すばらしき世界のレビュー・感想・評価
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心と頭
人間らしさとは何なのか?社会的弱者が日本社会を生きることが、どうしてこんなに難しくなったのか?を訴えてる今作。 ネタバレになるから正確には書けないが、劇中で三上が「ここに人間はいない。」みたいなセリフを言ったんだけど、この映画はこの一言につきると思う。 また、長澤まさみさんがちょい役で出演してるけど、ミスキャストじゃない?と思えた。主演クラスの女優がちょい役ででることで、物語から完全に浮いてしまっている。長澤まさみじゃん!って、インパクトが強すぎる。もう少し、腹黒そうな計算高そうな女優がいたと思うんだけどな~。 ラストの終わり方は、いろんな見方ができる。自分としてはこのラストに満足している。 本当にメッセージ性が強く、20代、30代のこれからの日本社会を動かしていく若者に、ぜひ見てほしい映画です。 役所さん、素晴らしい演技をありがとうございました。
西川美和監督の代表作
西川監督の実話を元にしたオリジナル脚本の待望の新作。 元殺人者、少年院を含めれば人生の半分が鉄格子の中で生活した男が、[堅気になる]という物語。 社会の縮図が残酷なまでに描かれており、見る人の立場によっては、タイトルが皮肉に感じられる。 役所さんの演技は言うまでもなく素晴らしい。 スクリーン越しなのに目の前にいる感じで、場面ごとに笑いや悲しみなどの感情が止められなかった。 仲野さんの演技も脱帽。 詞ではなく心で演じているのが肌に染みてきた。 間違いなく仲野さんにとっての代表作。今後ますますの活躍を期待。
役所広司の存在感
母に見捨てられ、人生の多くを刑務所で過ごし、13年の刑期を終えて「今度こそカタギになる」と誓った主人公。心ならずも生活保護を受け、受刑中に身に付けた技能で就職しようとするが、既に時代遅れになっているのが、悲しい。 実在の人物をモデルにした原作ものとのことだが、相当程度オリジナルなのではないか。「ヤクザと家族」を観た直後でもあり、比較すると、元ヤクザの現在の生きづらさを具体的に語っているところは共通しているが、本作はより主人公の心情や言動にフォーカスしている。 とにかく役所広司の存在感が圧巻。実直で人懐っこい人間的魅力を持ちつつ、キレた時の凶暴性やドスのきいた九州弁が空恐ろしさを感じさせる。 脇を芸達者が固めているが、なかでも六角精児とキムラ緑子が良い。長澤まさみはちょっと浮いていたかな。 派手さはないが、丹念にエピソードを積み上げ、繋いでいく手法は好感が持てる。ただ、出所者を雇用する「協力雇用主」制度が、現在少しずつ広がっている中で、ラスト近くの主人公を前にした介護事業所の同僚たちの無邪気な会話は、ちょっとやり過ぎなのではと気になった。
広い空の下で生きよう
劇中では空がキーになっている。 人によって色々な空があるけれど、見上げる空は広い方が良い。広い空、広い世界で自分を大切にして生きていけるといい、ただ青くて広い空の下で。 社会システムは損得勘定で効率化されるものだけど、生きることを虚しくさせないように自分の人生を大切にする。そのとき空は青くどこまでも広いのかもしれない。
主演と共に監督で,良からぬ期待倍増で鑑賞…⁉︎
すみません,私は期待に胸弾ませての鑑賞だったのだが…。 錚々たる面子というのか?(と私が勝手に思ってる中で…)既に鑑賞前から(頭の中で勝手に)面白いに決まっている🤣❗️という思い込み状態からの鑑賞でしくじっちゃった⁈。決して面白く無かった訳では無いが… 役所広司での殺人罪で刑務所から出所し,一般市民?と如何に巧く生活出来るかの困難さを、(勿論大変である事は解ってはいるが…)ヤケに濃いものに無理矢理?観せている様にも感じ取れちゃったのが正直な処…。
重たい役は役所広司がよく似合う
朝イチ回が満席だったのでレイトショーで鑑賞。結果これで良かった。こんな重たい作品、朝に観たら1日が辛くなっただろう。 先月見た「ヤクザと家族」も良かったが、ヤクザもんの社会復帰というのは、本当に難しそう。 真っ直ぐだった主人公が持ってしまった「無視」「偏見」。自分も持ち合わせている。人のこと言えない。
