すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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薄汚れてる美しい世界
三上のようなまっすぐな人間ほど、
この薄汚れてる社会が生きづらく感じるんだろうなと、
差別や、いじめ、
よくよく思えば、見てみるふりにして、
逃げて、適当に生きるのは、
われわれの普通。
けど、三上の目からみた世界は、
生きづらくて、素晴らしい。
太賀相変わらず安定的にうまかった。
現実はもっと悲惨なのでは、とも思った。
長年の刑罰を終えての出所、保護司との出会い、生活保護受給のありがたみと自尊心の傷、生い立ちに由来する不安定な精神、周囲の色眼鏡、視聴率目当てのメディア、疑似家族として機能する必要悪としてのヤクザ、、、てんこ盛りだった。
役所広司は凄みがあるというよりは、キュートに描かれていた。とにかく、すごいクローズアップに耐えうる顔つき。病んでいるのに精悍というアンビバレントさは、内面の不安定さを見える化していた。
一番印象的だったのは、就職が決まったお祝い会。出所後に知り合ったばかりなのに、深く見知った者同士が狭いアパートに寄りあつまる。手作りのケーキ、ギターに歌、誓いの言葉、、、、、、こんなあたたかいコミュニティ、今どき本当の家族でも経験できないのではないかと羨ましかった。現実に同じような境遇の人間がいたとしたら、主人公のようなひと時の高揚感を一度も味わうことなく、ささくれた心情で余生を生き切る人の方が圧倒的に多いのではないだろうか。
脚本は秀逸だったと思う。特に終盤にかけての伏線の回収。個人的には洗濯物の取り込みが途中で終わったところ以上の室内の生々しいシーンは蛇足っぽかったけど、まあそれも伏線の回収の一部でありました。
最後に、日々自分は「逃げてばかり」だと痛感した。
いやー、これは悲しい物語に見えるけど、すごく今をポジティブに受け取...
いやー、これは悲しい物語に見えるけど、すごく今をポジティブに受け取らせてくれる良い作品だった。役所さん、やはり凄すぎ、最高すぎ!!!!
この世界に居場所を見つけるには
「素直で真っ直ぐで義理堅くやさしい人。それでいて整理整頓が得意」と言われたら、すぐにヤクザだと思う人はいないだろう。
「あり方」だけじゃなく「やり方」を知らないと生きづらい世界なのだと教えてくれる映画だった。
犯罪者や貧困の再生産をしないためにできることは、その人の過去ではなく今望むものに目を向けて、辛抱強く寄り添い、居場所をつくることなのかもしれない。でもそれが、とてつもなく難しい。怖いから。守りたいものを思ってしまうから。
それでもしっかり関わると、この主人公のように、その魅力的な側面が見えてくるんだろう。
「褒められるところに行きたかろ?」という役所さんのセリフが印象的でした。
不寛容な世界で居場所を手にする方法は、ほんとうに他者への無関心しかないんだろうか。
そんな問いを受け取った映画でした。
ひまつぶしの世界を生きて
剥き出しの生に触れ、生の本質が揺れる。
クリーンで公正な社会、小さな世界。
死の恐怖のない、安定生存世界、動物的人間性の去勢済。
そのものが、そのものでいられぬ社会、小さな世界。
差し伸べる手、理屈抜きの衝動的行動、本意。
もっとあったかく、単純に、ナマナマしく生きられたなら。
薄い射光のような暖かさを感じて、少し涙が溢れた。
折しも小春日和。
すばらしき世界とは
殺人を犯し、人生の長い時間を刑務所で過ごした男が数十年ぶりの社会で生きる姿を描いた作品。
今度こそは堅気だと真っ当に生きようと努力する三上が直面する社会での生きづらさ、社会の不寛容さ、元いた世界に戻りかねない危うさが繊細に描かれていると感じた。
犯した罪に対する反省はなく、刑務所に戻らないために社会で堅気として生きると考えていた三上だが、出所後に出会う人々との繋がりの中でその考えは変わっていったのだと思う。直情的な性格の三上だが、その真っ直ぐさや正義感の強さ、人懐こさからか、そんな彼の短気で暴力的な側面も理解した上で支えてくれる人々に出会っていく。三上の人柄をよく理解し信じてくれる人がいたからこそ彼は再び罪を犯すことなく生きることができたのだと思う。
すばらしき世界とはなにか、社会で普通に生きるということはどういうことか。三上が歩き始めた社会は、決して生きやすく全てが正しい世界ではない。介護施設で三上が自らの正義を押し殺し見て見ぬふりをする場面はそれをもっとも象徴して描かれたシーンだったと思うし、観ている人の心にも罪悪感のようなチクッと痛いような感情を抱かせたのではないか。この社会は果たして素晴らしいのかという問いを投げかける映画だったと思う。
