すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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時にヤクザ、時にカタギの北村有起哉
今年2番目に楽しみにしていた作品。
予告の作りも完璧で、かなり期待して鑑賞。
本当は西川美和監督の過去作を見てから見ようか迷ったんですが、他作も評価がかなり高いので見てからだと余計ハードルが上がってしまうと思い、見らずままです。
んー、面白くはあったんだけど期待通りとはいかなかったかも。期待のしすぎは良くないと十分承知しているつもりなんですが、面白そうだと自然と期待しちゃって...。
優しくて真っ直ぐすぎる三上(役所広司)。実は彼、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。
刑期を終えた三上は今度こそはカタギぞと心に誓い、普通の生活を目指すことに。
すばらしき世界ということで、3つのすばらしき点でレビューしていきます。
一、役者がどれもこれもすばらしき
これに関しては見る前からわかってたことですけど、やっぱ書きたくなるほど凄いんです。
主演の役所広司はもちろんのこと、脇を固める俳優陣も最高。仲野太賀、橋爪功、六角精児、北村有起哉などなど。大好きな俳優勢揃いで、特に六角精児との博多弁の会話はとても微笑ましい。
一、三上が段々とすばらしき
三上は最初は何でも暴力で解決しようとして、刑務所で何を学んだんだとつい思ってしまうほどやな男なんだけど、後半につれて彼の本当の姿が見えてきていつしか大好きになる。その一例として、予告のラストでも一瞬写っているあのシーン。1番好きなシーンなんですけど彼の真の姿はああなんだと、すごく心打たれます。
一、シリアスさとコメディっぽさの両立がすばらしき
皆さん仰っていますが、この作品ヤクザと家族とかなり似ています。ただ、あの作品と違うのは結構コメディっぽいところ。刑務所での生活に慣れていていちいち声がおっきかったり、運転免許取得で失敗しまくったりと、割と笑えます笑
でも、題材から離れることは無くラストはすごく考えさせられる。そのシリアスな題材とコメディチックな小ネタの両立が心地よく、とてもいい映画になっている。
じゃあ、なんで★3.5なんだ?と言う感じですけど、大きく考えられる理由は2つ。
まず一つは予告。
「心えぐる問題作」と書いてあった(はず)のがズレてるかなと。別に問題作では無い。先程も言ったように考えられはするけど、心えぐられる程でもない。なんだか、フワッとしている。素材は美味いんだけど、味付けに納得がいかない感じ。
そしてもう一つはちょっと飽きる。
同じような展開と雰囲気がずっと続くので退屈する。もっと過去の背景を映像で見せたり、もしくは刑務所での尺をもうちょい長くして中身をちょっと減らすとかして欲しい。もっと上手くできた思うんだけどなぁ
出所して働けずまた罪を犯す。
2度目の罪を犯す人は好きでやってる訳では無いと思う。まだ、前科ものに対して酷い偏見をもっているこの社会。大半の人はもう二度としないと思っているはずだ。なのに何故こんなことになってしまうんだ...
期待通りとはいかなかったと言ったが、いい作品であることに違いはありません。
ヤクザと家族を見た方は是非。
何だか切ないなぁ(;´Д⊂)
間違いなく傑作だと思う、が…。
賞を取りそうな感じの作品。
役所広司の演技がすごい。本当にそんな人物が存在するかのよう。
後半、仕事も見つかって、感情も抑えることができて、元妻からも連絡があって、ハッピーエンドが見えて来て、私も「明日から仕事がんばろう!」と思った矢先、「えっおいそれはないだろう」というエンディング。
『私はダニエル・ブレイク』も、最後主人公は死んじゃったけど、それに倣う必要はあったのかなあ。
役所さんと仲野さんが素晴らしい!