「ヤクザと家族 The Family」と是非セットで
「ヤクザと〜」ではまさにヤクザを演じていた北村有起哉が役所の職員を演じていたりするので、そういう比較が出来るのも面白い。 一度道を外れた者が真っ当な道を戻るのはとてつもなく難しい。 しかも、その真っ当な道はとてつもなく理不尽でいて、とてつもなくつまらない。 それでもこの世は「すばらしい世界」? 役所広司をたっぷりと味わえる2時間でした。 良かった。
卵かけご飯はウマい
じんわり狂っていないと生きにくい世の中。 正義の制裁の名目でストレス解消するか、心を麻痺させるか。 悲しみと理不尽に溢れてはいるけれど、目線を変えると空には星がまたたき、花は美しく、歌で心が通い合い、卵かけご飯はウマい。 善人という人間はいないし、悪人という人間はいない。 切り取る角度で見え方が違うし、結局人は自分の主観で切り取って見ているだけ。 暴力の理由を生い立ちに繋げる安直さには飽きている。 理由を見つけて安心したいのはわかるけど、何でもかんでも母親のせいにされてもねぇ。 園で過ごした時間にも確かな温もりがあったことに気づく瞬間から、今までの主観とは違う世界が見えてくる。足りない思いを埋めるのに忙しくて見落としていた世界がそこにはあった。 殻を割ってむき出しの命をいただくのは残酷だけれどもすこぶる美味しい。 リアルを切り取って何かへ着地させるノンフィクションは罪深い。 むしろフィクションに見え隠れするノンフィクションな瞬間に惹かれます。 大袈裟に言うと、昔の映画には既にこの世に居ない役者さんが映っていて、“フィクションを演じているリアルな時間”が閉じ込められている。 そのシーンに関わった人の熱量を感じる瞬間、フィクションを作る人達のドキュメンタリーを観ている気になります。 『永い言い訳』は匂い立つようなシーンに溢れている大好きな映画です。 山崎裕さんの“生っぽさ”を感じさせる撮影に興奮するので、本作だと卵かけご飯や園歌のシーンに惹きつけられました。 撮影監督が笠松則道さんなのは、やはり役所広司さんのお芝居を見せたかったからでしょうか? 一匹狼と言えばダンディだけど、筋彫りで止まっているところに、どっちつかずの保険をかけていた男。 妄想キャスティングで脳内再生を楽しんでいます。
何のために生きるのか
役所広司演じる元ヤクザものには正直言って共感できないところも多い。
一般社会からリジェクトされても仕方のない面もあるだろう。
いや、そうされて然るべきとすら感じる。
そうしてしまうことによって生じる悪循環がこの映画のメインテーマなのだろう。
序盤はそれが延々と描かれ、間延びした感じがした。
後半は一転して急展開。
個人的にはこの部分に時間を割いて欲しかった。
この「すばらしき世界」では正しいことをしても社会からはじかれかねない。
特に脛に傷を持つ身ではそうなる。
恩ある方々に報いるために自らの信念を曲げて、
自らと同じく「すばらしき世界」では生きにくい心優しき仲間を見殺しにする。
そして、その仲間からもらった花を握りしめて逝く。
さぞ無念だったことだろう。
その心情を思うと涙なしにはいられなかった。
自らの正しい信念を曲げて生きなくてはならない「すばらしき世界」、
こんな「すばらしき世界」に生きる意義はあるのか。
何のために生きるのか。
くずどもを殴り倒してはいけない「すばらしき世界」に嘆息した。
私もある意味反社なのだ。
嵐の予感のなかに終わる石川力夫=ジョーカー
