「不思議な映画だった・・・」すばらしき世界 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議な映画だった・・・
28年と人生の大半を刑務所で過ごした男が出所し、「今度ばっかりは、カタギぞ」 と普通の人生を送ることに取り組む話。なにも起こらない。
自分は役所さんの鬼気迫る演技にももちろん感心だったが、この映画では、さまざまなシーンでクリエイターと呼ばれる人たちの矜持を感じていた。
主人公のケンカを撮っていたが、その狂気に怖くなって逃げだすディレクターに、長澤さんがかける言葉。「撮らないのなら、ケンカに割って入ってとめなさいよ! 止めないのなら、撮って、伝えなさいよ! (撮らずに逃げるなんて)お前みたいなのがいちばん何も救わないんだよ!」
いやあ、強烈。これが、「撮って伝える」 というTVマンの矜持か。俺も怖くなって逃げちゃうだろうなあ。
「カメラは、もう、ないです。でも俺、三上さんのことを書きますよ。普通になるんですよ、三上さんは。それでも書けます。僕は、書けます」 作家になりたい仲野さんのセリフ。「書いて、伝える。たとえそれが、ただの普通な人生であっても」 これがライターの矜持か。
そして、この映画自体、何も起きず、主人公がもがき、周囲が見守るだけ。それを撮って伝えるのは、映画監督の矜持か。
と考えながら観ている俺の前で、そんな素直に終わってはくれないこの映画。主人公にこらえることを心から伝えたのは、同じように生きているアベくんだったのかなあ。嵐の中のコスモスだった・・・
かすんだ青空に、「すばらしき世界」 と浮かぶエンディング。主人公にとって、観ている我々にとって、なにがいったい 「すばらしき世界」 だったのか? 何もすばらしくない世界だからこそ、逆説的な言い方をしたのだろうか。 いや、自分はそうは思わなかった。カタギになろうとした主人公、そのもがき続け、あがき続けた姿が 「生きる」 ということ。それこそが、すばらしき世界なのだろう。
かって所属していた組のあねさんが、別れ際に主人公に言ったセリフ 「今はヤクザじゃ稼げない。シャバは、我慢の連続ですよ。でも、"空が広い" と言いますよ」 ・・・
レビューは以上なのだが、何回も身につまされる思いをした映画でもあった。
その代表的なシーンをひとつ。TV取材を受けようとする主人公に、「食い物にされるだけだ。TV番組ひとつで世界が変わるとは思えない」 と進言し、主人公に口汚く罵られた際に、「きょうの三上さんは、虫の居所が悪いんだね。また日を改めて話そう」 と語るスーパーの店主。このセリフ、言えるか、俺は? 普通ということ凄さを思い知らされる。
おまけ
本編とさほど関係ないのだが、裁判所でのシーンでは、検察や弁護士と、被告や証人とのやりとりというのは、誘導尋問のオンパレードだなあ、と必要悪を痛感した。
CBさん、いつもありがとうございます
今作は、どうレビューするか悩んだあげく好きな場面を書いていたら、わずかながらも”すばらしき世界”がその中にあったではありませんか。
レビュー中に発見して驚きました。
CBさん、コメントありがとうございます。
>主人公にこらえることを心から伝えたのは、同じように生きているアベくんだったのかなあ。
はい。確かに。
そういう見方・解釈もありますね。
思い浮かびませんでした。
すみません💦アホなことを書いてしまって。励みになるし動機づけになると思います。ポイントカード的なもの、一切持ってない訳でなくて、沢山あると訳わからなくなるから断るだけです。CBさん、教えて下さってありがとうございます。すばらしき情報❗️
CBさん、ありがとうございます!ポイントに関心がある方がいらっしゃることは想像はできます。ポイントカードいかがですか?には、いつも「必要ありません」と丁重に断るので、知らない間に!はビックリしました。が、何か貰える訳でないこと伺い、ほっとしましたでごんす!