すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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「ヤクザと家族 The Family」と是非セットで
「ヤクザと〜」ではまさにヤクザを演じていた北村有起哉が役所の職員を演じていたりするので、そういう比較が出来るのも面白い。
一度道を外れた者が真っ当な道を戻るのはとてつもなく難しい。
しかも、その真っ当な道はとてつもなく理不尽でいて、とてつもなくつまらない。
それでもこの世は「すばらしい世界」?
役所広司をたっぷりと味わえる2時間でした。
良かった。
卵かけご飯はウマい
じんわり狂っていないと生きにくい世の中。
正義の制裁の名目でストレス解消するか、心を麻痺させるか。
悲しみと理不尽に溢れてはいるけれど、目線を変えると空には星がまたたき、花は美しく、歌で心が通い合い、卵かけご飯はウマい。
善人という人間はいないし、悪人という人間はいない。
切り取る角度で見え方が違うし、結局人は自分の主観で切り取って見ているだけ。
暴力の理由を生い立ちに繋げる安直さには飽きている。
理由を見つけて安心したいのはわかるけど、何でもかんでも母親のせいにされてもねぇ。
園で過ごした時間にも確かな温もりがあったことに気づく瞬間から、今までの主観とは違う世界が見えてくる。足りない思いを埋めるのに忙しくて見落としていた世界がそこにはあった。
殻を割ってむき出しの命をいただくのは残酷だけれどもすこぶる美味しい。
リアルを切り取って何かへ着地させるノンフィクションは罪深い。
むしろフィクションに見え隠れするノンフィクションな瞬間に惹かれます。
大袈裟に言うと、昔の映画には既にこの世に居ない役者さんが映っていて、“フィクションを演じているリアルな時間”が閉じ込められている。
そのシーンに関わった人の熱量を感じる瞬間、フィクションを作る人達のドキュメンタリーを観ている気になります。
『永い言い訳』は匂い立つようなシーンに溢れている大好きな映画です。
山崎裕さんの“生っぽさ”を感じさせる撮影に興奮するので、本作だと卵かけご飯や園歌のシーンに惹きつけられました。
撮影監督が笠松則道さんなのは、やはり役所広司さんのお芝居を見せたかったからでしょうか?
一匹狼と言えばダンディだけど、筋彫りで止まっているところに、どっちつかずの保険をかけていた男。
妄想キャスティングで脳内再生を楽しんでいます。
何のために生きるのか
役所広司演じる元ヤクザものには正直言って共感できないところも多い。
一般社会からリジェクトされても仕方のない面もあるだろう。
いや、そうされて然るべきとすら感じる。
そうしてしまうことによって生じる悪循環がこの映画のメインテーマなのだろう。
序盤はそれが延々と描かれ、間延びした感じがした。
後半は一転して急展開。
個人的にはこの部分に時間を割いて欲しかった。
この「すばらしき世界」では正しいことをしても社会からはじかれかねない。
特に脛に傷を持つ身ではそうなる。
恩ある方々に報いるために自らの信念を曲げて、
自らと同じく「すばらしき世界」では生きにくい心優しき仲間を見殺しにする。
そして、その仲間からもらった花を握りしめて逝く。
さぞ無念だったことだろう。
その心情を思うと涙なしにはいられなかった。
自らの正しい信念を曲げて生きなくてはならない「すばらしき世界」、
こんな「すばらしき世界」に生きる意義はあるのか。
何のために生きるのか。
くずどもを殴り倒してはいけない「すばらしき世界」に嘆息した。
私もある意味反社なのだ。
嵐の予感のなかに終わる石川力夫=ジョーカー
最後の雨が良ければ満点だったのに、と残念に思う。
役所広司はアタマから血圧の高い半病人として登場し、出所前に刑務官と問答するなかで短気直情型の危うさが描かれる。
刑務所でも懲罰を重ねたことも、その気質からと伺わせる出だしだ。物語はその男が社会に適応できるのか、またキレてしまうのかというサスペンスを推進力として進んでいく。
