すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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役所広司さんオンステージ作品です。
最近、任侠世界の人の現代の生きにくさを扱う映画多い気がします。ブームなのかなぁ?なんなんだろう?GAPを作りやすい、ストーリー作りやすいのかなぁ?
なんだか<ヤクザ><任侠>がキャラ扱いされているようで、なんかしっくりこないです。
さて、まずは主演の役所さんのための映画だなぁと。
その主演の役割を十二分に演じ切った役所さんに大拍手です。
とにかくずーーーっっと画面にいます、役所さん。それが苦にならないし、見事に一人の人間を演じ切りましたね。役所さんじゃなければ本作は成り立たなかったのではないでしょうか?役所さんをキャスティングできたことが最大の演出だったのではないでしょうか。
脇を固める演者さんたちもよかったです。ただ、根幹ストーリーへの絡みではないので印象が薄いです。そこは残念でした。もったいなかったなぁと。
ストーリーとしては、冒頭述べたように、最近増えてきたかなぁ?って感じです。
任侠の世界と刑務所しか知らない男のカタギ生活を目指す物語です。
一人の男の出所後の人生を描きながら、何かを描こうとしていそうなんですが、ちょっと、とっ散らかっている感があるんです。様々なサブエピソードがあるのですが、それらが簡単に出ては消えていくので、なんだったんだろう?って感じ。(ツノダ君の三上への絡み方の動機の描き方とか薄いよなぁ)
そのサブエピソードの扱い方が、役所さん以外の演者さんの扱いに繋がっているような気がするんですよね。もっともっと、深みある作品に仕立てられたのではないかなぁ?って思います。
役者陣はとても良かったから、もっともっとそれぞれの人物や人間関係に踏み込んで欲しかったかなぁ、残念です。
なので、結局ラストのオチのみで本作のテーマを語ろうとしているんじゃないのかな?っていう風に見えちゃいました。(僕はこのラスト、好きではありません。安易な着地感で)
映像やエピソードを通して語って欲しかったかなって思います。全体的にセリフで語り切っちゃう演出も好きになれなかったなぁ。
でも、元ヤクザだから生きにくい、元ヤクザだから苦労するという視点に限っていないところは好感はもてました。あくまでハンデを背負った人間の精一杯の日常を描くというスタンスは好きです。
ですがなんでそのハンデを背負ったの?ってところを掘り下げて人物像をくっきりさせていくことでストーリーに厚みを持たせられたのではないかなぁ?と・・・重ね重ね残念。
本作を観終わって、僕は小さい頃砂場で遊んだ棒倒し遊びを思い出してました。
遊び方は、円錐状に固めた砂に棒をぐさっと刺し立て、友達同士で順番に棒が刺さってい砂を取り除き(砂の量は自由)、倒した人の負け・・・・って遊びです。棒を立てるのも倒すのも僕たちです。
棒っ切れは地面に落ちている木の枝です。硬いです。子供の力じゃ簡単に折れません。それで叩かれたら痛いです。けど、木の枝だけで立つことはできないのです。木の枝は大きな木から離れたら一本では立つこともできませんし、枝から芽吹くこともできません。
僕たちは砂を固めて枝を立てるために生きているのだろうか?それとも倒すために砂を取り除く生活をしているのだろうか?なんて思っちゃいました。きっと、いずれも僕たちなんだろうと思います。強いようで一人で立てない枝を支える土台を作るのも人間なら、壊すのも人間なんでしょう。
それは間違いないと思います。世間にパラダイスはありません。けど、人間関係を失ってしまうと土台すら作る機会を無くしてしまいます。人間とは、人間社会とはくだらないけど、面倒くさいけど、素晴らしいんだろうな・・・とぼんやり「棒倒し遊び」を懐かしみながらエンドロールを眺める僕でした。
良作です。
良かった。
浦島太郎が見た広い空
本作は、タイトルと役所広司さんに惹かれて鑑賞。
6回の服役で合わせて30年近く刑務所に入っていた三上。主な罪状は、暴力事件と思われます。6回目は殺人で、懲役10年のところ、問題を起こして13年かかりました。
迎えに来る人も無かった三上は、弁護士の助けで、生活保護を受けつつ社会復帰を目指します。そして、幼いころに別れた母親を探そうとテレビ局に連絡します。
