すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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社会の一員
殺人による13年間の懲役を終えて平成29年に旭川刑務所を出所した、還暦手前の元ヤクザの話。
日本刀を持ってカチ込んできた相手を刺殺して6度目の収監をされた主人公。
相手を殺してしまったことそのものに対し反省する様子はみられないが、刑務所はもう懲り懲りだ、と堅気になることを決心すると共に、幼い頃に生き別れた母親を探すべく自身の書き写した「身分帳」をテレビ局に送り巻き起こるストーリー。
刑務所内でも度々トラブルを起こしていたことを示唆しつつも、保護司やテレビ番組Dや市役所職員や偶々町中で見かけた絡まれている人、等への対応や、生活態度と生活保護への抵抗をみるに、常識のラインが普通の人と違ったり、不器用で一本気が過ぎたり、極端に短期だったりはするけれど、悪人ではないというか、寧ろある部分ではマジメ過ぎるだけにも感じられる。
キレたり、調子にノって大声で威嚇したりしまうところがあったりはするけれど、更生しようとする意志と、彼の本質の部分を気にかけてくれる人物が現れて、慎ましいけれど人間らしい暮らしと、人間らしい扱いに感謝出来るという、正にすばらしき世界だった。
役所広司さんが素晴らしいの一言
続きがみたい!
いい映画で前向きになれました。
役所さんが主演だから映画がリアル感満載で厚みが出たし、重い面もあるのにユーモアもあるし見終わるまであっという間、楽しめました。ただラストがあっけなかったので、もう1、2エピソード入れてほしかったな。
脇役の北村有起哉さんがほんとにいてそうな公務員、キムラ緑子さんが絶対いてそうな極道の妻で秀逸。もちろん仲野太賀さんもよかった、この役やれてよかったよかった!!
すこしアレ?と思ったのが長澤まさみちゃん。大好きだから余計に思ったのが、どうしてこの配役?きれいすぎて浮いてる、もっと無名の人のほうがよかったと思いました。
救われるのか・・☆
人生のほぼ半分を刑務所で過ごした男(三上・役所広司)の出所シーンから始まり、
彼が世間とどう折り合いをつけていくかの物語。
ヤクザをやめようと思いながらも、長年の習性からなかなか抜け出せなく、それが
一抹のユーモアを持って描かれたりする。
監督の上手さと、それを上回る役所広司の演技が映画に彩りを持たせて
笑い、もどかしさ、切なさを感じさせる。
三上を援助しようとする面々の個性が秀逸で、橋爪功はもちろん六角精児、そして
中野太賀の存在が効いている。
三上に対する態度が、戸惑いや時には恐怖も感じたりして、すごくリアルだった。
実際、綺麗ごとではなく身近に存在したら受け入れることが出来るのか・・
それでも、歩み寄っていき 三上の就職が決まった時のお祝いの会のシーンは
とても温かい気持ちになった。
就職先の老人施設。
どんなところにいっても、差別や戸惑いは切り離せない。
空がとても広いすばらしき世界は、三上のもとに訪れたのだろうか・・
(´ω`)コスモスの禅問答
良かった、、、、。最初、役所演じる刑務所を行き来する三上に苛立ちさえ感じましたが流石にそれだけではありませんでした。
コスモスの禅問答。あの場面がこの映画の核なんでしょうね。きっとそうです。
あそこの場面を視聴者がどう感じるか?なのでしょうね。
三上が娑婆でやっとみつかった仕事が介護職。同じ職場でいじめられていた精神遅滞の青年が台風が来るというのでコスモスを摘んできてしまい三上にあげる場面があります。
三上が台風が来ると言う理由で摘まれたコスモス自体に自分を重ね合わせたのか?
コスモスを摘んだ精神遅滞の青年にシンパシーを感じたのか?
コスモスは果たして摘まれるべきだったか否か?
コスモスを摘んだ青年の行動は素晴らしかったのだろうか?
もしかしたらコスモスは台風に耐えられるかもしれません。逆に摘まれたコスモスはわずかではあるが安全な花瓶で生きながらえることができますがいずれは枯れて死んでしまうでしょう。この青年の無償で粗雑で一直線の愛は素晴らしいものなのか否か。??
精神遅滞の青年は三上と同じ社会の異分子として描かれてます。
捉え方で見方も随分変わります。
三上は素晴らしき世界にたどり着けたのだろうか?