出所して東京に着いた夜、橋爪功の家ですき焼きを食べて涙してしまう。翌日の区役所の生活保護申請で激し血圧が急上昇して倒れてしまう。
そうした振幅のドラマだ。『仁義の墓場』や『ジョーカー』のように。
その振幅が水を伴って描かれているのではと思うのだ。すき焼きの涙であり、白竜の家の雨であり、ソープランドの風呂であり、ルポライターと入る風呂である。
ラスト、嵐が近づいている。
橋を渡る。元の妻からの電話がある。(願望か?)コスモスを持ってアパートに着く。雨が降っている。が、この雨が良くない。せっかくの雨降らしなのだから、もっと思い切り出来ないかと、思うのだ。
長澤まさみの無用な色っぽさとか、分かりやすさ、くどさ、商業性に心配っている間に、肝心の雨をやり過ごしてしまったような残念さが残るのだ。
長澤含め、客を呼ぶ役とリアルさを支える役のバランスを練られたキャスティングは良かった。
「あんな生き生きとした三上さん、見たことなかった」
「人生は我慢の連続」
牙を抜けきれない男との出逢い
牙を抜けきれない男が社会に出て感じるジレンマや葛藤、喜びを淡々と描くことで、社会で生きることの難しさを描いた良い作品だと思います。
彼の想い(人生)は最後に叶った(満足)のか分からないけど、大切な思い出とする人が多くいることが彼の人生を満たしてる気がします。
この男を演じる役所広司さんの凄みも感じられる作品です。
すばらしき世界って本当は、、、
2021年、初の映画館での鑑賞作品。
お見事!ナイスチョイスわたし!と大満足。
原作は30年も前の実際に存在した男をモデルにした
小説だそうで。うまく現代に置き換えて作品は作ら
れており、最初から最後まで飽きることなく鑑賞。
主人公の三上を演じた役所広司さんは、たくさんの
作品に出演している日本を代表する役者だが、まだ
まだこんなにも観客を満足させてくれるのかと、そ
の存在感と演技力に驚かされる。
主人公に関わる、周りの役者もとても素敵で、仲野
太賀さんは、名演。私的には、三上の昔の繋がりの
あるヤクザの兄貴(白竜)の奥さん役のキムラ緑子さんがこれまた最高。
彼女が三上に伝えた言葉、
「シャバは我慢の連続。我慢したって大して良いこ
とはないけれど、空は広いって聞くよ」
この言葉がとても印象的だった。
我慢の連続である世の中だが、広い世界の中で生き
ていれば、いろんな可能性と出逢えるのだと。
三上の周りに少しずつ人と人の繋がりができていく
前のシーンだった。
就職先が決まった三上を、みんながお祝いするシー
ンは気持ち悪いと感じたが、それが今自分が暮らし
ている社会のあるあるだなと。正直者が馬鹿を見る。
そんな気がして、とても悲しい気持ちになった。
三上のように、実直で正義感にあふれた人間にとっ
てこの世の中は生きにくい。彼がもう少し当たり前
の愛情をかけて育ててもらっていれば、生き方は違っ
たのかもしれない。
もう一つ印象に残ったシーン。
福岡の昔の仲間に連絡した後、風俗嬢のリリーさん
とベットで横になって話をする。
三上がリリーさんの子供の話を聞いて「お母さんや
ね」と声をかけるシーン。その表情があまりにも穏
やかで優しくて。
三上にとって母親という存在がどれほど大切な存在
かその表情から伝わり、心が締め付けられた。
タイトルの「すばらしき」がわざわざひらがなであ
ることが気になり、「すばらしい」の語源を調べて
みた。
「素晴らしい」は、漢字を見ると、「晴れやかな気
分にさせられる」といった意味が浮かぶが、これは
後世の当て字だそうだ。「すばらしい」は、縮んで
小さくなるという意の「窄む(すぼむ)」や、「み
すぼらしい」などと使う、すぼまって狭いという意
の「窄し(すぼし)」と同源であり、もとは「あき
れた」とか「ひどい」という意味で使われていたの
だという。
↑ネットで検索。
これを見て、納得。
西川監督の意図はこれにひっかけているのかどうか
はよく知らないけれど、タイトルは皮肉のように使
われていて、現代社会に生きる私達に問いかけてい
るのでは?と感じた。
我慢の連続。それでもこの世はすばらしき世界な
のか?