三上にも本当にこれが社会で生きる正しさか、という疑問は常にあったのだろうと思う。しかしその中でも社会の一員として人々と繋がり生きていくということ、その喜びを三上は感じ始めていたのではないか。
社会の現実、人の心の機微が繊細に描かれた、考えさせられる一作だった。物語としてストーリーに壮大さこそないが、観終わった後にも私たちの心に小さなしこりを残すような、何とも言えぬ後味がじわりと続くような、そんな作品だったと思う。
最後に、役所広司さんの演技には圧倒されました。
これまでも好きな役者さんでしたが、改めて素晴らしい役者さんだなと実感しました。
一針一針丁寧に縫い上げられたようなすばらしい映画です🪡
名匠 西川美和監督が佐木隆三先生の傑作ドキュメンタリー小説「身分帳」を原案に現代を舞台に映画化。そしてこれが大正解。
役所広司さんじゃなければ出し得ない存在感に冒頭から引き込まれ魅せられた、あっという間の上映時間でした。ぜひ、スクリーンでの鑑賞をオススメします(*´ω`*)娑婆の空は広いんです😿
それにしても役所さん、伊丹監督の「タンポポ」から何年経ったかなぁ•••今や日本映画界の至宝だ🎞🎬
三上の存在感が凄かった。オススメします。
佐木隆三の小説「身分帳」を原案にして舞台を原作から約35年後の現代に置き換え西川美和監督が役所広司を主役に
刑期を終えて出所した直情型の孤独な男の再出発と自立の困難さをリアルに描いた傑作です。
原作を先に読んでたので淡々と人間観察を続けた佐木隆三の小説をどうやって映像化するのか興味深かったです。
役所広司が見せる正義感が強い三上という人物が実在する人物のように生々しく感じました。
第56回シカゴ国際映画祭で作品が観客賞を、役所が最優秀演技賞を受賞したのも納得です。
舞台も私の育った荒川付近の下町の近くでしたので感情移入がしやすかったです。
とにかく主人公の周りで見守る登場人物の一人一人が親切で心優しいのに、身の回りの理不尽な出来事に怒りを抑える姿が心に響きます。
梶芽衣子、橋爪功、北村有起哉、六角精児はベテランの落ち着きを感じました。
テレビ局クルーの仲野太賀と長澤まさみの二人が三上の不器用な姿を更に浮きだたせます。
多くの年代層に見てもらいたいお勧め作品です。
原作佐木隆三
主人公が「悪い人ではないんだけど‥」と言われがちな近くにいたら確実にめんどくさい典型的な人
話で聞くぶんには面白いんだけど
北村有起哉が「ヤクザと家族」とは真逆の役で、役者は凄いなと
人生はめんどくさいけど面白いと思えたら勝ち
つまらなかったよ
期待して観てたから、なんだか、つまらなかったな~。演出がシリアスではなくコメディに感じたけど面白くないんだよな。シリアスなほど人間洞察も深くないしね。主人公がラストで死ぬけど、あざとい演技だわ!一番良かったのは知的障害者のアベさんだよな。予定調和なヤクザを主役に置くより、本当に生きづらさを感じているのは障害者のアベさんだもんな。社会が手をさしのべるべきなのは障害者かもね。今でも社会の障害扱いを受けてるもんね。ヤクザなんて好き勝手に生きてきただけだろ。楽しい人生じゃん、女と遊んでさ、ケンカも強いしさ、人殺しまでできるしさ、最高の人生だったよね。役所広司にとっては、素晴らしき世界だよ。本当にそれはわかった、皮肉じゃないよ。だけど、アベさんにとってはこの世界がどう映ってたのかな~。だけど、アベさんじゃ映画になんねぇ~もんな。ヤクザの役所広司なんて、格好いいじゃん。だからみんな感情移入しやくてさ、高評価になるわけだよね。まったく素晴らしき世界だよ。ありきたりだけどね~
すばらしき俳優陣
犯罪者の服役後の苦労や苦悩が丁寧に描かれた秀作でした。
この映画の主人公の三上の場合、身元引き受け人の庄司夫婦やTVディレクターの津乃田やスーパー店長の松本など、社会復帰を応援してくれる温かい人たちに出合えてほんとう良かった。そしてその人たちの想いを裏切らないように必死に努力する三上の姿に涙がこぼれました。
役所広司さんはじめ演技の巧い役者さんたちが揃っていて見応えある映画でした。やはり映画は出演俳優の演技が巧いと締まりますね。
何が「すばらしき世界」
このタイトルから、犯罪者が実社会で成功(復帰)していくことを感じるのは当たりまえ
その前提で観ているので齟齬が生じてきます
やっぱり、誰かが書いてましたが皮肉?