それすらも分かりません。皆さんのレビューを参考にさせていただければと思います。
三上を取材していたライターの青年、とてもいい演技でした。もらい泣きです。
これが日本なのかな
日本が一度落ちると二度と普通の生活が送れないような仕組みになっているのをまざまざと見せつけられる。前科10犯トータルで28年もの刑務所生活を経て「もう刑務所には戻りたくない」という気持ちから真人間になるべく奮起する主人公三上を取り巻く人間達が皆三上の為に手を貸したり知恵を出したり金を出したりする。その優しさに感動して泣く三上にはちゃんと心があるのだが持ち前の短気と不器用な真っ直ぐさですぐに手が出てしまいむちゃくちゃになり自暴自棄になるのがどうしようもない。だが、三上に関わる人達は誰一人として見捨てない、それは三上の真っ直ぐさや真摯な気持ちが伝わっているからだろうと思った。ほっとけないのだ。三上自身も周りの期待を裏切らないように努力する。この映画をありきたりな再生物語のように思っていたならその気持ちのまま是非観てほしい。あなたも三上の周りの人達と同じ気持ちになるはずだから。日本は残酷だけどすばらしい。何がすばらしいのかは人それぞれかもしれないが、私は人の心がすばらしいと思った。
役所広司100点!!!
ドラマチックはもういらないのでは?
虚構や現実に拘っているような印象を受けたが、
役所広司、長澤まさみと一線級の俳優陣が出ているこの作品全てから嘘臭さを感じた。
誰がどう見てもあの男は役所広司だし
テレビプロデューサー役で登場する
長澤まさみの見た目は
30代前半のモデル以上にしか見えない。
もう、有名人が怪演とかしてる時代じゃないと
この映画を見て強く思った。
こんな事、映画好きのシネフィルは全く思わないだろうが
映画って結局エンタメで良くて
リアルぶりたいのであれば、有名人はノイズになる。
銀幕スターなんてもう古い。
一旦廃れて、もう一度再建させる必要があると思う。
特にサッカー終わりの役所広司が倒れるシーンのあとの
長回しがあまりにも作為的で腹が立った。
子どもを舐めているとしか思えない。
子どもならリアルでしょ、とでも言いたいのか。
いくら子どもでもカメラと役所広司には意識がいっている。
最後はとってもドラマチックなのも寒い。
西川美和監督の傑作
薄目を開けて生きていくのができない人なんだなぁ
元反社の人たちの生きづらさを描いた作品。最近よく見かける。
本作はまっすぐで世渡り上手ではない主人公が生きていくには、トラブルは欠かない。
自分自身に重ね合わせてみると、若い頃には、暴力こそないものの理不尽な先輩の言動に、正義感をもって後輩をかばったりしたことがあった。
今は、そういうことをちょっと俯瞰で見て、すぐには反応しない術も持てるようになった。
三上は介護施設で同僚との雑談シーンで、自分を出さず笑っていた。その葛藤に本意ではないだろうなぁと思ってしまう。よく、「大人になれよ」という言葉で処理されていた社会の理不尽や不本意を感じられずにはいられない。
西川監督が、いろんな深い意味や感情を込めた作品で、見応えがありました。
主役だけでなく脇役も光る演技でした。
ラストが・・・
誰も見上げる事のない広い空
何でまた、こんなにも近接するかなぁ。似た様なネタがw あちらは「やたらと画力の高い成人誌の漫画」でイマイチ乗りきれずに終わりましたが、こちらは「一見無責任なオチの小説」的だったけど、こっちの方が好き。
にしてもですよ。予告詐欺です。長澤まさみはチョイ役のチョイ悪役。役所広司と仲野大賀の映画と言いたいところですが、物語はほぼ全編役所広司で埋め尽くされてます。独り舞台と言った方がしっくり来ます。
生まれながらのヤクザはいない。人を暴力に走らすのは人。人が暴力に走るのは人との関わりを忘れてしまう時。的な性善説に帰着するかと思いきや。ヌーベルバーグ的バッドエンドの後に、「雲ひとつ浮かんでいない広い空」に「すばらしき世界」と描いて終わる映画。
西川美和さん、このラストショットを撮りたかったんだろうなぁ、なんて思いつつ。で、んで、ででで。それって、どーゆーこと?