シンプルに伝わる心情
上手く表現することができないが、それぞれの役の心情はシンプルに表現されているように思える。それはおそらく見る人がスッと納得できるように計算されたものなのでしょう。
この映画は現実的で、違和感なく見ることができた。登場人物同士の心からの接近は、とても時間のかかるものと思いますが、それを上映時間中にまとめられているところから最後の津乃田の悔しさは非常に良く伝わる。
最後によくこの映画を考えたところ、死刑制度について考えさせられた。それについては何も言わないが、現実的な映画であったことから新しい心情を得たと思う。
悲し過ぎる現実、そして結末
昭和に書かれた原作を二時代超えても今なお変わっていない現実。もちろん反社会に入り込み抜け出せない主人公の自業自得的なところは否めないものの、そうじゃなくても社会に馴染めない人たちに手を差し伸べることで光が見えるエンディング、例えば『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のように、書いた本の出版シーンに被って津乃田が走るところが観たかったと期待してしまった私自身あまちゃんでした。
三上(役所広司さん)の身許引受人、庄司弁護士夫妻(橋爪功さん、梶芽衣子さん)、ライターの津乃田(仲野大賀さん)、スーパーの松本店長(六角精児さん)、役所の井口(北村有起哉さん)5人の素晴らしき人たちに支えられ、元妻(安田成美さん)との再会の約束を心から喜ぶ姿になんとかならなかったかな、というのが正直な気持ちです。自分の中で何かが開いた津乃田がある意味純粋な三上の背中を流しながら言った台詞が重く心に響きました。
支えてくれた人たちに報いるため介護施設内で三上が必死に耐え、無理して笑うシーンは苦々しく思ってしまいました。いい役者さん揃いでしたがその中でも役所広司さんの圧倒的な存在感に改めて感動しました。
あと味はよくありませんが今の日本人、特に政(まつりごと)に携わるお偉き方々に是非観てほしいと思う、本当に考えさせられる映画でした。
心と頭
人間らしさとは何なのか?社会的弱者が日本社会を生きることが、どうしてこんなに難しくなったのか?を訴えてる今作。
ネタバレになるから正確には書けないが、劇中で三上が「ここに人間はいない。」みたいなセリフを言ったんだけど、この映画はこの一言につきると思う。
また、長澤まさみさんがちょい役で出演してるけど、ミスキャストじゃない?と思えた。主演クラスの女優がちょい役ででることで、物語から完全に浮いてしまっている。長澤まさみじゃん!って、インパクトが強すぎる。もう少し、腹黒そうな計算高そうな女優がいたと思うんだけどな~。
ラストの終わり方は、いろんな見方ができる。自分としてはこのラストに満足している。
本当にメッセージ性が強く、20代、30代のこれからの日本社会を動かしていく若者に、ぜひ見てほしい映画です。
役所さん、素晴らしい演技をありがとうございました。
西川美和監督の代表作
役所広司の存在感
母に見捨てられ、人生の多くを刑務所で過ごし、13年の刑期を終えて「今度こそカタギになる」と誓った主人公。心ならずも生活保護を受け、受刑中に身に付けた技能で就職しようとするが、既に時代遅れになっているのが、悲しい。
実在の人物をモデルにした原作ものとのことだが、相当程度オリジナルなのではないか。「ヤクザと家族」を観た直後でもあり、比較すると、元ヤクザの現在の生きづらさを具体的に語っているところは共通しているが、本作はより主人公の心情や言動にフォーカスしている。
とにかく役所広司の存在感が圧巻。実直で人懐っこい人間的魅力を持ちつつ、キレた時の凶暴性やドスのきいた九州弁が空恐ろしさを感じさせる。
脇を芸達者が固めているが、なかでも六角精児とキムラ緑子が良い。長澤まさみはちょっと浮いていたかな。
派手さはないが、丹念にエピソードを積み上げ、繋いでいく手法は好感が持てる。ただ、出所者を雇用する「協力雇用主」制度が、現在少しずつ広がっている中で、ラスト近くの主人公を前にした介護事業所の同僚たちの無邪気な会話は、ちょっとやり過ぎなのではと気になった。
広い空の下で生きよう
主演と共に監督で,良からぬ期待倍増で鑑賞…⁉︎
重たい役は役所広司がよく似合う
「ヤクザと家族 The Family」と是非セットで
卵かけご飯はウマい
じんわり狂っていないと生きにくい世の中。
