劇場公開日 2021年2月11日

  • 予告編を見る

「役所広司の存在感」すばらしき世界 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5役所広司の存在感

2021年2月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

母に見捨てられ、人生の多くを刑務所で過ごし、13年の刑期を終えて「今度こそカタギになる」と誓った主人公。心ならずも生活保護を受け、受刑中に身に付けた技能で就職しようとするが、既に時代遅れになっているのが、悲しい。
実在の人物をモデルにした原作ものとのことだが、相当程度オリジナルなのではないか。「ヤクザと家族」を観た直後でもあり、比較すると、元ヤクザの現在の生きづらさを具体的に語っているところは共通しているが、本作はより主人公の心情や言動にフォーカスしている。
とにかく役所広司の存在感が圧巻。実直で人懐っこい人間的魅力を持ちつつ、キレた時の凶暴性やドスのきいた九州弁が空恐ろしさを感じさせる。
脇を芸達者が固めているが、なかでも六角精児とキムラ緑子が良い。長澤まさみはちょっと浮いていたかな。
派手さはないが、丹念にエピソードを積み上げ、繋いでいく手法は好感が持てる。ただ、出所者を雇用する「協力雇用主」制度が、現在少しずつ広がっている中で、ラスト近くの主人公を前にした介護事業所の同僚たちの無邪気な会話は、ちょっとやり過ぎなのではと気になった。

山の手ロック