塀の中に居た三上にとって「広い空」は「すばらしき世界」だったのか?それは三上自身が否定します。
「こんな肩身の狭い思いをするくらいなら塀の中の方がマシ」
三上を食い物にしようとする者もいるけれど、三上の身を案じ親身になってくれる者も居る世界は「素晴らしき世界」なのか?そんな単純なもんじゃ無いよね。
「誰もが自分も認めて欲しいし、褒めて欲しい」は、津乃田の言葉。母親に捨てられた事実を認めたくない三上も、自己承認欲求からヤクザの道へと入りますが、徐々に、その暴力性だけが人格を支配して行く。最早、塀の中に戻らなくても良いのなら、衝動を抑える事さえ不要との思考に陥っている。
故郷の施設で母親への想いを吹っ切り、職に就き、衝動を抑える事を覚え、元"内縁"の妻と会う約束をし、「台風から守るために切り取ったコスモス」を自転車の前かごに乗せて、自宅に戻ったところで心臓の発作に倒れる。切り取ったコスモスの命は短い。台風から護るために花を短命化する事は正しいのか。
たった一つの答えの無い世界で、堂々巡りする問いと答え。
「すばらしき世界」は広い空に描かれた文字。誰も見上げる者の無い、広い空。すばらしき世界なんて、どこにも無い。それは、それを見上げる者の心の中にだけ存在し得る、のかも知れない。的な。
逆説的タイトルなのか、問いかけなのか。
この分からなさ具合が、結構好きです。
良かった。かなり好き。
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2/16追記
やっぱり、「すばらしき」の解釈やいかに、になりますよね、この映画w
「ライフ・イズ・ビューティフル」の意味は「どんな状況下でも人生は生きるに値するほど美しい」。これと同じだと思うんです。
「どんな境遇にあっても。どんな生き方をしていても。"世界はすばらしい"と人が感じた時、それは"すばらしき世界"になる」的な。
西川美和さんは、その意図を自分自身で語るなんて野暮なことはしないよねぇ、恐らくはw
社会復帰に至るまでの道のり、立ちはだかる壁を丁寧に描いた一作。
梶芽衣子が出演しているけど、役所広司と共に悪漢をなぎ倒す…、という展開にはならない(のがちょっと残念)です。
刑期を終えたばかりの元殺人犯の三上(役所広司)が社会復帰を目指して奮闘する、というしっかりとした主筋があり、橋爪功や仲野太賀らがそれぞれの立場から三上に関わる形で物語が展開していきます。
ただこの三上という男は、自身の過去の行いに対して強い言い分を持っていたり、折り目正しい振る舞いをするかと思えば突然粗暴となったり、行方不明となった母を探す口実でマスコミの注目を浴びようとするなど、一筋縄ではいかない側面を持ち合わせています。この複雑な人格の持ち主を、役所広司は実に見事に演じています。
ちょっと軽い口調で人なつこい笑顔を見せる、いわゆるイメージ通りの役所広司を前面に出したかと思えば、次の瞬間には方言丸出しで啖呵を切る…、この振り幅の大きさは観客が三上に全面的に感情移入する予防線となっており、単純なお涙頂戴の人情物とはなっていません(結構喜劇的な場面はあるけど)。時々挿入される、ものすごく遠目から人物を捉えた映像もまた、観客が意識を登場人物から少し引くことを促します。こうした客観的な視点の導入は、本作の原案『身分帳』の作者、佐木隆三の代表作『復讐するは我にあり』を彷彿とさせるものです。
役所広司は当初、自身が演じる三上という役が好きではなかったそうで、西川監督との役作りの過程でキャラクターを取り込んでいったらしいですが、このあたり西川監督の熱意と巧みな手腕のなせる技ですね。暴対法施行後の暴力団員の行く末、という『ヤクザと家族』と共通した要素があるので、見較べてみると、主人公の年齢に応じた状況の相違などが見えて面白いです。落ちぶれた組長が出てくるところも同じ!