三上の最後のシーンが答えなのか。
とにかくまた面白い映画に出会えてよかった。
この世界はすばらしいのか
ヤクザとして生き、長い年月を刑務所で過ごした男が、シャバでカタギをめざすも思うようにいかず、息苦しくもがく物語。主人公の三上正夫だけでなく、観ているこちらも最後まで息苦しかったです。
曲がったことは見過ごせず、カタギになろうと必死にもがく三上は、きっと正義感と一本気のある男なのだと思います。裏社会に関わらなければ、幸せな人生を歩めていたかもしれません。しかし、元ヤクザという肩書きは、生きる場所を限りなく狭めてしまいます。そんな中で感じる、悩み、苦しみ、怒り、悲しみ、といった負の感情。そして、それを振り払うための暴力。若い頃から裏社会に身を置いていた三上には、暴力以外の解決手段がなかったのでしょう。
そんな彼にも優しく接してくれる人たちがいました。元ヤクザという肩書きにとらわれず、三上正夫という男自身に触れ、彼の力になりたいと思ったのでしょう。ただ、就職祝いの席で三上のためを思って説く現代社会の処世術が、「見て見ぬふりをしろ」「耳をふさげ」「逃げろ」というのにはドキっとしました。確かにそうだし、自分も無自覚にそうしているのですが、改めて言葉にされるとぞっとします。
博多の姉御が「シャバは我慢の連続。でも、空は広い。」と言います。広い空を見るには、我慢を重ねるカタギになるしかないのでしょうか。では、カタギとは何でしょうか。我慢して真面目に生きている人のことでしょうか。いや、他人の痛み悲しみ苦しみに目を瞑り、自分を守る要領のいい人間なのでは…、そんなふうに思えてきました。タイトルの「すばらしき世界」は、現代社会を生きる私たちに突きつけられた、痛烈な皮肉なのかもしれません。
主演の役所広司さんは、文字どおり体を張って、三上正夫を熱演しています。興奮すると出る流暢な博多弁、頭に血が上っての恫喝、怒りに任せた暴力など、ムショ帰りのヤクザそのものといった感じでした。あまりにも自然すぎて、役所さんが演じているというより、役所さん自身を描いているのではないかと思うほどでした。脇を固めるのは、六角精児さん、橋爪功さん、梶芽衣子さん、キムラ緑子さんら安定の布陣。「ヤクザと家族」では兄貴だった北村有起哉さんが、市役所職員として親身になっていたのはちょっと笑えました。このベテラン陣を向こうにまわし、圧巻の演技を披露したのが仲野太賀さん。三上への関わり方の変化がすばらしく、風呂場で背中を流すシーンやラストのアパートのシーンは涙をこらえきれませんでした。
広い空が、見ている我慢
ラストシーンを見て、私も、すばらしき世界の住人に、なれるかしらと思ったのですが、おつとめ帰りの方とは、どう接したらいいやら。だって、怖いもん。
先日、家族とプチ喧嘩。怒りたくなるわけですよ。ところが、翌日、家族は、けろっとしてる。私の怒りは、何だったのかしらと、思う一方、怒りに任せて、余計なこと言わなくて良かったようです。我慢することで、得たもの。そして、失うものも、あるようです。今日、どんな我慢しました?。広い空が見てますよ。
仕事にせよ、家庭にせよ、ヒトは居場所を探すもの。自分を、認めてくれる、無条件で受け入れてくれる処を、渇望するわけです。ここで、初めにつまずくと、暴力的になる、歪んだ承認欲求を抱くようになる。学校は、学力より、そこを教えて欲しい。つまり、ヒトは生まれながらに、法的に平等でも、個性と育つ環境は、明らかに不平等と云う事実。それに立ち向かう、知恵と勇気。足し算や掛け算覚える前に、他者の気持ちに、共感する想像力。ムショは、罰を与えるだけでなく、何が罪なのか、何がヒトを苦しめるのか、つまずいたヒトに、改めて伝えて欲しいものです。