最後の雨が良ければ満点だったのに、と残念に思う。 役所広司はアタマから血圧の高い半病人として登場し、出所前に刑務官と問答するなかで短気直情型の危うさが描かれる。 刑務所でも懲罰を重ねたことも、その気質からと伺わせる出だしだ。物語はその男が社会に適応できるのか、またキレてしまうのかというサスペンスを推進力として進んでいく。 出所して東京に着いた夜、橋爪功の家ですき焼きを食べて涙してしまう。翌日の区役所の生活保護申請で激し血圧が急上昇して倒れてしまう。 そうした振幅のドラマだ。『仁義の墓場』や『ジョーカー』のように。 その振幅が水を伴って描かれているのではと思うのだ。すき焼きの涙であり、白竜の家の雨であり、ソープランドの風呂であり、ルポライターと入る風呂である。 ラスト、嵐が近づいている。 橋を渡る。元の妻からの電話がある。(願望か?)コスモスを持ってアパートに着く。雨が降っている。が、この雨が良くない。せっかくの雨降らしなのだから、もっと思い切り出来ないかと、思うのだ。 長澤まさみの無用な色っぽさとか、分かりやすさ、くどさ、商業性に心配っている間に、肝心の雨をやり過ごしてしまったような残念さが残るのだ。 長澤含め、客を呼ぶ役とリアルさを支える役のバランスを練られたキャスティングは良かった。 「あんな生き生きとした三上さん、見たことなかった」 「人生は我慢の連続」
牙を抜けきれない男との出逢い
牙を抜けきれない男が社会に出て感じるジレンマや葛藤、喜びを淡々と描くことで、社会で生きることの難しさを描いた良い作品だと思います。
彼の想い(人生)は最後に叶った(満足)のか分からないけど、大切な思い出とする人が多くいることが彼の人生を満たしてる気がします。
この男を演じる役所広司さんの凄みも感じられる作品です。
すばらしき世界って本当は、、、
2021年、初の映画館での鑑賞作品。
お見事!ナイスチョイスわたし!と大満足。
原作は30年も前の実際に存在した男をモデルにした
小説だそうで。うまく現代に置き換えて作品は作ら
れており、最初から最後まで飽きることなく鑑賞。
主人公の三上を演じた役所広司さんは、たくさんの
作品に出演している日本を代表する役者だが、まだ
まだこんなにも観客を満足させてくれるのかと、そ
の存在感と演技力に驚かされる。
主人公に関わる、周りの役者もとても素敵で、仲野
太賀さんは、名演。私的には、三上の昔の繋がりの
あるヤクザの兄貴(白竜)の奥さん役のキムラ緑子さんがこれまた最高。
彼女が三上に伝えた言葉、
「シャバは我慢の連続。我慢したって大して良いこ
とはないけれど、空は広いって聞くよ」
この言葉がとても印象的だった。
我慢の連続である世の中だが、広い世界の中で生き
ていれば、いろんな可能性と出逢えるのだと。
三上の周りに少しずつ人と人の繋がりができていく
前のシーンだった。
就職先が決まった三上を、みんながお祝いするシー
ンは気持ち悪いと感じたが、それが今自分が暮らし
ている社会のあるあるだなと。正直者が馬鹿を見る。
そんな気がして、とても悲しい気持ちになった。
三上のように、実直で正義感にあふれた人間にとっ
てこの世の中は生きにくい。彼がもう少し当たり前
の愛情をかけて育ててもらっていれば、生き方は違っ
たのかもしれない。
もう一つ印象に残ったシーン。
福岡の昔の仲間に連絡した後、風俗嬢のリリーさん
とベットで横になって話をする。
三上がリリーさんの子供の話を聞いて「お母さんや
ね」と声をかけるシーン。その表情があまりにも穏
やかで優しくて。
三上にとって母親という存在がどれほど大切な存在
かその表情から伝わり、心が締め付けられた。
タイトルの「すばらしき」がわざわざひらがなであ
ることが気になり、「すばらしい」の語源を調べて
みた。
「素晴らしい」は、漢字を見ると、「晴れやかな気
分にさせられる」といった意味が浮かぶが、これは
後世の当て字だそうだ。「すばらしい」は、縮んで
小さくなるという意の「窄む(すぼむ)」や、「み
すぼらしい」などと使う、すぼまって狭いという意
の「窄し(すぼし)」と同源であり、もとは「あき
れた」とか「ひどい」という意味で使われていたの
だという。
↑ネットで検索。
これを見て、納得。
西川監督の意図はこれにひっかけているのかどうか
はよく知らないけれど、タイトルは皮肉のように使
われていて、現代社会に生きる私達に問いかけてい
るのでは?と感じた。
我慢の連続。それでもこの世はすばらしき世界な
のか?