しかし、何と言っても役所広司、彼の独擅場
不器用なヤクザ物を器用に演じていて引き込まれます
ちょい役でしたが安田成美が良かったです
彼にとって大きな存在だったはずなのに中途半端になったのが残念
矛盾や理不尽さを思い知らされる
生きづらい世の中、矛盾や理不尽さを思い知らされる。
真正面からぶつかる三上の性格が自分とオーバーラップして、生きづらいよね。と自分をなぐさめてみたりして。大人になるにつれ、理不尽さと上手く付き合えるようになった自分が世の中にとっては「普通」になったのか?
深く考えさせられる映画でした。
ラストの仲野太賀の名演技に泣けました。
現代の日本という「すばらしき世界」
西川美和監督作品は恥ずかしながら1度も観た事が無く、イメージだけだと「音が少なくて静かな作品を作る人」といった感じ。
是枝裕和が「西川美和新章突入」と言っているので作風を変えたのかもしれないけど、思ってたよりもお茶目でリズミカルな作風だった。現代に適応出来ない役所広司の姿は笑えるし、最初の運転のシーンは思わず声が出た。
しかし、笑いというのはいとも簡単に涙に変換されてしまうもの。
現代に適応出来ない姿は時に暴力に変わり、時に苦悶に変わる。
役所広司という役者の感情七変化がなんともリアルで心に刺さるものがある。
個人的な事だけど、役所広司が現代に戸惑っている姿は父を見ているようだった。
だから「あー分かる」と「やっぱりそうなっちゃうのか」などと共感してしまった。
それほど演技が自然体。
「演じていた」ではなく「そこにいた」
ラストはなんとも呆気ないものだが、それこそが人間であり、監督もおそらくあのラストへ向けて脚本を書いただろう。最後に提示されるのは「すばらしき世界」のみ。
自分はこれを"現代日本を皮肉った「すばらしき世界」"と解釈した。
正義を貫けば弾かれることを「すばらしき世界」と皮肉りそのうえで、まだ捨てたもんじゃないひっそりと日々を「すばらしき世界」と表現した。
西川美和は、役所広司は、世界に何を見出しているのか。是非とも聞いてみたい。
西川さんの原点となった、西口彰のドラマ(復讐するは我にあり)に出て...
