「西川美和の三上への"愛"。」すばらしき世界 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
西川美和の三上への"愛"。
西川監督の、三上という特殊な人間に対する暖かい視線を終始感じることができる作品でした。三上はいわゆる「社会不適合者」と言われても仕方がないような人物である。犯罪常習者で、感情的で短気、すぐに暴力で解決しようとする。こんな危なっかしい人間が、出所してまともに生きていけるのだろうかというのがまず興味の一番である。案の定、あちこちで衝突しもめごとに巻き込まれるが、次第に彼自身も、彼に関わる周囲も変わっていく。三上にはどこか力になってあげたいと思わ
せる人間性みたいなものがある。それは例えば、身元引受や生活保護の対象者であったり、テレビ取材の対象者に過ぎないうちは気づかないが、彼の人柄に触れ一人の人間として向き合うことで初めて理解されるものだ。
そんな三上という人間を、役所広司が実に魅力的に演じてくれた。西川監督の三上への思い入れも十分に伝わってきたように思う。この世界は、表面的には不寛容であったり、利己主義や独善主義がはびこっているが、皆が少しづつ「善意」や「好意」を持ち寄ればきっとよくなる、そんなメッセージがこの「すばらしき世界」というタイトルに込められているように思った。
コメントする