すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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三上の存在感が凄かった。オススメします。
佐木隆三の小説「身分帳」を原案にして舞台を原作から約35年後の現代に置き換え西川美和監督が役所広司を主役に
刑期を終えて出所した直情型の孤独な男の再出発と自立の困難さをリアルに描いた傑作です。
原作を先に読んでたので淡々と人間観察を続けた佐木隆三の小説をどうやって映像化するのか興味深かったです。
役所広司が見せる正義感が強い三上という人物が実在する人物のように生々しく感じました。
第56回シカゴ国際映画祭で作品が観客賞を、役所が最優秀演技賞を受賞したのも納得です。
舞台も私の育った荒川付近の下町の近くでしたので感情移入がしやすかったです。
とにかく主人公の周りで見守る登場人物の一人一人が親切で心優しいのに、身の回りの理不尽な出来事に怒りを抑える姿が心に響きます。
梶芽衣子、橋爪功、北村有起哉、六角精児はベテランの落ち着きを感じました。
テレビ局クルーの仲野太賀と長澤まさみの二人が三上の不器用な姿を更に浮きだたせます。
多くの年代層に見てもらいたいお勧め作品です。
原作佐木隆三
つまらなかったよ
期待して観てたから、なんだか、つまらなかったな~。演出がシリアスではなくコメディに感じたけど面白くないんだよな。シリアスなほど人間洞察も深くないしね。主人公がラストで死ぬけど、あざとい演技だわ!一番良かったのは知的障害者のアベさんだよな。予定調和なヤクザを主役に置くより、本当に生きづらさを感じているのは障害者のアベさんだもんな。社会が手をさしのべるべきなのは障害者かもね。今でも社会の障害扱いを受けてるもんね。ヤクザなんて好き勝手に生きてきただけだろ。楽しい人生じゃん、女と遊んでさ、ケンカも強いしさ、人殺しまでできるしさ、最高の人生だったよね。役所広司にとっては、素晴らしき世界だよ。本当にそれはわかった、皮肉じゃないよ。だけど、アベさんにとってはこの世界がどう映ってたのかな~。だけど、アベさんじゃ映画になんねぇ~もんな。ヤクザの役所広司なんて、格好いいじゃん。だからみんな感情移入しやくてさ、高評価になるわけだよね。まったく素晴らしき世界だよ。ありきたりだけどね~
すばらしき俳優陣
何が「すばらしき世界」
矛盾や理不尽さを思い知らされる
現代の日本という「すばらしき世界」
西川美和監督作品は恥ずかしながら1度も観た事が無く、イメージだけだと「音が少なくて静かな作品を作る人」といった感じ。
是枝裕和が「西川美和新章突入」と言っているので作風を変えたのかもしれないけど、思ってたよりもお茶目でリズミカルな作風だった。現代に適応出来ない役所広司の姿は笑えるし、最初の運転のシーンは思わず声が出た。
しかし、笑いというのはいとも簡単に涙に変換されてしまうもの。
現代に適応出来ない姿は時に暴力に変わり、時に苦悶に変わる。
役所広司という役者の感情七変化がなんともリアルで心に刺さるものがある。
個人的な事だけど、役所広司が現代に戸惑っている姿は父を見ているようだった。
だから「あー分かる」と「やっぱりそうなっちゃうのか」などと共感してしまった。
それほど演技が自然体。
「演じていた」ではなく「そこにいた」
ラストはなんとも呆気ないものだが、それこそが人間であり、監督もおそらくあのラストへ向けて脚本を書いただろう。最後に提示されるのは「すばらしき世界」のみ。
自分はこれを"現代日本を皮肉った「すばらしき世界」"と解釈した。
正義を貫けば弾かれることを「すばらしき世界」と皮肉りそのうえで、まだ捨てたもんじゃないひっそりと日々を「すばらしき世界」と表現した。
西川美和は、役所広司は、世界に何を見出しているのか。是非とも聞いてみたい。
西川さんの原点となった、西口彰のドラマ(復讐するは我にあり)に出て...
