「受刑者が必ずしも「治らない」のではないということ。」すばらしき世界 Sign3121さんの映画レビュー(感想・評価)
受刑者が必ずしも「治らない」のではないということ。
「PERFECT DAYS」での役所さんの演技にあまりにも引き込まれてしまっていたため、別の人物を演じている彼を受け止められるかどうかと思って、少しほとぼりを冷ましてからようやく鑑賞しました。結果、やはり彼は素晴らしかった!
主人公の三上は、心優しく、あまりにも「真っ当」であるために生きづらい。
受刑者に対して世間は冷たいし、弱者に対して世間は意地悪だ。
そんな世の中で、何とかして「カタギ」になろうと奮闘する姿に
胸を打たれた数名が、彼の味方をして応援してくれる暖かさも描かれていて
強く心を揺さぶられた。「立ち直る」とは。「世間をわたっていく」とは。
また、母親に対する純粋で無垢な渇望に対しても胸を打たれて涙が滲んだ。
ああいう繊細な演技をやってのける役所さんの素晴らしさにも感動。
「今どき」の世間に対して俯瞰すると、沢山の正しき正義がくじかれてる場面も少なくないのだろう。みんなの心にそれぞれの「正義」があって、正義と正義がかち合って喧嘩になったり戦争になったりする。正しく生きているつもりで、他者を阻害してたりするのに。
様々な思いが交錯して、とても胸が傷んだ。
「すばらしき世界」とは、皮肉を込めてつけられたタイトルなのだなと感じた。
「身分帳」という現存した人を主人公にした小説が原案だとのことで
そちらもぜひ読んでみたいなと思う。
しばらくは、世間とは。正義とは。正しさとは。寛容と不寛容とは。と
ここらへんに関して、深く考えていくことになると思う。いい映画だった。