西川さんの原点となった、西口彰のドラマ(復讐するは我にあり)に出てたときの、役所さんを見たいなと思った。役所さんは、孤狼の血の演技がよくて、黒沢清の映画のようなインテリの役のイメージが強いけど、暴力的な役が十分やれる、得体のしれない人でもあるから、西口の役はやれたと思う。今村-尾崎の尾崎とは違う人間の複雑さは出せたはずだけど、今回の西川さんは、いつもよりは少し狭めた感じ。と同時に、でも、障害者との関係の描きかたはよくて、今の世の中のより過酷な一面は見せてるかと。まさみちゃんは、暴力的で、わけのわからなさを出してるところが、マザーの映画なんかよりずっとよかった。
あとは、かじめいこさんとか(何たってヤクザ映画はお得意)、キムラ緑子さんとかよかった。
やりなおしは、きっとできるはず。
今年32本目(合計99本目)。
さて、こちらの映画。同じような法律系ジャンルの「私は確信する」の次に見ました。
この映画に出てくる方は、みなさん温かい方ばかりです。逆に暖かくない人を探すほうが難しいでしょうね。
さて、「すばらしい世界」と書くと、逆に「すばらしくない世界」換言すれば「良くない世界」はどこなのか??という気もします。それについては、また後述で。
長く収容されていた場合の復帰は文化の違いにもなれず苦労することが多いと言われます(だから、何度か職業を変えている)。それでも、ここはこうなんだよ、ああなんだよ、と教えてもらえれば誰だって理解できます。言わなきゃ理解できないのです。
そしてこの映画にも出てきますが、元受刑者の方などを了承した上で雇っている企業というのは制度として実在するようです(協力雇用主制度、というそうです)。これも、不自由な刑務所では三食は確保されているけど、いざ外に出ると何もないという悲劇(もっとも、ある程度までは保護してもらえるが、最終最後はこのように就職にむつびけられます)があるからで、塀の中から出てくる色々な属性を持った方の頼りある色々な制度の1つです。
こうした部分についてもごくごくちらっと触れている点、ここは大きいかなと思いました。
良い協力雇用主が見つかると再犯率が下がることは当然目に見えているので(極論、食べていけるのに最低限のお金があるかどうか、という論点につきる。普通の場合は。精神疾患的にパチンコ狂とかというのでない限り)、そこさえクリアできれば、他に色々ハードルはありますが、大きなハードルをひとつこえられます。
映画の終わりの部分(エンドに持っていく収束の部分)についてはいろいろな意見があろうと思います。が、それでも原作ありではないとはしてでも、ある事前をモチーフにした、という以上、あることないこと勝手にあれこれ付け加えるとおかしくなるので、そこは許容範囲内かな、と思います
▼ 「主人公目線での」「すばらしくない世界」は…?(あくまで一つの仮説)
・ まぁ、年齢がもう年齢なのできついですが、刑務所を満了して出たら出たでいろんな関係者の人が集まって大騒ぎ、そしてもう働くのも難しいでしょうから、今風にいうとオレオレ詐欺とか「知恵でできること」をやらせたり、教授させられたりというパターン。まぁ、時間の問題でまた捕まるだけですけどね…。そういう、「出所者は、もうそういう目でしか見てくれない、またうまいように利用する人「しか」出てこない」というのは一つの「すばらしくない世界」かなと思いました。
さて、加点減点ですが、減点は特にないものの加点は0.3として5.3としました。
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+0.3 このような長期収容者が塀の外に出るときというのは、そこからもう生活が無茶苦茶になって、行政も面倒なので深入りで介入もせず、最低限やることやったらはいあとはよろしくーみたいな感じで投げちゃうってのは、やっぱりあるようです(いわゆる高齢者の万引きなど。最近は万引きが病気である(クレプトマニア)ことが認知されているので、あまりにも様態がひどい場合は通院を勧めるなど、行政も支援民間も頑張っているが、1回目であまりそれも疑われない場合、驚くほど手抜きな対応になるわけですね。
ただ、今回はこう、「この人には二度とまた塀の中に行ってほしくない」ということが関係者の総意にあり、弁護士の方など色々な方がサポートされています(生活保護の申請など)。こういう部分は、なかなか評価が難しい(特に凶悪犯の場合は、そのあとも自分で何とかするのが仕事だ、みたいな考えの方もいる。それは否定しない)ところ、今回はそうなっておらず、何とか「次に捕まることはやめよう、みんなで支えよう」という点が見られたところです。
もちろん今の日本では、こういう類型は多回数万引きや、累犯障がい者(知的・精神の方も含む)の方に対してはサポートが手厚くなっていますが、それがやがて全員に広まって、すべての類型についても、満期後でも「サポートを受けたい人はどこそこへ電話、その電話先でワンストップで自立(=就職)に向けて支援が受けられます」というような世の中になればな(一部はすでにありますが、それを拡張して、ということですね)、と思います。
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