秋桜が、とても綺麗だ
昨秋に仲野太賀の主演映画を2本続けて鑑賞した。石井裕也監督の「生きちゃった」と佐藤快磨監督の「泣く子はいねぇが」である。演技は一風変わっていて、無表情というか、空虚な表情をすることが多い。文章では行間を読むという言い方をするが、仲野太賀の演技もそれと同じで、観客が心情を読み取らなければならない。
映画やドラマや芝居では人間は大げさな表情やリアクションをするが、実際は何があっても大抵は無表情である。何かに驚いたときに驚いた顔をする人はまずいない。異物を発見したり変な人を見かけたりしても、驚くより前に自分の安全を真っ先に考えるから、おのずから無表情になる。仲野太賀の演技は実はとてもリアルなのだ。本作品でもその演技が生かされていて、面と向かって非難されても電話でなじられても、たくさんの言い分を全部飲み込んだ無表情で通す。
本物のヤクザを扱った映画では今年(2021年)の1月19日公開の藤井道人監督「ヤクザと家族 The Family」があり、映画の後半では13年間の服役のあとのヤクザの生きづらさを描いていて、本作品と少し似たところがあった。ヤクザの兄貴分で出演していた北村有起哉が、本作品では親切な福祉担当者の役なのも面白い。主演の綾野剛の演技はとてもよかったが、本作品の役所広司が演じた三上正夫には本職のヤクザの凄みがあった。
半グレが幅を利かせてカタギはカタギで理不尽な差別をする。刑務所も酷かったが、娑婆に出ても世の中が酷いことには変わりはない。一匹狼の三上正夫はただ大人しくカタギで生きていきたいだけなのだが、世の中はどこまでも冷酷だ。街角で見かけたカツアゲの場面。糞チンピラども。三上正夫はそれを見逃す訳にはいかない。悪党を成敗するのだ。しかしそれが非難される。一本気な人間には生きづらい世の中だ。
出身地の福岡でもヤクザは警察に追い詰められている。極道にはもはや生きる場所がない。たとえ窮屈でも、カタギで生きていくしかない。非道な場面は見て見ぬ振りをし、同調圧力には従い、差別も我慢する。反社はいつまでも反社として見られるのだ。理不尽なことに対しても声を上げるのは厳禁である。何も見ない、何も聞かない、何も言わない。そうやって無為の人生をやり過ごす。空が広くたって、広いだけでは何の意味もない。三上の心を荒涼とした風が吹き過ぎる。
仲野太賀演じる津乃田が漸く表情を崩す場面が現れる。生きていてほしい。足を洗ったやくざ者。辛くても苦しくても生きていてほしい。三上の人生に意味はなかったかもしれない。しかし三上の人生は三上のものだ。誰にも何も言われたくはない。
冬の雪の中で出所して、今度こそはカタギになると誓い、秋になる頃には娑婆の知り合いも出来たし、身元引受人の先生はそんなに親切でもないが、応援はしてくれる。もしかしたらカタギで生きていけるかもしれない。男一匹、三上正夫。ここで生きる。秋だ。秋桜が、とても綺麗だ。
最後は青空に吸い込まれるように旅立ちたい
役所広司さんの魅力が存分に引き出された作品です。
脇を固める六角さん、橋爪さんの存在が、最後に「すばらしき世界」と思える作品だと思います。
人生の最後は、あっけなくも最高の人生だと思える生き方は、自分だけでは存在しないんですね。
何なのか、表現は難しいですが、コスモスを抱いて青空に吸い込まれていく、満足した人生の最後だったんだと、念じています。
細部にまで行き届いた見事な演出
この映画は90年代に刊行された原作を、現代に置き換えたのだそう。
主人公・三上が13年の刑期を終え出所すると、東京の街にはその間に建設された"東京スカイツリー"が背景に映し出され、時の流れを感じさせる。
生活保護、近隣住民との軋轢、なかなかうまくいかない就職活動、元妻との別れ…
やがて三上はかつてのヤクザ仲間を頼る。
そのシーンではかつてから存在する"東京タワー"を中心に、俯瞰した長回しで東京の街を映し出す。
何も変わらない東京の街、変わる事ができない男…
しかしクライマックス周辺、
再び三上が未来に向かって前進する場面では、
そっと三上を応援するかのように二人"スカイツリー"が背景に映し出される。
劇中、長澤まさみが沖野太雅に「きちんとカメラを回して伝えることをしろ!それが仕事だろ!」と絶叫しながら説教する印象的なシーン。おそらく、西川監督自身のレンズを通しての自らの仕事に対する葛藤が込められているのだろう。
個人の繊細な内面と残酷な社会との軋轢を見事に描いた、すばらしい作品。
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