アパートの部屋は布団がきちんと畳まれ、他にはほとんど物がありません。ずっと社会と関りを持たずに生きてきたから、飾りたい思い出の品も、本も趣味の物も無いのです。
すぐに激高してしまう三上。彼なりの理屈はあるにせよ、怒りを抑えられず、社会復帰はスムーズにはいきません。すべては自業自得なのです。でも実は実直な彼に、手を差し伸べてくれる人はいる。話しかけ、笑いかけてくれる人もいる。テレビマンで作家志望の津乃田(仲野太賀)も、三上の不思議な魅力に惹かれます。
思うようにいかず、優しくない社会だけど、それでも世界は美しく、生きる価値はある。生きるって、せつないけれど。題字が最後に出た事も意味があると思いました。いいタイトルだと思います。
噛みしめながら観たい
主人公三上は13年の刑期を全うし、旭川刑務所を出て、東京にいる身元引受人の弁護士の夫婦のところへ行く。かたぎになりたいものの、カッとなると怒鳴ってしまうし、また高血圧の持病もある。
一方、テレビの制作会社を辞めてフリーライターで食べていこうとしている若者、津乃田のところに、三上が更生して行く姿をドキュメンタリー番組にしようという企画が来て、カメラを回し始める。
何とか娑婆で生きようとする三上の必死な姿を認め、正義感が強すぎて暴力的になってしまう彼に、周囲の人たちは、逃げることも大切だ、みんなそうしている、よほどのことでなければ目を瞑れ、見なかったことにしろ、と諭す。前科者に優しい世間では決してないが、それでも生きていける隙間は残されている。
病院の女医さん、区役所の担当者、裁判で証言してくれた妻、身元引受人と奥さん、兄弟分の奥さん、福岡のソープ嬢、そしてスーパーの店長、津乃田。みんな役割があり、無駄がない。俳優に芸人さんなどを使っていないのも良いのかもしれない。
三上から「テレビに出るんですよ」と聞いた時の店長の微妙な表情の変化がすごい。また、津乃田の部屋、身元引受人夫婦の家の雑然とした様子のリアリティ、ボールペンから福岡の電話番号の紙切れを引っ張り出した後の東京の夜景もすごい。
中だるみどころか、どのシーンも全部重要で、無駄がない。すばらしき映画。
今夜は三上正夫のお通夜です
この映画には全部ある。
しかし、少しも欲張り感が感じられない。
最近の「ヤクザと家族」、「ニューヨーク親切なロシア料理店」や「私はダニエル・ブレイク」などにも通じる隣人同士の助け合い、社会福祉制度の弱者救済の矛盾、暴対法の影響、元受刑者の雇用問題、養護施設内のいじめや虐待、特別養子縁組など、さまざまな問題を複合的に絡ませていたのにもかかわらずだ。
30年前の佐木隆三のノンフィクション小説を現代に合わせた脚本にすることにみごと成功したと思う。
役所広司の人間味に溢れたオーラは見ごたえあって、お見事だった。
橋爪功と梶芽衣子の取り合わせ。白竜とキムラ緑子。元妻の安田成美。運転免許試験場の警官役の山田真歩。それに宮城県出身のソープ嬢など女性陣が実にいい。長澤まさみも持ち前のキャラが立っていて、津乃田龍太郎(仲野大賀)の弱さを際立たせる。
「三上さん、フイにしたらいけんよ」と出所祝いを握らせて、逃がすキムラ緑子姐さん。「裟婆は面白いことはなか。だけど、見上げる空は広かいいますけん」
白竜が出かけた後、徳利の酒をあおり、三上に言った「元気のでるクスリ入れますか?」は本気だった気もする。変な空気の後、三上は「今じゃ、降圧剤が一番のご馳走ですけん」と返す。実に味のあるセリフだなぁと感心しきり。
ヤクザと家族では男を磨くための任侠道を声高に唱える若頭役で出ていた北村有起哉が福祉課のケースワーカー役。 三上がパンフレットの隅々まで逃さず読んでいて、知事への不服申し立てについて言及した時、私はこの件をまだ私の上司にも報告してない。それなのに、今、申し立てされたら。私の立場ってものがありません。の場面。極めて冷静だったのが、必死にやっているんですよと本気度が伝った。
スーパーの店長役の六角精児(町会の役員でもあるらしい)。レジで支払いを終えて店を出ようとする三上正夫が万引きしたと従業員から上申され、スーパーの事務室で応対することに。手提げ袋をひっくり返し、「この中にあんたの店のもんが一つもなかったら、とげんしてくれるかね」と啖呵を切る三上。憤慨のあまり、買ったものものまで置いて出てゆく三上を追いかける。自身の父親のはなしをするうちに、同郷であることが判明。三上のアパートに上がりこんでの会話。免許がとれたら、知り合いの配送業者を紹介するという店長の松本。打ち解けて、陽気になった三上が言う、「昔はホステスの送迎なんかもしとりました。体が覚えちょるけん、取れたら、楽勝ばい。店でトラブルおこす客がおったら、いつでも呼んでください。警察は民事不介入やけん。手癖の悪かモンがおったら、オレに任しとかんね」には、大爆笑。