正義の制裁の名目でストレス解消するか、心を麻痺させるか。
悲しみと理不尽に溢れてはいるけれど、目線を変えると空には星がまたたき、花は美しく、歌で心が通い合い、卵かけご飯はウマい。
善人という人間はいないし、悪人という人間はいない。
切り取る角度で見え方が違うし、結局人は自分の主観で切り取って見ているだけ。
暴力の理由を生い立ちに繋げる安直さには飽きている。
理由を見つけて安心したいのはわかるけど、何でもかんでも母親のせいにされてもねぇ。
園で過ごした時間にも確かな温もりがあったことに気づく瞬間から、今までの主観とは違う世界が見えてくる。足りない思いを埋めるのに忙しくて見落としていた世界がそこにはあった。
殻を割ってむき出しの命をいただくのは残酷だけれどもすこぶる美味しい。
リアルを切り取って何かへ着地させるノンフィクションは罪深い。
むしろフィクションに見え隠れするノンフィクションな瞬間に惹かれます。
大袈裟に言うと、昔の映画には既にこの世に居ない役者さんが映っていて、“フィクションを演じているリアルな時間”が閉じ込められている。
そのシーンに関わった人の熱量を感じる瞬間、フィクションを作る人達のドキュメンタリーを観ている気になります。
『永い言い訳』は匂い立つようなシーンに溢れている大好きな映画です。
山崎裕さんの“生っぽさ”を感じさせる撮影に興奮するので、本作だと卵かけご飯や園歌のシーンに惹きつけられました。
撮影監督が笠松則道さんなのは、やはり役所広司さんのお芝居を見せたかったからでしょうか?
一匹狼と言えばダンディだけど、筋彫りで止まっているところに、どっちつかずの保険をかけていた男。
妄想キャスティングで脳内再生を楽しんでいます。
何のために生きるのか
役所広司演じる元ヤクザものには正直言って共感できないところも多い。
一般社会からリジェクトされても仕方のない面もあるだろう。
いや、そうされて然るべきとすら感じる。
そうしてしまうことによって生じる悪循環がこの映画のメインテーマなのだろう。
序盤はそれが延々と描かれ、間延びした感じがした。
後半は一転して急展開。
個人的にはこの部分に時間を割いて欲しかった。
この「すばらしき世界」では正しいことをしても社会からはじかれかねない。
特に脛に傷を持つ身ではそうなる。
恩ある方々に報いるために自らの信念を曲げて、
自らと同じく「すばらしき世界」では生きにくい心優しき仲間を見殺しにする。
そして、その仲間からもらった花を握りしめて逝く。
さぞ無念だったことだろう。
その心情を思うと涙なしにはいられなかった。
自らの正しい信念を曲げて生きなくてはならない「すばらしき世界」、
こんな「すばらしき世界」に生きる意義はあるのか。
何のために生きるのか。
くずどもを殴り倒してはいけない「すばらしき世界」に嘆息した。
私もある意味反社なのだ。
嵐の予感のなかに終わる石川力夫=ジョーカー
最後の雨が良ければ満点だったのに、と残念に思う。
役所広司はアタマから血圧の高い半病人として登場し、出所前に刑務官と問答するなかで短気直情型の危うさが描かれる。
刑務所でも懲罰を重ねたことも、その気質からと伺わせる出だしだ。物語はその男が社会に適応できるのか、またキレてしまうのかというサスペンスを推進力として進んでいく。
出所して東京に着いた夜、橋爪功の家ですき焼きを食べて涙してしまう。翌日の区役所の生活保護申請で激し血圧が急上昇して倒れてしまう。
そうした振幅のドラマだ。『仁義の墓場』や『ジョーカー』のように。
その振幅が水を伴って描かれているのではと思うのだ。すき焼きの涙であり、白竜の家の雨であり、ソープランドの風呂であり、ルポライターと入る風呂である。
ラスト、嵐が近づいている。
橋を渡る。元の妻からの電話がある。(願望か?)コスモスを持ってアパートに着く。雨が降っている。が、この雨が良くない。せっかくの雨降らしなのだから、もっと思い切り出来ないかと、思うのだ。
長澤まさみの無用な色っぽさとか、分かりやすさ、くどさ、商業性に心配っている間に、肝心の雨をやり過ごしてしまったような残念さが残るのだ。
長澤含め、客を呼ぶ役とリアルさを支える役のバランスを練られたキャスティングは良かった。
「あんな生き生きとした三上さん、見たことなかった」
「人生は我慢の連続」
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