつまみ出すような感覚を覚えたのに対して、アウトサイダーに対して社会がどう向き合うのかを考えさせられる。
(以下、ネタバレ)
物語は、出所後の三上正夫が、自分の置かれた生活保護を受けているという惨めな気持ちや、なかなか入り込めない社会システム・好奇の目に対する怒り、弱者に寄り添おうとする正義から生まれる暴力で解決しようとする衝動と向き合いながら、周囲の協力を徐々に取り付け、社会に溶け込んでいく様が描かれる。
ヤクザ稼業の衰退を目の当たりにし、自分の選択肢が如何に少ないのかを感じ取ったり、幼少期の辛い思い出に触れ泣き崩れたりする様子も、内面の微妙な変化をよく伝えていると思うし、ライターの津乃田と、スーパー店長の松本、ケースワーカー井口との交流が三上正夫の背中を押す様は、胸が熱くなる。
そして、介護施設で疎外されたり、イジメにあっている同僚が、忍耐強く、前を向こうとする姿勢は、三上正夫の生きる最大のヒントになったはずだ。
コスモスの花束。
久美子からの電話。
三上正夫は確信したはずだ。
自分もやっていけると。
帰路、雨の中、一生懸命漕ぐ自転車のペダル。
エンディングは悲しい。
だが、三上が未来を見ながら、こときれたのだとしたら、それは救いだ。
三上正夫の見たのが、「すばらしき世界」だったことを願わずにはいられない。
このモデルになった方も、故郷の福岡に帰ったものの、アパートで病死している。
自然死、孤独死だった。
欧州の一部の国では、再犯を防ぐ目的もあって、収監中の服役者を、完全に塀の中に閉じ込めるのではなく、日中は、受け入れてくれる施設や会社で働く機会を予め与え、社会復帰をスムーズにすることと、社会の側にも出所した人間を受け入れやすくさせるという試みがポピュラーになってきているという話を聞いたことがある。
日本でも小規模だが試みられているはずだ。
暴対法の適用が厳格になったことを考えると、アウトサイダーの更生の方法にも柔軟性や多様性が確保されるべきだと思うし、行政の側が出所後の生活が成り立つようにより積極的に関わる必要性があるのではないかと考える。
そして、それこそ再犯の減少に繋がるのではないか。
アウトサイダーの社会復帰が容易になるのではないのかと思ったりする。
西川美和さんは、「身分帳」で「山川一」だった主人公を「三上正夫」とした動機も語っていた。
もし、興味のある人は、復刊した原作も読んでみて下さい。
六角精児の凄さについて考えてみた
才能と美貌に恵まれた西川監督の最新作。ポスターを観ただけで傑作の予感。アニメと漫画の実写化と子供騙しの恋愛映画しかない?日本映画界の希望の星✨しかし、役所広司は上手すぎるのが欠点、いつ、ぶちギレて周りの、ある意味ごく普通の汚れた我々一般人に牙を向くのか緊張感が凄かった😬六角さんみたいな親友が欲しいなと心の底から思わせる最高の演技を見せつけた。ラストシーンは神目線で大空に上がっていく所が堪らない😭今は亡き名匠、今村昌平の[うなぎ]と韓国映画の[シークレットサンシャイン]を見直したくなるような、傑作しか作らない西川監督に拍手🍻
高倉健に見えました。
西川監督作なので、封切り初日に観にいきました。
とにかく、号泣しました、そして笑いました。
役所広司のいっちゃってる時の目つきが凄い、高倉健を彷彿とさせるような、凄い演技でした。
人の温かみがわかる、素晴らしい映画。
コロナでギスギスとしたこの世界も「すばらしい世界」なんだ。
劇中曲が不要
刑務所を出所した者の生きづらさを表現した
どちらかと言うと、ありきたりなストーリーで
構図も普通
間近で撮りたいのか
引きで撮りたいのか
俯瞰で撮りたいのか
あっちこっちしていて見づらい
最後も
凡庸な結末でした。
序盤の劇中曲を差し込む意味(センス?)が気になり
その後も免許試験場の時など
とにかく意味のない音楽が
作品の雰囲気に水を出しました。
西川美和版「時計じかけのオレンジ」
本編は煮え切らぬまま、対局にそれと同重量の題名を置き、その釣合いでテーマを浮き彫りにする作者の狙いは成功。
この題名を付した勇気は評すが、西川美和だからこそ婉曲ではないパンチを求めたくもなる。
「時計じかけのオレンジ」「ビッグ」などと題名を変えて噛み締めてみるのも楽しい。
福井コロナシネマワールドにて観賞。 今回、まさかの映画館一人占めで...