運転免許実地試験(仮免)の場面は昔の悪夢を蘇らせてくれた。アルバイトをしながらで、春休み中に仮免に受からなかったわたしは、夏休みになっていきなり仮免実地試験を受けた。初っぱなから、ガックン、ガックンで、玉砕。その日の午後、もう一度受けたら、受かってしまった。度々、判子をくれなかった最もソリの会わなかった意地悪教官がわざわざ「お前、奇蹟だな」と言ってきたぐらいだ。40年前の話。仮免は多くの人にとって共通する試練だった。あの頃は教習所に通う男に人権なんてなかった。バイクの教官が生徒に蹴りを入れるのなんて当たり前だった。
「すばらしき世界」は現代社会に対する強烈な皮肉でありながら、それでも人間に対する慈愛と肯定に満ち溢れている。
映画の最後に持ってきた題名。やられた。カッコよすぎる。
監督によほど自信がなきゃできないんじゃないかな~
星6つにしたいぐらい。
消えゆくものへのシンパシーを胸に抱いて、亡くしてしまった日本人をこの目に焼き付けておきたいと思った良作でした。
すばらしき世界だわ
さすが役所さん
時にヤクザ、時にカタギの北村有起哉
今年2番目に楽しみにしていた作品。
予告の作りも完璧で、かなり期待して鑑賞。
本当は西川美和監督の過去作を見てから見ようか迷ったんですが、他作も評価がかなり高いので見てからだと余計ハードルが上がってしまうと思い、見らずままです。
んー、面白くはあったんだけど期待通りとはいかなかったかも。期待のしすぎは良くないと十分承知しているつもりなんですが、面白そうだと自然と期待しちゃって...。
優しくて真っ直ぐすぎる三上(役所広司)。実は彼、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。
刑期を終えた三上は今度こそはカタギぞと心に誓い、普通の生活を目指すことに。
すばらしき世界ということで、3つのすばらしき点でレビューしていきます。
一、役者がどれもこれもすばらしき
これに関しては見る前からわかってたことですけど、やっぱ書きたくなるほど凄いんです。
主演の役所広司はもちろんのこと、脇を固める俳優陣も最高。仲野太賀、橋爪功、六角精児、北村有起哉などなど。大好きな俳優勢揃いで、特に六角精児との博多弁の会話はとても微笑ましい。
一、三上が段々とすばらしき
三上は最初は何でも暴力で解決しようとして、刑務所で何を学んだんだとつい思ってしまうほどやな男なんだけど、後半につれて彼の本当の姿が見えてきていつしか大好きになる。その一例として、予告のラストでも一瞬写っているあのシーン。1番好きなシーンなんですけど彼の真の姿はああなんだと、すごく心打たれます。
一、シリアスさとコメディっぽさの両立がすばらしき
皆さん仰っていますが、この作品ヤクザと家族とかなり似ています。ただ、あの作品と違うのは結構コメディっぽいところ。刑務所での生活に慣れていていちいち声がおっきかったり、運転免許取得で失敗しまくったりと、割と笑えます笑
でも、題材から離れることは無くラストはすごく考えさせられる。そのシリアスな題材とコメディチックな小ネタの両立が心地よく、とてもいい映画になっている。
じゃあ、なんで★3.5なんだ?と言う感じですけど、大きく考えられる理由は2つ。
まず一つは予告。
「心えぐる問題作」と書いてあった(はず)のがズレてるかなと。別に問題作では無い。先程も言ったように考えられはするけど、心えぐられる程でもない。なんだか、フワッとしている。素材は美味いんだけど、味付けに納得がいかない感じ。
そしてもう一つはちょっと飽きる。
同じような展開と雰囲気がずっと続くので退屈する。もっと過去の背景を映像で見せたり、もしくは刑務所での尺をもうちょい長くして中身をちょっと減らすとかして欲しい。もっと上手くできた思うんだけどなぁ
出所して働けずまた罪を犯す。
2度目の罪を犯す人は好きでやってる訳では無いと思う。まだ、前科ものに対して酷い偏見をもっているこの社会。大半の人はもう二度としないと思っているはずだ。なのに何故こんなことになってしまうんだ...