本作ですが、「私はダニエル ブレイク」みたいな、いい話にも、できたはず。でも、まっすぐに生きると、他者を傷つける。我慢して生きると、他者を見棄てることになる。そんな裟婆の現実を描く、監督さんの心意気に、気持ちが、揺れる私です。
「時計じかけのオレンジ」
罪と罰の在り方を、無理やり問い糺すお話。本作と併せ観るのは、ほぼ間違いですが、私のすばらしき世界は、あなたにとって生き地獄みたいな寓話を、ふと、思い出しました。
観てきました、素晴らしい映画でした。
不器用で、真っ直ぐな前科者
先日鑑賞した、『ヤクザと家族』もそうだが、こうした男の生き様を美化してはいけないとは思う。どちらも、刑務所から娑婆に出てからの社会の仕組みになかなか適応できない生き難さに、フォーカスしている。しかし、刑務所に入るまでは、人の道を外した生き方をしてきたのだから、そのハンディを負う中で生きなければならないのは、仕方ないことなのだろう。それは、ジェンダー問題とは別物だと思う。
とは言え、そうした男・三上を主人公に据えて、不器用で真っ直ぐな心意気の一人の男の生涯を通して、ヤクザあがりの人間にも、生きていくための受け皿と立ち直る権利が行使できる社会の必要性も、訴えかけてくる。また、三上がヤクザとなった根底には、幼い頃に置き去りにした母のトラウマによるものであるというのは、現代社会への警鐘とも言える。
また、娑婆では外れ者の三上だが、そんな彼に何とか手を差し伸べる人がいるのも事実。今度こそ、真っ当な道に導こうとする人々の優しさと思いやりを通して、観る人の心情に訴えかけてくる、ヒューマン・ドラマとしても、西川監督が仕上げている。何度か熱いモノが込み上げてきて、正にタイトル通りの『すばらしき世界』でエンドロールを迎えて欲しかったのだが…(涙)
そして、何んと言っても役所広司の演技は、やはり素晴らしい。瞬間湯沸かし器のような性格の三上の喜怒哀楽を見事に演じている。ヤクザあがりで現代社会には通用しない男のそこはかとない哀愁を、背中で演じることができる役者は、他にはいないだろう。コメディー、ミステリー、任侠…と、何を演じても一流だ。
もう一人、冴えないジャーナリスト役の中野太賀は、最近、あちこちの作品で重要な脇役として顔を見るようになり、父・中野英雄の血を引く演技で、これから楽しみな俳優だ。
現在日本最強監督の「長い」最新作
役を生きる役所
「娑婆は我慢ばっかりで、我慢したって何もいいことない。けれど空が広...
あっという間の2時間
優しさ+残忍さ=我らが"すばらしき世界"
やはり西川監督の作品は 生々しい
粗暴さから 社会に馴染めず弾かれ
しかし 人の優しさに救われ
自身の正義を曲げて 残忍な市民に同調することで
社会に馴染んで行く
なんと"すばらしき世界"
嗚呼 我らの"すばらしき世界"
劇中 悪意のある人物が 障害者のモノマネをして
周囲を笑わせるシーンがある
そのシーンの時 劇場内の観客の一部がクスクスと笑っていた
あの衝撃と絶望は 今後忘れられないだろう
嗚呼 この世はなんと"すばらしき世界"か
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