福井コロナシネマワールドにて観賞。
今回、まさかの映画館一人占めで大変贅沢な思いをしたのですが。
ここは、シネコンながら、儲からなそうな良作も上映してくれて、本当にありがたい。
福井に自称映画好きが何人いるか知らんが、何しとんねん。
西川監督ってだけで、とりあえず観に行けよ!
あとはネタばれ含みます。
主人公が周りの助けを受けて更正していく流れに、こいつは絶対裏切る(映画的にも)、とスキャンダラスな展開を期待している自分がいた。結局、私の凡庸な期待は裏切られるのだが。
最後、きっと彼は幸せを感じて…と思ったとき、歎異抄の「善人なおもて~」が頭に浮かんだ。
そして彼の社会復帰を手伝った人たちもまた、自分の中の悪や弱さを知っている人たちなのではと。
これは映画の中の世界で、現実は…と思ってしまうが、その現実を作っているのは、私を含めた一人一人なんだと。
同時期に上映中の「ヤクザと家族」と、多くの共通点がありながら、これほど観後感が違うとは。
監督の一作一作にかける情熱、力量を感じた。
私の場合、期待して観に行くと、たいてい失敗するのだけれど、西川監督の作品に期待するなと言うのが無理な話で、なおかつ、いつも期待を裏切らない。
次も楽しみだが、何年後か…
醜悪な世界
タイトルのすばらしき世界という言葉には、裏を返せば残酷で醜悪な世界というものがある、という監督の意図があるのかしらと思いました。
確かに、辛い経験があるから幸せをかみしめたり、普段優しくて穏やかな人ほど笑って人を刺したりするのかなあ、と。
以前西川監督のインタビューを読んだんですが、少数派である人間を描くことで社会の縮図が見えてくる、的なことをおっしゃっていたんですが、まさにこの映画では(これまでの西川監督の映画では?かしら)そこが見え隠れする。
そしてそういう視点を持って一つの作品を仕上げることが、すばらしきことなのでしょうね。
マイノリティってそこに意識集中するのって、私がこれまで意識的にも無意識的にもマジョリティの側に席を確保してきたからかもしれないけれど、ものすごく体力使うし、それが正しいのかスタミナが保たない(結局体力か。)。
撮影の笠松さんの画が安定感あり過ぎて、それがまたすばらしき世界というピンボケした世界で、ほんと世界ってすばらしくって美しくって、って錯覚させられて役所さんの演技に没入することができました。
最後が正直よくわからなかったんですよね。なんで監督はこういう結末にしたんだろう。誰か意味を教えてください。
#14 タイトルと真逆な世界
塀の外に出たかったのに実際出て見たら以前とは全く違う世界になっていて生きづらさを感じる主人公。
反社会勢力を世の中から排除しても、別の意味で他人を傷つける人はいなくならないし、そういう人たちは法律で縛ることもできない。
真っ直ぐな気持ちを持ちながら幼い頃に受けた心の傷のせいでまともな生き方が出来ない主人公は、一見平和で素晴らしく見える世界では生きていけないのだ。
西川監督作品はいつも社会に対する切り口が鋭いなあ。
あと役所広司さんの九州弁、もっと聞きたいなあ。
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