三上の最後のシーンが答えなのか。
とにかくまた面白い映画に出会えてよかった。
この世界はすばらしいのか
ヤクザとして生き、長い年月を刑務所で過ごした男が、シャバでカタギをめざすも思うようにいかず、息苦しくもがく物語。主人公の三上正夫だけでなく、観ているこちらも最後まで息苦しかったです。 曲がったことは見過ごせず、カタギになろうと必死にもがく三上は、きっと正義感と一本気のある男なのだと思います。裏社会に関わらなければ、幸せな人生を歩めていたかもしれません。しかし、元ヤクザという肩書きは、生きる場所を限りなく狭めてしまいます。そんな中で感じる、悩み、苦しみ、怒り、悲しみ、といった負の感情。そして、それを振り払うための暴力。若い頃から裏社会に身を置いていた三上には、暴力以外の解決手段がなかったのでしょう。 そんな彼にも優しく接してくれる人たちがいました。元ヤクザという肩書きにとらわれず、三上正夫という男自身に触れ、彼の力になりたいと思ったのでしょう。ただ、就職祝いの席で三上のためを思って説く現代社会の処世術が、「見て見ぬふりをしろ」「耳をふさげ」「逃げろ」というのにはドキっとしました。確かにそうだし、自分も無自覚にそうしているのですが、改めて言葉にされるとぞっとします。 博多の姉御が「シャバは我慢の連続。でも、空は広い。」と言います。広い空を見るには、我慢を重ねるカタギになるしかないのでしょうか。では、カタギとは何でしょうか。我慢して真面目に生きている人のことでしょうか。いや、他人の痛み悲しみ苦しみに目を瞑り、自分を守る要領のいい人間なのでは…、そんなふうに思えてきました。タイトルの「すばらしき世界」は、現代社会を生きる私たちに突きつけられた、痛烈な皮肉なのかもしれません。 主演の役所広司さんは、文字どおり体を張って、三上正夫を熱演しています。興奮すると出る流暢な博多弁、頭に血が上っての恫喝、怒りに任せた暴力など、ムショ帰りのヤクザそのものといった感じでした。あまりにも自然すぎて、役所さんが演じているというより、役所さん自身を描いているのではないかと思うほどでした。脇を固めるのは、六角精児さん、橋爪功さん、梶芽衣子さん、キムラ緑子さんら安定の布陣。「ヤクザと家族」では兄貴だった北村有起哉さんが、市役所職員として親身になっていたのはちょっと笑えました。このベテラン陣を向こうにまわし、圧巻の演技を披露したのが仲野太賀さん。三上への関わり方の変化がすばらしく、風呂場で背中を流すシーンやラストのアパートのシーンは涙をこらえきれませんでした。
広い空が、見ている我慢
ラストシーンを見て、私も、すばらしき世界の住人に、なれるかしらと思ったのですが、おつとめ帰りの方とは、どう接したらいいやら。だって、怖いもん。 先日、家族とプチ喧嘩。怒りたくなるわけですよ。ところが、翌日、家族は、けろっとしてる。私の怒りは、何だったのかしらと、思う一方、怒りに任せて、余計なこと言わなくて良かったようです。我慢することで、得たもの。そして、失うものも、あるようです。今日、どんな我慢しました?。広い空が見てますよ。 仕事にせよ、家庭にせよ、ヒトは居場所を探すもの。自分を、認めてくれる、無条件で受け入れてくれる処を、渇望するわけです。ここで、初めにつまずくと、暴力的になる、歪んだ承認欲求を抱くようになる。学校は、学力より、そこを教えて欲しい。つまり、ヒトは生まれながらに、法的に平等でも、個性と育つ環境は、明らかに不平等と云う事実。それに立ち向かう、知恵と勇気。足し算や掛け算覚える前に、他者の気持ちに、共感する想像力。ムショは、罰を与えるだけでなく、何が罪なのか、何がヒトを苦しめるのか、つまずいたヒトに、改めて伝えて欲しいものです。 本作ですが、「私はダニエル ブレイク」みたいな、いい話にも、できたはず。でも、まっすぐに生きると、他者を傷つける。我慢して生きると、他者を見棄てることになる。そんな裟婆の現実を描く、監督さんの心意気に、気持ちが、揺れる私です。 「時計じかけのオレンジ」 罪と罰の在り方を、無理やり問い糺すお話。本作と併せ観るのは、ほぼ間違いですが、私のすばらしき世界は、あなたにとって生き地獄みたいな寓話を、ふと、思い出しました。
作品名が、本当のラスト
福岡出身の私にとっては、言葉の一つ一つが 胸に来る。 なんばしょっと? これでよかとおもっとると?? はがいかあ。。 課題を突きつけられた。。 でも、これが今の世界なの。 どげんもできん。。
観てきました、素晴らしい映画でした。
深い方向を狙った邦画にありがちな、過激で残酷でムキダシ地獄みたいなものに安易にもっていかず、繊細でリアルな現実を美しい映像で丁寧に描いてありました。同じ手触りでも映画としての着地点がゴチャゴチャしちゃったポンジュノ監督の「パラサイト」よりさらに完成度が高い映画だったので、アカデミー作品賞に選ばれて下さい!って思いました。
短く評価/観て下さい
裏社会の義理人情で生きて 表社会の義理人情を知って 観ていて このまま 怒らないで このまま 何も 起こらないで このまま ハッピーエンドで 終わって この世はまだ す ば ら し き 世 界 だから
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