西川さんの原点となった、西口彰のドラマ(復讐するは我にあり)に出てたときの、役所さんを見たいなと思った。役所さんは、孤狼の血の演技がよくて、黒沢清の映画のようなインテリの役のイメージが強いけど、暴力的な役が十分やれる、得体のしれない人でもあるから、西口の役はやれたと思う。今村-尾崎の尾崎とは違う人間の複雑さは出せたはずだけど、今回の西川さんは、いつもよりは少し狭めた感じ。と同時に、でも、障害者との関係の描きかたはよくて、今の世の中のより過酷な一面は見せてるかと。まさみちゃんは、暴力的で、わけのわからなさを出してるところが、マザーの映画なんかよりずっとよかった。
あとは、かじめいこさんとか(何たってヤクザ映画はお得意)、キムラ緑子さんとかよかった。
やりなおしは、きっとできるはず。
今年32本目(合計99本目)。
さて、こちらの映画。同じような法律系ジャンルの「私は確信する」の次に見ました。
この映画に出てくる方は、みなさん温かい方ばかりです。逆に暖かくない人を探すほうが難しいでしょうね。
さて、「すばらしい世界」と書くと、逆に「すばらしくない世界」換言すれば「良くない世界」はどこなのか??という気もします。それについては、また後述で。
長く収容されていた場合の復帰は文化の違いにもなれず苦労することが多いと言われます(だから、何度か職業を変えている)。それでも、ここはこうなんだよ、ああなんだよ、と教えてもらえれば誰だって理解できます。言わなきゃ理解できないのです。
そしてこの映画にも出てきますが、元受刑者の方などを了承した上で雇っている企業というのは制度として実在するようです(協力雇用主制度、というそうです)。これも、不自由な刑務所では三食は確保されているけど、いざ外に出ると何もないという悲劇(もっとも、ある程度までは保護してもらえるが、最終最後はこのように就職にむつびけられます)があるからで、塀の中から出てくる色々な属性を持った方の頼りある色々な制度の1つです。
こうした部分についてもごくごくちらっと触れている点、ここは大きいかなと思いました。
良い協力雇用主が見つかると再犯率が下がることは当然目に見えているので(極論、食べていけるのに最低限のお金があるかどうか、という論点につきる。普通の場合は。精神疾患的にパチンコ狂とかというのでない限り)、そこさえクリアできれば、他に色々ハードルはありますが、大きなハードルをひとつこえられます。
映画の終わりの部分(エンドに持っていく収束の部分)についてはいろいろな意見があろうと思います。が、それでも原作ありではないとはしてでも、ある事前をモチーフにした、という以上、あることないこと勝手にあれこれ付け加えるとおかしくなるので、そこは許容範囲内かな、と思います
▼ 「主人公目線での」「すばらしくない世界」は…?(あくまで一つの仮説)
・ まぁ、年齢がもう年齢なのできついですが、刑務所を満了して出たら出たでいろんな関係者の人が集まって大騒ぎ、そしてもう働くのも難しいでしょうから、今風にいうとオレオレ詐欺とか「知恵でできること」をやらせたり、教授させられたりというパターン。まぁ、時間の問題でまた捕まるだけですけどね…。そういう、「出所者は、もうそういう目でしか見てくれない、またうまいように利用する人「しか」出てこない」というのは一つの「すばらしくない世界」かなと思いました。
さて、加点減点ですが、減点は特にないものの加点は0.3として5.3としました。
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+0.3 このような長期収容者が塀の外に出るときというのは、そこからもう生活が無茶苦茶になって、行政も面倒なので深入りで介入もせず、最低限やることやったらはいあとはよろしくーみたいな感じで投げちゃうってのは、やっぱりあるようです(いわゆる高齢者の万引きなど。最近は万引きが病気である(クレプトマニア)ことが認知されているので、あまりにも様態がひどい場合は通院を勧めるなど、行政も支援民間も頑張っているが、1回目であまりそれも疑われない場合、驚くほど手抜きな対応になるわけですね。
ただ、今回はこう、「この人には二度とまた塀の中に行ってほしくない」ということが関係者の総意にあり、弁護士の方など色々な方がサポートされています(生活保護の申請など)。こういう部分は、なかなか評価が難しい(特に凶悪犯の場合は、そのあとも自分で何とかするのが仕事だ、みたいな考えの方もいる。それは否定しない)ところ、今回はそうなっておらず、何とか「次に捕まることはやめよう、みんなで支えよう」という点が見られたところです。
もちろん今の日本では、こういう類型は多回数万引きや、累犯障がい者(知的・精神の方も含む)の方に対してはサポートが手厚くなっていますが、それがやがて全員に広まって、すべての類型についても、満期後でも「サポートを受けたい人はどこそこへ電話、その電話先でワンストップで自立(=就職)に向けて支援が受けられます」というような世の中になればな(一部はすでにありますが、それを拡張して、ということですね)、と思います。
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コスモスをあげると言われた後の主人公の感情を、言葉で説明するのは難...
タイトルの重み
すばらしきアクターの世界
苦しくて切ない
本当にこの世界はすばらしいのか
刑務所から出てきて普通の生活を手に入れるのがこんなにも難しいのか。笑える要素もあり
ケータイを手に入れるのも元前科者は難しい
そして家も仕事も 帰る場所がなければまた刑務所戻り
しかし三上は普通の生活を苦労しながらも手に入れて、人に支えられていく。幸せだったかは分からない
身の回りの人に支えられて生きてるからこそ今隣にいる人を大事にしようと思った。
泣けるシーンはなかったかもしれないけど
私は5回くらい泣いてしまった。
そして虐められてる人を見て見ぬふりをするのが本当に正しいのか 周りに合わせてヘラヘラと悪口を一緒に言うのが本当に正しいのか
私達は普通の生活を手に入れて普通に何気なく生きているかもしれないけど、色々考えさせられる映画だった。
ぜひ見てほしい。
個人的に安田成美さんの演技が好きでした。
悲劇な結末がハッピーエンド色に染まった
女性として西川美和さんに魅かれます。
おこがましいと知りつつ焦がれます。
そんなこんなの15年。
肝心の新作はシンプルに『傑作』と言えるものだった。激しく激しく感動した。
役所広司さん演じる主人公の三上は親の愛情を知らずに育った根っからのヤクザだった。13年の刑期を終え堅気として生きようとするも、直情型の性格ゆえにままならない。
役所さんの一触即発の迫力に圧倒された。自からすべてを壊してしまいそうで緊張しながら観た。
三上が接する社会も歪んでいた。三上の振幅と相まって緊張感を増した。
太賀くん演じるテレビディレクターの津乃田が三上のすべてを見届けた。昨年の『生きちゃった』に続き太賀くんと一緒に鼻水垂らしながら泣いた。
悲劇な結末が三上を見守った人々の涙でちょっぴりハッピーエンド色に染まった気がした。気のせいだったのかなぁ。『すばらしき世界』は自分らが作るものだろうが。
【追伸】偶然とはいえ先日観た『ヤクザと家族』とのインターバルは2週間。上映順もベスト。何れもヤクザと社会を描いた傑作だった。
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