「育った環境の影響はとても大きい」すばらしき世界 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
育った環境の影響はとても大きい
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主人公の三上は劣悪な環境で育ち、学も無い。そこから抜け出すために成人する前にヤクザの世界に足を踏み入れた。そのため人生の半分は刑務所暮らし。問題の解決方法は暴力のみ。彼にとってはアウトローな世界の方が楽なのだ。そのような人間が、今までの生き方、考え方、身に付いた習慣を変えて、社会復帰するのがどれだけ大変か、考えさせられる映画。低所得者や社会からドロップアウトした人間などを指して、不遇な環境にいるのは努力が足りないからだという意見を耳にすることがある。確かにその通りな面もあるだろう。しかし、目標を定めて努力できること自体、育った環境によるところが大きいのだと、この映画を観て改めて感じた。
三上は終盤で介護施設に就職する。そこで同僚の障害者が虐められている場面を目撃する。以前の彼なら、我を忘れて暴力を振るい止めていたところを、グッとこらえて見て見ぬふりをする。一見すると、普通に割って入ればいいじゃないかと思うシーンだ。しかし彼は暴力以外の問題解決方法を知らない。そのため、不器用な彼はどうしていいのか分からず、見て見ぬ振りをするしかなかった。このようなシーンからも、彼の生い立ちが行動に大きな影響を与えていることを感じる。
映画でも言われていたが、彼のようにアウトローな世界で生きてきた人間にとって、通常の社会は生きづらいのだ。
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