「決して許されない子どもたち」許された子どもたち KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
決して許されない子どもたち
許しの境界線はどこにあるのか。
正義の鉄槌を下すのは誰なのか。
悪意の連鎖の先にあるのは何なのか。
ありったけの胸糞悪さが詰め込まれ、答えの無い苦しみに揉まれる、どうしようもなく虚しい映画。
一つの事象も、見る方向や見る人によってその形は全く変わってくる。
そんなことを改めて実感する映画だった。
もう何が正解かなんて、何が正しいかなんてわからないよ。
人を殺した子供「キラ」に徹底的にスポットが当たり、彼を取り巻く環境や人間関係の変化、彼自身の変化を追うストーリー。
不処分にされたことで起こる私刑とネットリンチの数々を小気味よく「いいぞ!もっとやれ!」くらいに思っていた序盤。(そう思わずにいられた人、いる?)
「やりすぎ」を感じると共に、キラ一家の辿る運命を興味深く観ていた中盤。
今までの時間ってなんだったんだろう、と、唖然とする終盤。
観ているうちに自分の気持ちも変化していき、それがなんとも後ろめたく気持ち悪い。
あの場にいたら、私ならどうしていたか?あの中に自分の家族や友達がいたら、どうするか?全然わからない。
たしかに変わっているはずなのに何も変わっていなくて、人間という生き物のややこしさを叩きつけられる。
結局逃げ回るしかない。
あれだけ晒しあげられたらそうなるのもわかるけど、キラも母親も罪そのものやそれについて深く考えることを放棄して、ただ逃げ続けているだけ。
まあ、わからないでもないけども。
向き合ってしまったら最後だってことも、やっと生まれた罪悪感のやり場の無さも、ショーンとカミュに対するキラの苛立ちも、感覚的にはなんとなくわかるじゃない。
でも理解しようとは思わない。そうした途端に正当化してしまうような気がする。救いようがないのかも。
桃子の存在は不思議だった。
キラに寄り添い、彼に影響を与える面白いキャラクターだった。
ただ、結局彼女もキラの特別感に惹かれて浸っていただけだとも思える。
エゴの強い人間だったような気がしなくもない。
腹立つ人間のまあ多い映画だった。
その中に自分が立たされている感覚になる。いや、現実そうなんだろう。
いつだって加害者になり得る。人を傷つけたことも人に傷つけられたこともある。
所々で入る印象的な演出と多少大袈裟な出来事で、これが「映画」であることを強く感じた。コマ送りもスローモーションも面白かった。映画で良かった。
もしも最初に正直になっていれば、少しは違った未来があったのかしら。
ポスタービジュアル、川面に写る四人の姿にまたズーンと重いものを感じた。