期待通りとはいかなかったと言ったが、いい作品であることに違いはありません。
ヤクザと家族を見た方は是非。
何だか切ないなぁ(;´Д⊂)
間違いなく傑作だと思う、が…。
賞を取りそうな感じの作品。
役所広司の演技がすごい。本当にそんな人物が存在するかのよう。
後半、仕事も見つかって、感情も抑えることができて、元妻からも連絡があって、ハッピーエンドが見えて来て、私も「明日から仕事がんばろう!」と思った矢先、「えっおいそれはないだろう」というエンディング。
『私はダニエル・ブレイク』も、最後主人公は死んじゃったけど、それに倣う必要はあったのかなあ。
役所さんと仲野さんが素晴らしい!
シンプルに伝わる心情
上手く表現することができないが、それぞれの役の心情はシンプルに表現されているように思える。それはおそらく見る人がスッと納得できるように計算されたものなのでしょう。
この映画は現実的で、違和感なく見ることができた。登場人物同士の心からの接近は、とても時間のかかるものと思いますが、それを上映時間中にまとめられているところから最後の津乃田の悔しさは非常に良く伝わる。
最後によくこの映画を考えたところ、死刑制度について考えさせられた。それについては何も言わないが、現実的な映画であったことから新しい心情を得たと思う。
悲し過ぎる現実、そして結末
昭和に書かれた原作を二時代超えても今なお変わっていない現実。もちろん反社会に入り込み抜け出せない主人公の自業自得的なところは否めないものの、そうじゃなくても社会に馴染めない人たちに手を差し伸べることで光が見えるエンディング、例えば『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のように、書いた本の出版シーンに被って津乃田が走るところが観たかったと期待してしまった私自身あまちゃんでした。
三上(役所広司さん)の身許引受人、庄司弁護士夫妻(橋爪功さん、梶芽衣子さん)、ライターの津乃田(仲野大賀さん)、スーパーの松本店長(六角精児さん)、役所の井口(北村有起哉さん)5人の素晴らしき人たちに支えられ、元妻(安田成美さん)との再会の約束を心から喜ぶ姿になんとかならなかったかな、というのが正直な気持ちです。自分の中で何かが開いた津乃田がある意味純粋な三上の背中を流しながら言った台詞が重く心に響きました。
支えてくれた人たちに報いるため介護施設内で三上が必死に耐え、無理して笑うシーンは苦々しく思ってしまいました。いい役者さん揃いでしたがその中でも役所広司さんの圧倒的な存在感に改めて感動しました。
あと味はよくありませんが今の日本人、特に政(まつりごと)に携わるお偉き方々に是非観てほしいと思う、本当に考えさせられる映画でした。
心と頭
人間らしさとは何なのか?社会的弱者が日本社会を生きることが、どうしてこんなに難しくなったのか?を訴えてる今作。
ネタバレになるから正確には書けないが、劇中で三上が「ここに人間はいない。」みたいなセリフを言ったんだけど、この映画はこの一言につきると思う。
また、長澤まさみさんがちょい役で出演してるけど、ミスキャストじゃない?と思えた。主演クラスの女優がちょい役ででることで、物語から完全に浮いてしまっている。長澤まさみじゃん!って、インパクトが強すぎる。もう少し、腹黒そうな計算高そうな女優がいたと思うんだけどな~。
ラストの終わり方は、いろんな見方ができる。自分としてはこのラストに満足している。
本当にメッセージ性が強く、20代、30代のこれからの日本社会を動かしていく若者に、ぜひ見てほしい映画です。
役所さん、素晴らしい演技をありがとうございました。
西川美和監督の代表作
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