「【"人生のレールを外れた人”も、”真っ当に生きる人”も、この不寛容な世の中は生き難い。だが、それでも”広く青い空”を見上げて、上を向いて生きていこう・・。】」すばらしき世界 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"人生のレールを外れた人”も、”真っ当に生きる人”も、この不寛容な世の中は生き難い。だが、それでも”広く青い空”を見上げて、上を向いて生きていこう・・。】
◆西川美和監督の、人間を見る”冷徹な視線”と”温かい視線”のミックス具合が、絶妙な作品である。
ー人生のレールを外れた人ー
・元ヤクザ三上(役所広司)の周囲の人々、
兄弟の契りを交わしたヤクザ(白竜)とその妻(キムラ緑子)が”反社”として、追いつめられている状況描写を絡ませつつ、
この作品が、観る側に”人生の生き難さ”を訴えかけ、イロイロと考えさせられるのは、
1.真っ当に生きる市井の人々の姿
・三上を支える身元引受人の弁護士夫婦(橋爪功・梶芽衣子)
-”趣味だ”と言っていたが、殺人者の身元引受人になるのは、並半端な覚悟ではできないであろう。立派であるし、この夫婦の存在が久しぶりに世間に出てきた三上を支えて居る。夫婦から供されたすき焼きを前にして、涙する三上の姿・・。ー
・非情なジャーナリストに徹しきれない、若者(仲野太賀)
- ”非情”、冷徹”になり切れない青年を好演している。流石である。
そして、彼が三上の身上について、”純粋な思い出で”書き始める姿。三上の姿に触発され、彼自身も成長していくのである。-
・役所の真面目な三上のソーシャルワーカー(北村有起哉)
- 「ヤクザと家族 The Family」に引き続いての”抑制した”熱演である。-
・ひょんなことから知り合った、スーパーの心優しき店長(六角精児)
- 良いなあ。三上を殺人者と知りながらの、あの接し方。彼の人の良さが染み出ている温かい表情、言葉に涙する。 ”今日の三上さんは、虫のいどころが悪かったのかなあ・・” ナカナカ言えないよ。-
今作の魅力の一つは、上記の市井の人々の”日々を懸命に生きる姿””が、キチンと描かれている点であろう。
そして、その人々を演じた、役所広司を始め、仲野太賀、北村有起哉、六角精児の存在感ある見事な演技であろう。
又、非情な女性ジャーナリストを演じた、長澤まさみさんの姿は、「MOTHER マザー」を思い出させてくれた。この方は、新境地を開拓しつつあると思う。
2.三上が、母と会う情報を得るために赴いた、且つていた孤児院で、孤児たちとサッカーを楽しんだ後、泣き崩れるシーン。
- 戸籍が無くても、母は恋しい・・。-
3.三上と別れた妻(安田成美)の”決して裕福そうでない”家を訪れた時に会った聡明な女の子。三上が指折り数え、”自分の娘”ではないか、違うな・・と思うシーン。
・妻と電話で交わす話。妻の優しい言葉・・。
-苦労を掛けたな・・-
4.そして、”真っ当に生きる人々”が、三上の介護施設への就職を祝い、集まるシーンで、”ホロリとし・・”
5.知的弱者を苛める、施設員達に対する三上の態度の”西川監督の描き方”に唸らされ、
6.知的弱者の若者が、台風が近づく中切り取った、三上に渡した花束。
その花束を、”真っ当に生きる人々”から、就職祝いで送られた自転車の籠に入れ、嬉しそうに家へ向かう、三上の笑顔。
<あのインパクトある ”三上が、花束を手に横たわる画” の手のフォーカスシーン。
母に捨てられた三上の人生は、厳しく報われない人生だったのだろうか?
彼は様々な犠牲を払い、罪を償い、”青い空が広がる世界””に、自らの努力で出てきた。
そして、”厳しき毎日”を”真っ当に生きる人々”の温かさに、僅かな時間ではあったが、触れる事が出来た。そして、彼らに対して何らかの影響を与えた。
彼は、確かにこの世で、必死に生きたのだ。
私は、彼の波乱万丈な人生の最後年は、幸せな日々ではなかった・・かと、思うのである。
今作は、西川美和監督が、”人生のレールを外れた人”、”真っ当に生きる人々”を取り巻く社会の厳しさ、不寛容さと、温かさを、見事に描きだした作品であると思う。>
NOBUさん、コメント返信ありがとうございます。
>最後は周囲の人々ともキチンとした関係性を構築し、
>花束を握って終わるという、意味ある人生であったと
なんと慈愛に満ちた素敵な解釈。
私の想像力では思い描けませんでした。
それならば三上も救われます。
NOBUさん、お邪魔します。
>三上が、花束を手に横たわる画
三上が何を思い
この花束を握りしめていたのか
この場面が頭から離れないでいます。
三上にとって、
自分を責めるモノになっていたのか
それとも、救いになったのか。
奥の深い、いろいろと考えさせられる一コマです。
コメント失礼します!
1〜6まで共感いたします。
特に2は泣ける
ただ、一つ
お子さんは小三なので、9歳なのでは?
三上の任期が13年なので別の子だと思うのですよね。
なので、ラストあたりの電話でのシーンで、安田成美に
人妻やろが?と言うのかな?と。